今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2021年9月号 No.719

行事予定

11月DVD鑑賞会案内「私のちいさなお葬式」

「私のちいさなお葬式」  コロナ禍、自宅で亡くなる方が出ていることがニュースになっています。また、コロナ以前でも大都市の集合住宅での独居老人の孤独死がよく報道されていました。

 年を取り、家族がいないという独居老人は今後も増えていくでしょう。それは、ロシアも同じです。

 実にタイムリーなDVD「私のちいさなお葬式」を鑑賞してみましょう。心臓が悪く、いつ死んでもおかしくないということを宣告されたエレーナ。誰にも迷惑をかけたくないと葬儀の準備を始めますが……。この後は、鑑賞会で。

 少子高齢化の日本。これは決して他人事ではありません。

日時:2021年11月28日(日)午後1時
会場:横浜平和と労働会館5階教室
参加費:500円(黒パン・紅茶付)

活動報告

料理教室「ゴーゴリ・ワールドを作って食べよう ~ヴァレーニキ~」

料理教室  8月1日(日)に、コロナ禍でできなかった料理教室を久しぶりに開催しました。参加者は講師・スタッフ含めて14名。講師はロシア語教室でもおなじみのヴァリナ・ヴァレリヤ先生です。

 今回は、ニコライ・ゴーゴリの短編小説「ディカーニカ近郊夜話」と「ヴィイ」に登場するヴァレーニキ(ウクライナの水餃子)をとりあげ、プレゼンテーションや映像で確認したあと、再現・試食しました。
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 猛暑の中、8/1(日)開催の料理教室は今までとは違いました。ロシア文学の中でも、日本で知名度の高いゴーゴリの作品中の料理を取り上げたのです。最初に、映画の1シーン。「ヴァレーニキ」が飛び上がり、登場人物の口の中へ。作品の描写そのままでした。その「ヴァレーニキ」を生地から作りました。もちろん、中の具材も全て手作り。ジャガイモと果物の二種類でした。生地から作り始めるので、やはり時間がかかりました。でも、作りながらのいろいろなおしゃべりは一番楽しいものでした。料理にからめて、自らのロシア旅行やロシアに関する話。中には宣伝を見て、参加されたという非会員の方も。その方は、「ロシアのことはあまり知りませんでしたが、こんな楽しい集まりがあるんですね」と言っておられました。こうして、ロシアのことを広めていければ素晴らしいと思いました。

 ロシア文学は長編で重厚、難解というイメージが強いです。日本文学の最高権威は芥川賞ですが、それは短編文学の名手芥川龍之介の功績を評価してのことです。トルストイやドストエフスキーなどの長編文学は、短編小説を読みなれている日本人にはちょっと読みづらいかもしれません。でも、そういう長編の中にも「食と味」に注目して、その箇所だけでも読むと楽しいかもしれません。そして、その前後も読むようになり、いつか全編を読了してしまう。そんな読み方ができるのではないかと感じさせる料理教室でした。今後も「食と文学」をテーマにしての料理教室に期待します。

(関戸)

 何よりも企画の面白さに惹かれ、参加しました。最初にゴーゴリ作品の説明やビデオ鑑賞もあり、今までと一味も二味も違う料理教室でした。もちろん、参加者は初めて作るので不揃いヴァレーニキが出来上がりましたが、それもまた楽しかったし、美味しくいただきました。

(野口)

料理教室  コロナ下、何か楽しいことがないかと、料理教室の案内を見て、さっそく申し込みました。楽しいこととおいしいことが一緒なので、一石二鳥でぴったりでした。同じロシア語クラスの方々と久しぶりに会い、話が弾みました。それに、クラスのオリガ先生と対面で、やはりお会いできるのはいいですね。2グループに分かれて、皮作りや具材調理を和気あいあいと進めました。ジャガイモやタマネギ、フルーツのベリー等を皮に包み、茹でて、炒めたタマネギに絡ませていただきました。

