三連休の中日、9月22日(日)に、簡単料理教室と第2回サハリン旅行事後交流会が開催されました。旅行参加者5人と一般参加者2人が集まりました。
料理教室は2種類、海軍マカロニと陸軍マカロニ。簡単料理なので、ちょっと手伝ってもらうだけで済みました。海軍マカロニは玉ねぎを刻み、挽肉を炒めたところへ茹でたてのマカロニを入れて、塩コショウで味付けするだけ。陸軍マカロニは挽肉がコンビーフに代わるだけ。参加者の評は、「コンビーフの方が、高級感があっていい!」とのことで、軍配は陸軍マカロニに上がりました。今後は、こちらもレパートリーに加えたいです。
その後は、お楽しみの事後交流会。田中理事長苦心の作のDVDを鑑賞しながら、旅の感想を語り合いました。昨年参加し、今年は不参加だった川北さんが「今年はこんなところへ行ったのですか」と興味深くDVDを見ておられました。まだ、サハリン未経験の坂本さんは、「来年は私も」との嬉しい感想も。旅のあれこれを陸海軍のマカロニと、日塔さん差し入れのパンと共に舌鼓を打ちながらの語り合い。参加者の心は、早くも来年へ。第三回旅行の成功を思わせるような楽しい交流会でした。
(関戸)
サハリン旅行断簡(2)
6. 祖父の家を訪ねて
三日目は最大の移動距離の日でした。宮沢賢治の足跡を辿り、ブズモーリエ(白浦)まで。途中のスタロドブスコーエ(栄浜)では、他の日本人ツアーがいました。宮沢賢治の足跡を辿るのは、定番になっているようです。そして、ここを訪れるのは日本人だけのようで、地元の人が「なぜ、日本人はここに来るのか」と聞いてきたのです。宮沢賢治のことを説明すると、昔のことを語ってくれました。「あそこに学校があって、こちらには病院があった。日本人が建てたものだ」と。宮沢賢治が訪れた時の駅はなく、わずかに枕木があるだけです。これも、何年かの後にはなくなってしまうのでしょうか。海岸では、琥珀が拾えるのですが、年配の男性がその琥珀をくれました。
昼食はドリンスク(落合)。そして、この地に特別の思いを持ってこられたのが、神戸さん・吉田さん姉妹です。以前、訪れた時に旧王子製紙工場内に入ることができす、車内からの見学だけだったとのこと。祖父が住んでいた家が工場正門の前にあり、その地図を持参してこられました。地図で場所を確認しましたが、家屋はもうありません。その跡を偲び、皆で写真に収めました。昨年は工場跡に入ることができたのですが、今年は鎖がかけられていて、立ち入りができませんでした。でも、住んでいた家とその場所を見ることができたのは何よりでした。
その後は、宮沢賢治が「白鳥の湖」と呼んだ湖の近くまで行き、ブズモーリエまで。鳥居で写真。そして、お楽しみのカニ。大きなカニに舌鼓を打ちました。
7. ハガキはどこに?
四日目はホルムスク(真岡)へ。「北のひめゆり」と言われた悲劇があった場所です。その真岡郵便局があったところに、新しい郵便局があります。昨年はここで切手とハガキを買い、日本に郵送しました。ところが、今回はそのハガキが郵便局で販売してなかったのです。昼食をしたレストランで、売っているところがないか、聞くとスーパーを紹介してくれました。しかし、そこに行ってもなかったのです。ホルムスクの大通りをあちこち探しましたが、結局買えませんでした。文具店で聞くと、カードを封筒にいれるのが一般的で、ハガキを単独で出すことは、あまりないとのこと。だとしたら、昨年はラッキーだったことになりますね。次回はホテルで用意するように検討します。
行きも帰りも、「バンブーチキカフェ」での休憩は楽しかったです。
8. お土産はここで
最終日は、極東最大のショッピングモール、「シティモール」での買い物。別の日には、スケジュールがタイトで、ゆっくり買い物ができませんでした。日本へのお土産を両手いっぱいに買い込みました。
次回は、欲張った計画は立てず、ゆとりのある日程にしたいと感じました。
まだまだ二回目なので、あちこちに無理や不備がありました。今後も参加者が「来てよかった」と思えるような旅行になるよう努力していきたいです。
(文・関戸/写真・内藤)
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今期は、9月7日(土)に土曜日シチュエーション会話・入門クラスの体験講座を11時から、初級1クラス体験講座を13時から開催し、ヴァリナ・ヴァレリヤ先生の入門クラスに11名、野口初級1クラスに8名の参加を得ました。
また、9月21日(土)にも11時から水曜日の小林淳子先生の入門クラス講座には10名の方が、午後のジェルーリ・ラリーサ先生の文学鑑賞講座には5名の方が参加されました。
このように、今回の体験講座は、諸先生方のスケジュールの都合が一致せず、2回に分けて行われましたが、各回とも多くの方に関心を持っていただき、盛会に行うことができました。何名かの参加者は、関心のある講座の両方に参加され、また受講生の参加も多く、体験講座が一般の方だけでなく、会員・受講生の皆様の関心を集めていることを実感できました。今期は10月15日(火)より、各クラスを順次開講します。
(文・野口/写真・森)
10月15日(火)、ロシア語講座の新学期が開講されます。月曜~土曜、入門~上級・会話・日本案内 各クラス開講。水曜と土曜に「入門」、水曜に「会話」、木曜に「文学鑑賞」、金曜に「会話で学ぶ日本案内」、土曜に「おもてなしのロシア語」クラスを新設予定です。
詳しい内容は教室ホームページをごらんください。見学は3クラス・各30分まで無料です。
お申し込み・お問い合わせ:
TEL/FAX 045-201-3714
メール yokohama-rosiago@hotmail.co.jp
教室ホームページ
レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講、実質個人レッスンとなります。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。
今後の予定:10月5日、10月12日、11月2日、11月23日、12月7日、12月21日
※変更の場合がありますので、見学・受講ご希望の方は事前にお問い合わせください。
時間:14:30~18:15の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
レッスン料(1回、税10%込):一般11,000円、会員9,500円
お申し込み・お問い合わせ:
eurask2@hotmail.co.jp
Tel/Fax 045-201-3714
日程:毎月1回、土曜日開講
2019年度後期日程:10月19日、11月16日、12月21日、1月18日、2月15日、3月21日
内容:個人演奏・アンサンブル各クラス
レッスン時間:Aクラス13:00~14:00、Eクラス14:10~15:40
2019年10月以降の受講料(税10%込):
アンサンブル Eクラス 3,667円×6回=22,000円
グループ・個人レッスン A/Bクラス 3,142円×6回=18,850円
※10月より消費増税のため、受講料も上記の通り改定させていただきます。
講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センターホール
お申し込み・お問い合わせ:
eurask2@hotmail.co.jp
Tel/Fax 045-201-3714
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芸 能
Русская Десятка ロシア・トップ10
秋が深くなったロシアから、2019年9月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。先月に引き続き今月も10曲中6曲が新曲、しかももう1曲がカムバックでもう大変な騒ぎ!
露音楽芸能界の貴公子ラーザレフの新曲≪Лови≫ (捕まえて)が10位にランクイン。8位に露のユーチューバー、アニヴァールの≪Любимый человек≫ (好きな人)が入りました。5位にHIPHOPのルサスの≪NBA≫ 。4位に人気絶頂デュオ、アルティックとアスティの新作≪Под гипнозом≫ (催眠術下で)がランクイン。3位にJONYの≪Аллея≫ (並木道)。
夫婦のダリヤとヴィクトルが2018年に結成したディープハウス系ヒップポップユニットRASAが7月にリリースした≪Пчеловод≫ (養蜂家)がいきなり首位に。2018年には露音楽TV主催の音楽祭典で、活躍目覚しい新アーティストに贈られるモーシヌィ・スタート賞にノミネートされるほど、今勢いあるユニットです。今後に期待。おめでとうございまーす!:-)
(Tophit.ru, Russia Airplay Chart、2019年9月16~22日/MOPA)
露大人気ラッパーTIMATI、政府賞賛のMVで史上最低評価を受ける