 生のベリーを茹でる? ちょっと違和感がありましたが、意外や意外、デザート風味でとても美味しかったです。この他、様々な具材が楽しめるそうです。又、横浜ロシア語センター以外の方も参加されて、ロシア料理に関心がある方が多いのだと思いました。

(加藤)

 今回のイベントではニコライ・ゴーゴリの小説にも登場し、ロシアやウクライナなどの家庭でよく食べられているвареникиという料理を作りました。形だけみると餃子のようですが、生地や具に特徴があります。特に具は特徴的です!炒めた玉ねぎとマッシュポテトやお肉、творог(カッテージチーズ)、ミックスベリーなどを詰めます。塩っぱい味から甘い味まであり、飽きることがありません!

 久々にお会いした方々と語らいながら、ついつい箸が進み食べ過ぎてしまいました。本来ならсметанаをソースにして食べるのですが今回はヨーグルトで代用しました。イベント中にвареникиに関する小説や映画の紹介もあり、興味深かったです!

(五十嵐)

料理教室  Это было первое мероприятие с тех пор, как мы начали заниматься онлайн. Я была очень рада вернуться в аудиторию и увидеться со всеми участниками. Я сильно волновалась, так как я первый раз вела кулинарный мастер-класс. Но мне очень помогали все участники мероприятия, за что я им очень благодарна! Вареники получились очень вкусными и мы почти всё съели. Я очень надеюсь, что в скором времени мы сможем снова провести какое-нибудь интересное мероприятие!

 今回はオンライン授業が始まってから最初の対面行事でした。教室に戻って参加者の皆さんに会えてとても嬉しかったです。料理教室の講師を務めるのが初めてでとても不安でしたが、参加者の皆さんに大いに助けていただいて大変感謝しています。ヴァレーニキはとても美味しくできたので、みんなでほぼ全部食べてしまいました。近いうちにまた何か面白い行事ができるようになることを願っています!

(ヴァリナ)

 今回料理教室に初参加しヴァレーニキを作りました。

 ヴァレーニキは見た目は餃子のようですが、マッシュポテトやベリーを入れるのが特徴的でした。

 マッシュポテト入りのヴァレーニキには、少し甘いタマネギのソースをかけるととてもおいしかったです。また、ベリー入りのものは甘酸っぱくてヨーグルトをかけてデザート感覚でいただきました。

 粉から生地を作るのは手間がかかりますが、自分では手抜きバージョンで市販の餃子の皮で作ってみようかと思っています。

 また、今回は久しぶりに横浜ロシア語教室に行きました。

 コロナのため毎週の授業はずっとオンラインだったので、オリガ先生やクラスメートとも実に1年半ぶりに会ってお話ができ、暑い真夏の1日、楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

(額田)

現代ロシア映画鑑賞会「エルフと不思議な猫」8月29日(日)

「エルフと不思議な猫」  今回は、2019年のファミリーアドベンチャー映画「エルフと不思議な猫」を鑑賞。3人が参加しました。会員の石井さんから感想をいただきました。
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 14時から!!途中で引き返したくなる程の蒸し暑さの中、でも猫を主人公とした映画。楽しみ!!…と信じて会館に向かいました。

 広い素敵なアパートに引っ越したヴィカ(母)とアリナ(娘)。そこには人間の目には見えない妖精の青年エルフが棲んでいました。エルフは気に入らないことが有ると、心がどうにもならなくなって家具が飛び散る程の超常現象を起こします。ところが猫のクジャは、エルフと会話が出来るのです。2019年制作、さすが、画面も音楽も美しい。

 エルフのふと見せる淋しげな表情に「エルフを傷つけたのはあなたでしょう」と言いたくなってしまいます。理解されにくい発達障害とか統合失調症とかの片鱗を感じてしまいました。部屋には、魔女の宝石が隠されていました。そんなモノは要らない。妖精だろうが、猫だろうが皆家族皆友達、一緒に「住もうよ」

 帰り道は、少しだけ爽やかな秋の風が吹いていました。
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 次回は「ボリショイ・バレエ 2人のスワン」(2017年)を予定しています。