露TOPのラッパーであるTIMATI。まるで耳無し芳一の様に体中にタトゥがびっしりと施してあって、「悪そうな奴等とは大体お友達」的なオーラを髣髴させ、驚くべきお友達リストに露のプーチン大統領があるというツワモノであるが、世界中のセレブなトップアーティスト陣とコラボして2013年に世に出したアルバムSWAGG(邦題:ブッコミ帝王の逆襲)はTUTAYAチャートで首位獲得するなど、人一倍野心家で世界進出目覚しい。米誌Forbesで40歳未満のロシア人長者番付で7位。
でも9月の統一地方選挙を前に、現政府を賞賛する内容を歌ったMVをYOUTUBEに公開したところ、同サイト史上最多となる約150万件の低評価を集めた。その気になる内容は「俺は(反政府)集会には行かない。くだらない話なんてしない。」など。これを受けリスナーから「世界初の政府ラッパー。ファンに同情するよ」「(このビデオを)頼んだ奴に金も返したのか」など、TIMATIがプロパガンダを作り、政府当局から金をもらったと批判する声が寄せられた。
(MOPA)
映 画
「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」
(2018年/ロシア/アレクセイ・シドロフ監督作品/原題:T-34)
興行収入40億円超、動員人数800万という驚異的な記録を打ち立てた戦争映画。いや、戦車映画とでもいうべきか。とにかく、「本物」のT-34-76、T-34-85とレプリカのドイツ戦車「パンター(Ⅲ号戦車)」(現存する戦車が残っていないため)の激突が楽しめるエンターテインメント作品だ。
1941年、T-34車長のイヴシュキンは、死闘の末イェーガー大佐の率いるナチス・ドイツの捕虜となる。部下を失い失意の底にあったイヴシュキンは反抗的態度で拷問を受ける。そのとき、ヒトラーユーゲントを一任されたイェーガー大佐は、優秀な戦車兵を育成すべく、イヴシュキンに訓練演習の標的となることを命じる。
通訳を行うロシア人捕虜アーニャを人質にとられ、イェーガーの命令を聞かざるを得なくなったイヴシュキン。捕獲されたT-34の中には未使用の砲弾6発と手りゅう弾が残っていた。彼は演習用に整備すると見せかけて、3人の捕虜仲間と共に「脱走」を計画する。
俳優自らが戦車を運用するというのが一つの売りである。戦車内の役割分担などよくわかる。また、砲弾が戦車をかすめ局所的に命中したときの「衝撃」も売りだ。鼓膜が破れ、脳震盪を起こさんばかりのリアルさは圧巻。戦車から放たれる砲弾が極度にデフォルメされるところは笑ってしまうが、そこがエンターテイメントたるゆえん。
また、捕虜収容所のロケ地はテレジン強制収容所(チェコ)の跡地ということで、囚人列車は実際に使われていたドイツの蒸気機関車だそうだ。ドイツ語学習者も楽しめる作品。
10月25日より全国公開。
(滝沢)
(C) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018
「私のちいさなお葬式」
(ウラジーミル・コット監督作品、2017年、ロシア、原題:Карп отмороженный )
村唯一の学校で教師を務めた73歳の独居未亡人、エレーナ・ミハイロヴナ。息子は都会でビジネスを成功しめったに帰らない。ある日彼女は医者となった教え子から、余命宣告を受ける。病院からの帰り道、彼女は釣り師のワレーラから大きな鯉を押し付けられ、しかたなく冷凍庫へ。帰省した息子は、お金をおいてわずか数時間で都会へ戻ってしまう。その夜、冷凍したはずの鯉が生き返り、エレーナはその鯉を「飼う」ことに。
余命が気になるエレーナは、愛する息子に迷惑をかけまいと、一大決心して自分の葬式準備を開始。役所で死亡証明が必要だと言われた彼女は、教え子を頼り遺体安置所で自らの死亡証明を「発行」してもらう。好きな棺桶を買って台車で持ち帰る。近隣の女たちが葬儀の料理を手伝う。そのさまはまるでホームパーティを準備するようで抱腹絶倒。すべてが整い、夫との思い出の曲を聴きながら死化粧をするエレーナ。そのとき、あの鯉が桶から飛び出して、彼女の計画は思いもよらない方向へ向かう。
たくましいイメージのロシアの「バーブシュカ」が、想像以上にチャーミング。鄙びた地方都市と都会の格差や、ロシア版終活と親子関係の微妙さが観る者をひきつけてやまない傑作。
ちなみに、V・コット監督の双子の弟は、「草原の実験」を撮ったアレクサンドル・コット監督。
12月より東京・シネスイッチ銀座、横浜・ジャック&ベティで公開。
(滝沢)
(C) OOO≪KinoKlaster≫, 2017
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核なき世界への道 日本・カザフスタン国際会議
カザフスタンのセミパラチンスク核実験場閉鎖30周年を記念して、東京表参道の国連大学ウ・タント国際会議場で、9月19日(木)、駐日カザフスタン大使館主催による日本・カザフスタン国際会議「核なき世界への道」が開催されました。ソ連時代にセミパラチンスク核実験場では、合計456回(空中86回、地上25回、地下345回)の核実験が行われ、環境に放出された放射能はチェルノブイリの5000倍になり、150万人以上の放射能被害者を出したと言われています。
会議の冒頭、コジャタエフ駐日カザフスタン大使は「1991年8月29日に、セミパラチンスク核実験場は完全に閉鎖された。この8月29日は、現在、国連の核実験に反対する国際デーになっている。カザフと日本は核の最大の被害者であり、全世界から全核兵器がなくなった時に、初めて、全世界の平和が確立する」と日本語で挨拶しました。
元国連事務次長の明石康氏(写真上、右奥)は、「核なき世界をめざす道は困難ではあるが、それに真剣に立ち向かっていくしかない」と悲壮な決意を述べました。
カザフスタンATOM大使で、放射能の影響により両手が欠損して、絵筆を口にくわえて絵を描いている画家のクユコフ氏(写真左)は、セメイ市を中心に放射能被害が広がっている現状を訴え、中央アジア5か国(カザフ・ウズベク・キルギス・トルクメン・タジク)は、2006年に中央アジア非核兵器地帯条約を結び、核保有国5か国(ロシア、中国、インド、パキスタン、イラン)に囲まれているが、非核地帯を形成して、核兵器の廃絶を訴えていると報告しました。
続いて、セミパラチンスク実験場の現状と核実験の歴史をまとめた映像が上映され、長崎市を代表して、東京事務所長から田上市長のメッセージが読み上げられました。
(木佐森)
スターリングラードを知らない高校生
― 広島ボルゴグラードの日に参加して ―
9月8日(日)、関戸は昨年も参加した「広島ボルゴグラードの日」のイベントに教え子二人を連れて行きました。
ボルゴグラードと広島市は姉妹都市なのです。ボルゴグラードとは、「ボルガ河の街」という意味です。この街がかつて、「スターリングラード」と呼ばれていたことを教え子たちは知りませんでした。「スターリンの街」と称せられたこの街を巡って、独ソ両軍の死闘が繰り広げられたのです。戦後、「英雄都市」と称され、広島やイギリスのコベントリーなどの戦火が及んだ都市と姉妹関係を結んでいます。
教え子たちは、食事作りの手伝いや接客を一生懸命してくれました。また、その後のコンサートやアトラクションを楽しんでいました。教え子たちの嬉しそうな顔を見て、関戸は裏腹に考えてしまったのです。この教え子たちと同じ年のソ連の少年少女が、爆弾や砲弾で吹き飛ばされ、機関銃でハチの巣にされ、飢え病んで死んでしまったことを。この教え子たちの一人と言えども、戦争で死なせたくない。一人と言えども、他国の人の命を奪わせたくない。そんな想いを深くしました。
今後も、こうして参加していきたいと思います。11月17日(日)には、広島で国際フェスタが開催されます。教え子たちは「また行きたい」と言ってくれました。とても嬉しく思います。
(文・関戸/写真・藤井)
新しいメニューを加えての参加 ― 第10回バラホルカ 東京軍装市場 ―
三連休の初日、9月21日(土)に恒例のバラホルカ。早いもので、もう10回。それを意識して、今回は初物を二つ。
一つは、ロシアビヨンドに掲載されていた兵営朝食。その記事には、臨時招集された兵士が「一番うまいと思ったのは、バターをたっぷり塗ったパンに半分に切ったゆで卵をのせたものだ」とあったのです。今回は黒パンで再現してみました。
もう一つは、滝沢さん手作りの「トゥションカ」。恐らく、本邦初でしょう。トッピングとしてつけました。これが大好評。コンサート前には完売となりました。パンが余ったので、バターを塗っただけの黒パンと紅茶で軽食セットとしましたが、これもすぐに売り切れとなりました。
後半のコンサートは、おなじみの「パリャーノチカ」の歌声と佐藤ディララさんの踊り。最後は民族アンサンブル「ガルモーシカ」の演奏。
美味しく楽しい、バラホルカ。機会があれば、是非おいでください。次回は12月14日(土)です。
(文・関戸/写真・滝沢)
小説「山の中のコンサート」Концерт в горах
セルゲイ・ソロモノフ 作