教室案内

ロシア民族楽器「バラライカ」「ドムラ」教室

 ロシア民族楽器を本格的に習える当教室は毎月2回土曜日にレッスンを行っています。
 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講、実質個人レッスンとなります。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

 8月は21日に実施予定です。
 詳細はお問い合わせください。

時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
レッスン料(1回、税10%込):一般11,000円、会員9,500円
※オンラインの場合は各1,000円引き


みなとみらいマトリョミン教室

 マトリョーシカの中に世界最古の電子楽器テルミンが内蔵されたユニークな楽器「マトリョミン」の教室です。
 この1年はコロナ禍で休講が続いていましたが、オンライン個人レッスンの募集を再開します。

 詳細はお問い合わせください。

講師:檜垣 紀子


横浜ロシア語センター 第135期 10月開講!

 当協会のロシア語講座もこの10月で第135期となります。コロナ禍でも皆様が何とか勉強を続けられるよう、教室でも試行錯誤を繰り返しています。

 来期は継続クラスと新規入門に加えて、月曜夜にロマノフ・セルゲイ先生の上級者向け「総合ブラッシュアップコース」も開講予定です。

 詳しくは当センターホームページをごらんください。

横浜ロシア語センター 「入門」10月新規開講

 2021年10月から、初めてロシア語を学ぶ方のための「入門」クラスを開講します。アルファベットの読み書きと発音、初歩の文法を学び、簡単な会話ができるようになることを目指します。また、ロシア語圏の文化も学んでいきます。活きたロシア語を楽しく積極的に学ぶ講座をぜひ体験してみてください!

 授業形態は原則として対面(オンライン併用)の予定ですが、新型コロナウイルス感染拡大状況によりオンライン授業に切り替える場合があります。

【水曜クラス】10月13日より毎週水曜日19:00~20:30 講師:大山 麻稀子

【土曜クラス】10月9日より毎週土曜日10:30~12:00 講師:織田 桂子

 詳しくは当センターホームページをごらんください。

ラリーサ先生の動詞攻略支援講座報告

 8月14日(土)14時から夏休み特別リモート講義「ラリーサ先生の動詞攻略支援講座」が行われました。参加者は18名と当センターにとってはかなりの数でした。ジェルーリ・ラリーサ先生は、ロシア語の成り立ち、歴史、そして動詞の特長について、日本語とロシア語を交えながら分かり易く講義してくださいました。

 以下、受講生の皆様の感想文からもいかに楽しいレクチャーであったかが伝ってきます。(以下敬称略)
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 ラリーサ先生の動詞攻略支援講座、楽しく拝聴いたしました。

 盛りだくさんの予定で、全部入るのかと思っていましたが、やはり教材まではたどり着けなかったようですね。でも、ロシア語の歴史なども興味深い内容で、楽しかったです。ありがとうございました。

(大山)

 「動詞攻略支援講座」といういかめしい名称に緊張していましたが、結果的にはロシア語の歴史を学べる講座となり、とても興味を惹かれました。日頃格闘しているロシア語がこのように難しくなった過程が少しわかったような気がします。動詞や多義語、接頭辞、完了体と不完了体などについての時間が短くなってしまったのは残念ですが、先生の言葉「ロシア語はとても難しい。ただ愛するしかありません。」に賛同です。続編期待します!

(仲)

 8/14(土)のラリーサ先生の動詞の変化に関する講座を受講させていただきありがとうございました。大変おもしろい興味深い講義で、古東スラブ語には、ノブゴロド(北方)とキエフ(南方)を中心とする諸言語に分かれること、大昔、白樺の皮に文字を記したこと、モンゴル(タタール)支配がロシア語に与えた影響、トルストイが小説を書いた時、フランス語で書くかロシア語で書くか、迷ったこと、東スラブ語でミルクはMolokoと言う発音だったが、時代を経るにしたがいマラコーと発音されるようになったことなどを知ることができました。また、講義に使われた動画はわかりやすいものでした。

(太田)

 先日はラリーサ先生の動詞攻略法に参加させていただき、ありがとうございました。大変興味深い内容でした。ロシア語の歴史に触れることができました。ポーランド語や色々な言語の影響を受けて今のロシア語になったのですね。

 また、ピョートル大帝やカラムジーンやゴーゴリなども影響を与えていたことがわかりました。まだ動詞は余り勉強していませんが、これからも頑張ります。今後もこのような面白い講座をまたぜひお願い致します。

(寺澤)

 感想をお寄せいただいた皆様、ご参加の皆様、ご協力どうもありがとうございました。ローマならずとも動詞攻略は「一夜にして成らず」ですので、これからも支援講座は行う予定でいます。

(野口 福美/横浜ロシア語センター長)

組織・財政

組織状況

(2021年8月31日現在)

 8月の会員数は、134期ロシア語講座の非継続者の確認作業で3名の方を退会処理としたので、7月から3名後退の226名となりました。9月は、135期講座への新規申し込み者があることを期待しています。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2021/8/31
単位:円
摘 要本年度当該月収入前年度当該月収入対前年度増減
一般会計62,40052,32310,077
教育事業510,980177,672333,308
一般事業51,88336,15115,732
合 計625,263266,146359,117
摘 要本年度当該月支出前年度当該月支出対前年度増減
一般会計347,186522,995-175,809
教育事業226,470255,840-29,370
一般事業8,32039,575-31,255
支出合計581,976818,410-236,434
当該月収支43,287-552,264595,551
累計収支計-921,251-597,218-324,033

 8月の財政状況は、ロシア語講座の夏休みがあったので、講師料などの教育事業に係る支出が少なくなる一方で、当協会の財政困窮を憂慮してくださったのか、早めに135期の授業料を納入された方が何人かいらっしゃいましたので、8月当月の収支は、4万3千円の黒字となりました。1月からの累計収支は、まだ92万円の赤字です。9月からの135期講座の授業料収入を期待していますが、各クラスで少しずつ継続されない方が出ています。また、新規入門体験講座への申し込みが、現在のところ1人のみとなっているので、心配の種となっています。昨年の一般会計事業の支出が今年に比べ17万程度多くなっているのは、昨年猛暑の中、1F事務局のエアコンが壊れたので、急遽取り替えた費用で9万円かかったことによります。

(木佐森)

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

ロシア・トップ10  9月1日に彼方此方の学校で入学式・始業式があったロシアから、2021年8月第3-4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。今月も10曲中3曲が新曲!

 5staFamilyの2代目元Voで現在はソロ活動中のユリアンナ・カラウロワの新曲≪Винчестер≫(ウィンチェスター)が初登場7位に。タイトルはウィンチェスターライフル銃からつけています。

 5位にガリブリとマヴィクのHIPHOPファーストシングル≪Федерико Феллини≫(フェデリコ・フェリーニ)がランクイン。クラーヴァ・コカやハビブなどのアーティストを若い世代の媒体で爆発ヒットさせたプロデューサー同士です。

 セクシーユニット・ヴィアグラの元Voロボダの≪Родной≫(愛する人)はまだ人気ですが、さらに新曲≪Allo≫(もしもし)がリリースされ、初登場4位にランクインしました。彼女は+18的なことも取り入れる過激さがありますが慈善活動家でもあり、2020年には新型コロナ感染で苦しむ多子家庭を支援するロシアとウクライナの共同慈善活動に参加して18万ルーブル(日本円にして約27万円)を超える寄付をしました。しかし4月に入って新型コロナに感染。現在は復活しています。

 カザン出身男性ユニット・ダブロの新曲≪На часах ноль-ноль≫(午前0時に)が、2ヶ月連続首位です。YOUTUBEのチャンネルでは既に2600万回再生されています。おめでとうございまーす!:-)

画像は https://vk.com より

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2021年8月13日~19日/MOPA)