1993年のタジキスタンでは、ソ連崩壊後、多くのロシア人が生き延びるため同地を去らざるを得なくなった。この物語は、そのころの心理状況を表したフィクションである。プロットはサングロー天文台(タジキスタンのサンジロー山)で天文学者として働いていた筆者の友人による回想をベースとしている。
機関銃が火を噴いた。彼らはとっさに屈んだ。
「ヴァーシャ、ここにいるのは怖い。ドゥシャンベではみんなアパートを売り払ってロシアに一刻も早く帰ろうとしているそうよ」
「ドゥシャンベはここから何十キロも離れてるんだ。こっちの方が静かだよ。そういえば小さなギャング団が来ていたな。ナターシャ、きみはロシア政府はここで何が起こっているか知らないとでも思ってるの? なんとかして僕たちを助けてくれるさ。ここの空気はこんなにきれいだし、星も輝いてるじゃないか!モスクワじゃありえないよ。もし戻ったら、息ができないって後悔するよ」
「そうね、ここはいいわ。でも私たちはここのバスマチ蜂起者i にとっては不信心者なのよ。もし彼らがあなたの観測所にカラシニコフ銃をもってやってきたらどうするつもり? 星空案内でもするの? きっとウルグ・ベクiiの運命を思い出させるわよ。だから、まだ手遅れにならないうちに、荷物をまとめて早くここから立ち去りましょう。ただお願いだから、あなたの写真乾板は持っていかないで。あなたが長年撮りためた星の資料だとわかっているけど、あれは運べないわ」
「ほら、反革命主義者たちはもういないよ。彼らはソビエト政権ができた最初の年に排除されたんだから」
「お好みなら人殺しかアフガン兵でもいいわ。ユーリー・シェフチュクの『撃つな』iiiの歌を聴かせなさいよ。彼らがシェフチュクの説教に聴き入ったら、武器をおいて許しを請うわ。それからなに?」
「それから、モスクワも安全じゃないってこと。ビジネスやってるきみのお兄さん、ギャングに金を渡すのを拒否して殺されたじゃないか。賢者のことばに“窓に色をつけた外車に近づくな。AK-47かバズーカが出てくるかもしれないから”ってあるだろ」
そのとき至近で別の機関銃の発砲が聞こえた。
「鉛の山ハエが飛んできたわ」彼女が言った。
「とどのつまり、モスクワで僕は何をしたらいいのかってことさ。ここに比べてあそこでは、澄んだ夜は1年に4回もないよ。そしてここより金もたくさん使わなくちゃならない。どうやって稼ぐんだ? ケプラーに倣って“ゴレスコープ”でも作れっていうのかい?(彼は「ホロスコープ〈horoscope〉に〈gore-scope〉=grief=悲しみをかけてと発音した。星占いを嫌っていたのでこのような皮肉な言い方をしたのだった)大事なのは説得力をもたせることだ。昔、フランスの王様が自分の星占い師に、もし星の動きで死ぬ日がわかったら前日に知らせるようにと迫った。でもミレートのタレスivは別の方法で、科学者と金は共存しないと論じたのさ…」
彼が自分の考えを言い終わらないうちに、銃弾が窓に飛び込んできた。それはまるで日の光の中で輝くガラス片に似た雨粒で、リノリウムが砕け散るような音をたてた。
ナターシャは隅に隠れて泣き始めた。ヴァーシャは前の持ち主が残していったピアノに近づき、重々しく激しいメロディを引き始めた。最初の和音のあと、彼女はしゃくりあげながら聞いた。
「聴いたことがある。ラフマニノフの“コンツェルト第2番”じゃない?」
彼にはその質問が聞こえなかった。漆喰のかたまりが、騒音と大量の土埃とともに崩落したのだ。同時に新しい音がした。彼女はその音に聴き入った。その音は次第にはっきりしてきた。そしてほかとは聞き違えることがない音となった。ヘリコプターが近づいてきた。
(訳・滝沢 三佐子)
【著者プロフィール】
セルゲイ・ソロモノフ Соломонов A. Сергей
アマチュア作家、旅行家。来日2回。日本に関するエッセーの題材としている。
【訳注】
i バスマチ蜂起 1920年代初頭を中心に中央アジアで起きた反ソビエト武力運動の総称。
ii ウルグ・ベク(1394-1449)は、ティムール朝の第4代君主であり、自身も優れた天文学者・数学者・文人。
iii 『撃つな』 ロックバンドДДТの曲。ユーリー・シェフチュクはДДТのリーダー。
参考:『撃つな』(Не стреляй) ロシア語歌詞・動画
iv タレス 古代ギリシアの哲学者。
書評「セルツェ-心 遥かなる択捉を抱いて」
不破理江 著/2018年10月25日/東洋書店新社発行/159項/1300円