あのズヴェズダー*は今 5. イワーヌシュキ・インターナショナル (Иванушки International) 後編

かつてショウビズ界を席巻した有名人の当時と現在を追う。
第5回目はイワーヌシュキ・インターナショナル(以下、敬称略)。
*ロシア語で звезда=スターの意。

 ソ連時代から続くロックグループのリューベなど多くのアーティストを世に出したヒットメーカー、マトヴィエンコ・イーゴリのイニシアチブの元1995年に結成された大人気男性トリオИванушки International(イワーヌシュキ・インターナショナル)。26年経った今も現役で活動しており、≪Тучи≫ ≪Беги≫ ≪Тополиный пух≫ ≪Билетик в кино≫ ≪Танцуй, пока танцуется≫ 等々….他にもたくさんヒット曲に恵まれている。今回はテノール担当メンバーの変遷をご紹介。これまでに2度交代している。

イーゴリ(1期イワーヌシュキメンバー)  初代テノールはソリン・イーゴリで、1969年11月10日モスクワ市生まれ。95年の結成時から98年までグループに在籍していた。少年時代に、映画監督のミハルコフ氏がある映画の役をイーゴリから別の少年に変更する提案がなされた。これを知ったイーゴリは失望のあまり2階から飛び降りる無謀なことをしたが、大事に至らなかった。以後グネシン名称音楽学校コメディ音楽科に進学。欧州やニューヨークのブロードウェーミュージカル「Minskoff」と「メトロ」に出演しさらなる研修を薦められたが、キャンセルし、モスクワに戻った。しばらくして「MInskoff」で共演したアンドレイと共にイワーヌシュキ結成に招待された。ファーストシングル≪Вселенная≫が不調だったが、セカンドシングルの≪Тучи≫でMVの芸術性で人気は鰻上り、多くのファンを獲得した。だが98年頃にグループ活動に倦怠感を感じ、ソロ転向を考え始め、98年3月に脱退した。脱退後は、悲しい結末だった。ソロ活動時のプロデューサーとの報酬交渉で見合う歩合が得られなかった。そして脱退の僅か半年後、「僕の家族へ。ママへ。パパへ。サーシャへ。もう終わりだ。でもヴェネツの冠の詩のように、この世に雛鳥が生まれようとしている。飛んで!」という遺書を残し6階のバルコニーから飛び降りた。頚椎骨折、内蔵挫傷、手足の麻痺の症状があったため、経験豊富な医師が担当し手術は成功したが、心不全のために他界した。彼の死には謎が多く、うつ病説、薬物依存説、新興宗教団体レイキによる恐喝説が挙げられている。

オレグ(2期イワーヌシュキメンバー)  初代の脱退に合わせてキャスティングされたのが、モンゴル出身のヤコブレフ・オレグ。ギチス(ロシア演劇芸術大学)で学んでいた。キャスティングされた当時は、イーゴリのパートを歌う度に熱烈なファンらから猛烈なブーイングを浴びていた。しかし新曲≪Тополиный пух≫がリリースされたことで、「イーゴリの代役ではなく、やっとイワーヌシュキの正式Voになったように感じたんだ」と落ち着きを取り戻した。交代メンバーの中では最長の15年もグループに在籍していたが、脱退する少し前から事実婚の妻がプロデュースしてソロ活動も始めていた。2013年3月に正式脱退しソロ活動を続けていたが、活動が芳しくなかったのかアルコール依存になり、2017年6月28日に重度の両側肺炎と肝硬変で入院し、その翌日には心停止で他界した。

キリル(3期イワーヌシュキメンバー)  二代目の脱退に合わせて、今度は1983年1月13日オデッサ市生まれのトゥリチェンコ・キリルがキャスティングされた。不動メンバーのキリルとアンドレイとは一回りも年齢が違う。このため両キリルによる「僕イワーヌシュキのノート買ってたよ。因みに僕はキリル(アンドレーエフ)のファンだったけど」「おお、キリル(トゥリチェンコ)、息子よ~」なんて微笑ましい会話が周年コンサートでされる程だ。また歴代交代メンバーと比べ精気に溢れていて、伝説のボーイズユニット・イワーヌシュキの不動メンバーと一緒にいても堂々としている。それもその筈、小さい頃から数々の音楽コンテストなどに出場し続け好成績を獲得してきている。例えば、ウクライナのユーロヴィジョンコンテスト2006出場者選考会で2位を獲得したり、ゴーマンやパナヨートフ、チュマコフなどを輩出した「ナロードヌィエ・アルチスト」に参加したり、ラザレフとトパーロフのイケメンユニット・SmashでバックVoを勤めたり、ミュージカル「CATS」にも出演。またソロとしても実績を残しており、彼のファンも多い。つまり素人ではなく、ユニットに相応しい百戦錬磨の中堅アーティストなのだ。マトヴィエンコが三代目を探しているとき、オデッサ市のカラオケバーでキリルと会ってご縁となった。現在はソロとグループ掛け持ちで精力的に活動している。

 2015年にイワーヌシュキ結成20周年記念コンサートを開催し、大入り満員で大熱唱した。その5年後にあたる2020年には25周年を祝う予定だったが、新型コロナの影響により2021年11月に延期となった。彼らが築く伝説をまた見続けていきたい。

(MOPA)

<参考>
http://www.matvey.ru/ivanush/
Vk.com/ivanushkiband
Wikipedia. Иванушки International

映 画

「DAU. 退行」

「DAU. 退行」 (I.フルジャノフスキー&I.ベルミャコフ監督作品、2020年、独・ウクライナ・英・ロシア)

 2020年に公開された「DAU.ナターシャ」はミニシアター・ランキングで脅威のロングランとなったが、観客の間からは「未曽有の消化不良」との声も。反響に応えるべく、早くも前作の第二弾「DAU.退行」が全世界に先駆けて公開となった。

「DAU. 退行」  1万2千平方メートルの広大な撮影セットで主要キャスト400人、エキストラ1万人、15年以上もの歳月をかけて作り上げられた狂気のプロジェクト「DAU」。本作は1966-68年、自動車事故で療養中のランダウ博士のために作られた秘密の「研究所」が舞台となっている。ナターシャに壮絶な拷問を加えたKGBのアジッポは所長に昇進し本作のメインキャストに。

「DAU. 退行」  ストーリーは研究所内部で繰り返されていた「超人」を作る奇妙な実験に焦点を当てる。フルシチョフの時代を経て、スターリンが築き上げた強固な全体主義社会の理想が崩れ始めた時代、酒やダンスなど自由を謳歌し始めた人間に襲い掛かる邪悪な力。コミュニズムという「宗教」における壮絶なせめぎ合いはじわじわと激しさを増し、目を疑うような最終章へとなだれ落ちる。

 ファシズム、性搾取、差別といった人間の暗部を余すことなく抉り出し、現代社会への警鐘を鳴らす本作は、ダンテの「神曲・地獄篇」になぞらえた全9章、6時間9分の大長編!

 シアター・イメージフォーラムで2週間限定公開、神奈川はシネマ・ジャック&ベティで公開予定(時期未定)。

文・滝沢 三佐子
スチール写真・(C) PHENOMEN FILMS

「アイダよ、何処へ?」

(ヤスミラ・ジュバニッチ監督作品、2020年、ボスニア・ヘルツェゴビナ/オーストリア/ルーマニア/オランダ/独/ポーランド/仏/ノルウェー/トルコ)

「アイダよ、何処へ?」  ボスニア紛争末期の1995年7月11日、ボスニア東部の街スレブレニツァがセルビア人勢力の侵攻によって陥落。避難場所を求める2万人の市民が国連施設に殺到、しかしセルビア人勢力は国連との合意を一方的に反故にして難民の「移送」と「処刑」を開始する。国連保護軍の通訳アイダの目を通して描く戦後ヨーロッパ最悪の「スレブレニツァ・ジェノサイド」の真実。

「アイダよ、何処へ?」  9月17日(金)より渋谷Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館などで公開。

(文・滝沢 三佐子/写真・(C)2020 Deblokada / coop99 filmproduktion /Digital Cube / N279 / Razor Film / Extreme Emotions / Indie Prod / Tordenfilm / TRT / ZDF arte)