日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎えた1945年8月。北方領土と呼ばれる島々には日本人が暮らしていた。他の日本の各地と同じように玉音放送を聞いた島民たちの不安は、アメリカ軍の侵攻であったはずだ。しかし、終戦後2週間が経過し上陸してきたのはソ連軍であった。
―著者である不破理江さんは根室市在住中に北海道新聞や釧路新聞にコラムを書いていたもともとが文筆家の通訳者であられる。彼女は、元島民の山本昭平さんと出会い、島で過ごした若き日々の回想に胸を打たれ、筆を執った。―
ソ連軍が択捉島に侵攻したのは、1945年8月29日であった。次々と占領された島々。そして島民が強制送還されるまでの間に、ソ連軍の支配下で彼らとともに暮らした2年間があったことを、私は、恥ずかしながら知らなかった。そして、この物語は、その2年間の間のソ連軍軍医との交流を描いている。そうしたソ連人たちとの思い出を他の元島民の方達から聞く機会はしばしばある。心で触れ合った山本一家とロシア人青年の物語は、殺伐とした殺し合いを平然とやってのける戦争という狂気、国と国のエゴがぶつかり合う外交の魑魅魍魎も、自らを恥じて柱の陰に隠れて彼らを見守るのではと、私をして思わせた「誠」の物語だ。
戦後74年が経った。第二次世界大戦の爪痕は決して癒えたとは言えない。著者と話した時、「これは太平洋戦争の体験なのだ」と語っておられた。絶対に戦争を繰り返してはならないという哲学、戦争を憎む信念を、私たち戦後世代は先達から受けつぐべきではないだろうか。静かに耳を傾けページを繰ってほしい物語である。
(ロシア語通訳・竪山 洋子)
本書は神奈川県日本ユーラシア協会事務所でも取り扱い中です!
書評「話の話 映像詩の世界」
ユーリー・ノルシュテイン 作/高畑勲 解説/徳間書店/800円+税
一度、読んだだけでは、難解な本というのがある。読むたびに、何かを気づくという意識の侵食作用で時と共に絆されていくのだ。その点で「話の話」は作者ノルシュテインのいろいろな思い出の結晶である。ノルシュテイン自身、戦争の初め頃に生まれ、避難の連続の生を生き延びてきた。彼自身、ユダヤ系であったため、幼い頃から様々な光景と迫害の記憶があった。平和の記憶は、戦争によって少しずつ破壊されていく様子を、男女の踊り、歌わぬ詩人、ダンスの相手の出征、死亡通知とコマ送りに、描いていく。
帰ってきた夫は、負傷し動けないが、妻がしっかりとささえて離さない。悲しみの裏の喜びの姿まで、描ききる。本作品は、1979年発表され、動画スタジオで30分のアニメーションにされる。BGMは、J.S.バッハとW.A.モーツァルトの作品からとられ、深い普遍性を帯びる。そして、37才でノルシュテインは、世界各地で動画のグランプリを取ることとなる。
その映画詩の金字塔のたたき台が、本書となる。考えながら30分の動画を見、考えながら本書を読むことで、色あせることのない永遠のノスタルジアに立ち戻ろう。
(中出)
チェルノブイリ支援カレンダー2020年ができあがりました!
カラー、サイズ:縦30cm×21cm(見開きA4サイズ)
撮影:チェルノブイリ子ども基金 佐々木真理
デザイン:川島進デザイン室
発行・制作:チェルノブイリ子ども基金
定価800円 送料別(6部まで200円)
(10部以上:1部700円/送料無料)
お申し込み方法:E-mail 、Faxまたは郵送でお申し込みください。
【問い合わせ・申し込み先】
チェルノブイリ子ども基金
〒177-0041
東京都練馬区石神井町3-16-15-408
TEL/FAX 03-6767-8808
E-mail cherno1986@jcom.zaq.ne.jp
投稿歓迎!
「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
ただし、作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。
毎月末締切、翌月15日頃に発行される見込みです。
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 機関紙編集部
〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館1階
Fax 045‐201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp
(機関紙編集部)
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