「チェーホフと遊ぼう」に出演しませんか

●Part1 一般参加者を広く募集

 民話「大きなかぶ」を題材に、シアターゲームで遊びながらデバイジングという手法を取り入れて演劇を制作し発表します。

 応募にあたって:小学1年以上の方(小・中学生は保護者の同意が必要)。参加費は無料です。ただしPCR検査費用として3,000円が必要です。すべての稽古に参加可能な方(ご相談ください)。
 応募締め切り:10月31日
 面接:11月

 稽古予定:12月4, 5, 11, 12, 18, 25日午後。
 2022年1月4-5日10-13時に板橋区内にて。

 本番公演2022年1月6-7日、板橋文化会館小ホールにて。

●Part2 公演

 チェーホフの短編から「頸の上のアンナ」などを公演します。

連載「ロシア童話の世界」
『森は生きている』Двенадцать месяцев (1943)

S. Y. マルシャーク С. Я. Маршак (1887-1964)

横浜ロシア語センターサイト・研究室のページ「ロシア童話の世界」にてごらんください。

【休載のお知らせ】
 筆者の都合により、来月より本連載をしばらくお休みさせていただきます。尚、この連載は横浜ロシア語センターウェブサイトの「研究室」ページでも2020年6月号掲載分から全て読むことができます。

ユーラシア通信

山中竹春新市長の誕生と私たちの協会

 林・元横浜市長の下では、同市公式ホームページに「横浜市は8つの姉妹・友好都市と、スポーツ・文化・技術などを通して、目的や期間に特別な取り決めをせず、包括的な交流を行っています。」と記されていました。

 実際にどんな活動をしていたかということも記されています。

 例えば、アメリカの海軍軍港都市サンディエゴとの交流には最大のスペースが割かれ毎年の交流史などが掲載されています。市長の相互訪問もありました。

 中にはこんな記述もあります;

「良き友人として:平成15年10月、カリフォルニアで大規模な森林火災が発生し、サンディエゴでも多くの被災者が出ました。横浜市では、市職員、市民、様々な団体に呼びかけ約1か月にわたり募金活動を実施。寄附は合計約200万円にも及びました。」

 一方、ウクライナのオデッサ市との交流については;

「オデッサ市とは過去に行政交流、保健医療交流等を実施しています。オデッサ市から医師数名を研修や施設の視察等のため、本市で受け入れています。近年では、2001年に医師4名を受入れました。」とあり、交流は受け入れだけであり、しかもここ20年間、何の交流も行われていないことが分かります。1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原発で原子力発電開発史上最悪の事故が発生した際にも何のお見舞いもありませんでした。

 事実上、姉妹都市を「良き友人」と「そうでない友人」に分けているのです。そのような差別はあってはならないことです。

 ソ連邦が崩壊し、ロシア連邦共和国とウクライナ共和国が分離した暫く後に私が「最も近い隣国ロシアとの姉妹都市を検討してみませんか?」と総務部の姉妹都市担当者に提案した時、その返事は「市長は姉妹都市運動には力を入れていません。民間でやればよいという考えです。」との事でした。安倍・菅内閣の「自助・共助」の考えです。

 残念ながら林市政では姉妹都市を通じての友好・親善・平和を推進するという考えは全く見えませんでした。

 カジノ問題は「白紙」と公約して当選した林市長が菅内閣の方針に従って「カジノ推進」に転じたことに圧倒的多数の市民が反対しました。その力を基礎に市民運動と立憲野党(立憲民主党・共産党・社民党・新社会党・緑の党)及びハーバーリゾート協会が結集、「カジノNO!」の山中新市長を誕生させました。

 「カジノ反対の市長を誕生させる横浜市民の会」と山中竹春市長候補(当時)が7月25日に締結した「市政運営と政策の基本に関する協定」の<5つの目標>の第5項には;「世界に開かれた国際港都として国際文化交流の発展と国際平和を発信する施策を進めること」と私たちの要望が明記されています。

 私たち市民が主人公の横浜市政が実現されたのです。

 これからは私たち市民の提案が横浜市の国際友好と平和の施策を動かすのです。

 これによってNPO法人神奈川県日本ユーラシア協会は横浜市と協力して新たなロシア、ユーラシア諸国との姉妹都市提携、横浜市を通じての大規模なユーラシア諸国との文化交流、スポーツ交流などを全市的に展開する現実的可能性が生まれたのです。

 過去を顧みれば、自治体との提携関係が良好であった飛鳥田市政の場合、市長自らが当時の日ソ協会神奈川県連の名誉会長に就任され、ヨコハマの貿易業界を結集して共産圏貿易を推進するために当協会が提起した「横浜貿易協同組合」の創設と運営に全面的支援をしたり、横浜高島屋でのソ連民芸品展に協賛したり、自民党の市会議員迄協会の会員にしたりしました。他県でも石川県連は旅客機一機をチャーターして姉妹都市イルクーツク市民と交流を行うなどしました。

 私たちの協会も今後は横浜市民、神奈川県民の国際交流の要望を深く、広く分析し、積極的に横浜市に問題を提起し、広範な市民、県民と共に国際友好運動を推進することが必要です。

 この事をしっかり銘記してこれからの国際友好運動を展開しようではありませんか。

(顧問・柴田順吉/1978年「市民の市長をつくる会」創立時の総務部長)

ウサギが餅をついている理由は?

 もうすぐ十五夜。今年の十五夜は、9月21日(火)で、満月です。実は、十五夜が満月になることは珍しいのです。月や地球の公転軌道が楕円形である関係で、大抵、満月より1~2日ずれます。ちなみに「十五夜なのに、21日?」と不思議に思われた方、元は十五夜は旧暦で行われていた風習で、旧暦の月の始まりは新月の日。その日から14日後が十五夜。しかし、先程の理由で新月から満月になる迄の日数にずれが生じるのです。

 さて、日本では「ウサギが餅をついている」と見られている月ですが、他の国では、また色々と違って見える様です。ロシアでは「月に住む少女」。北アメリカや東ヨーロッパでは「髪の長い女性」。南ヨーロッパでは「カニ」他にも様々に。

 日本のウサギには、中国から仏教と共に入って来た悲しい伝説がありますが、字数の都合、省略します。ちなみに、十五夜のお月見も中国から。十三夜のお月見は日本固有のものです。また、「ウサギが餅をついている」のは、ウサギ伝説とは別々に、後につけられた話。満月の別名が望月(もちづき)なので、「もちづき」→「餅つき」になった…そうです。

 ところで、1970年の大阪万博では、アメリカのアポロ11号が持ち帰った「月の石」が展示されましたが、当初は、ソ連がアメリカより先に「月の石」を持ち帰る計画だったようです。そして、「大阪万博に出品しようと…」。それは、ソ連のレオノフ宇宙飛行士の言葉からもわかります。ルナ15号は、アポロ打ち上げの直前の1969年7月13日に打ち上げられました。(アポロは7月16日!!)しかし、何からの不都合でソ連の計画は実現できなかったようです。後にソ連は無人探査機で「月の石」を持ち帰りますが、アポロが有人で行った後では、その偉業もかすんでしまいました。

 最後に、アポロ11号が着陸したのは月の表面の「静かの海」ですが、月の裏側には「モスクワの海」や「ガガーリン」「ツォルコフスキー(ソ連宇宙開発の父)」といった名のクレーターも存在します。

 でも、地球から月の裏は見えませんね。

(とくなが なつみ)

教室の椅子座布団が新しくなりました

教室の椅子座布団  これまでも横浜ロシア語センター5階教室の24個の椅子に既成の座布団が掛けられていましたが、椅子と結んでいるリボン状の布が使用している中で切れてしまい、座布団が椅子と離れてしまっているものがありました。それを心配した事務局の坂本文江さんが、ご自宅にあった布で新しい丈夫な座布団を手縫いで作ってくれました。

 現在は、写真のように2番教室と1番教室の椅子に8枚取り付けてあります。残りのイス座布団も暫時取り替えてくださることと期待しています。

(木佐森)

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