今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2019年2月号 No.688

行事予定

DVD『ドクトル・ジバゴ』鑑賞会、2/24開催!

ドクトル・ジバゴ  昨年11/25に予定していた「ドクトル・ジバゴ」の鑑賞会を2/24に開催します。

 世界最初の共産革命に揺れるロシアを舞台に、医師であり詩人でもあるジバゴの波乱の生涯をロマンチックに描いている映画です。革命の姿を描写した部分が反ソ的であるとして、ソ連時代には出版できず、イタリアで出版され世界に広められたという特異な原作を映画化したのです。そのため、製作もアメリカ・イタリア合作です。「戦争と革命の最中でも、人間は愛を失わない」という内容のすばらしさで、ノーベル文学賞を受賞しています。

 原作もさることながら、この映画のテーマ曲「ララのテーマ」は日本において、バラライカを一躍有名にしたことで知られています。神奈川のバラライカ・ドムラ教室講師の北川翔氏が『徹子の部屋』に出演した際、黒柳徹子氏から「映画音楽のベストスリーに入る名曲」と絶賛されたのです。映画のみならず、バラライカの名曲も深く味わいましょう。

日時:2019年2月24日(日)13時~
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
参加費:500円(黒パン・海軍マカロニ・紅茶代)

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 第15回定期総会

【日時・内容】 2019年3月31日(日)
◆13:00~14:00 定期総会(内容:活動報告、事業計画、決算、予算、2017年度役員案の承認、質疑応答他)
◆14:30~15:00 みなとみらいマトリョミン教室アンサンブル「MMM」コンサート
◆15:00~16:00 ロシア歌謡をみんなで歌おう!(ピアノ伴奏:佐野真澄)

【会場】横浜平和と労働会館4階会議室
【参加費】無料(総会のみ会員限定)
※詳細は次号でお知らせします。

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

活動報告

新年会「ヨールカ祭2019」、盛況のうちに終了

ヨールカ祭2019  1月20日(日)市従会館で開かれた今年のヨールカ祭は2部構成になりました。

 第1部は、在日ユーラシア諸国出身者で構成されるスラブ民族舞踊団スラヴャーニェによるロシアとアゼルバイジャン、ジョージアの踊りとジェットマロースとスネグローチカによる子どものためのプログラム。

 第2部は、横浜ロシア語センターの各クラスの出し物、在日キルギス人によるキルギスの踊り、赤軍装パリャーノチカの合唱、川西宏明さんのミニピアノコンサート、最後はみんなで歌おう!です。

 まずは、会場の4階ホールいっぱいに集まった150名の、田中理事長による乾杯で始まりました。今年も、ロシア人の子どもたちが多く集まっています。

 第1部のスラヴャーニェの民族舞踊は、カリンカ、モスクワのカドリール、タチラ、ガプーシャトヤーシュカ、アゼルバイジャンのシャマダン、ジョージアのアチャルリなど8曲。会場が熱気を帯びてきたころ、子どもたちの呼びかけに応えて、ジェットマロースとスネグーロチカが登場、でも、その前にどういう訳か着ぐるみのスノーマンが会場を踊り巡ります。しかし、一昨年までは、みんなで手を繋いでモミの木の回りをヨーロチカの歌を歌いながら静かに巡っていましたが、今年は、ディスコ風の「ノーブイゴッド」の曲で親子で激しくディスコ踊りになりました。

ヨールカ祭2019  第2部は、木曜初級Iクラスの歌「モスクワ郊外の夕べ」、土曜初級IVクラスの歌「運命の皮肉」の主題歌。続いて、木曜IIクラスのロシア語劇「おだんごぱん」、木曜実践会話クラスのロシア語落語劇「時そば」です。続いて、中央アジアキルギスの乗馬情景を模した女性2人、男1人による踊り、赤軍装パリャーノチカによる歌、セヴァストーポリ・ワルツ、逆巻く波、小麦色の娘。トリは、川西さんがオーケストラ風に編曲した「ともしび」「赤いサラファン」など4曲を熱演、そして佐野真澄さん伴奏でみんなで歌おう!「ともしび」「心騒ぐ青春の歌」「カチューシャ」を全員で歌い、締めくくりました。

(木佐森)

ヨールカ祭2019 ヨールカ祭2019
(左)マトリョミンアンサンブルMMM (右)木曜ロシア語実践会話クラス「時そば」
ヨールカ祭2019 ヨールカ祭2019
(左)キルギスの民族舞踊 (右)「パリャーノチカ」のロシア戦時歌謡

ヨールカ祭 出演者の声

● スラブ民族舞踊団「Slavyane」です。

 私たちは前半の一時間を担当させていただきました。

 初めにダンスを7つ踊りました。その中で今回は子供のダンスを一曲「大好きなおもちゃ」を入れました。とてもかわいくでき会場の皆さんがとても喜ばれました。

 後半は子供たちが待ち望んでいた子供プログラムです。会場の子供たちと一緒にスノーフレークのダンス。その後いよいよメインのジェットマロースとスニェグーロチカの楽しくおかしい劇です。会場の皆さんも大喜びで特に会場におられたロシア人家族の皆様には、母国を思い出され、子供ともども感激されていました。私たちも昨年からこの日のために一生懸命練習してきましたので、皆様が喜ばれて、とても嬉しかったです。

 また、新しい出し物をいろいろ勉強し練習して来年につなげたいと思っています。

(スラヴャーニェ 加藤)

● 土曜初級Ⅳクラス合唱「運命の皮肉」

ヨールカ祭2019  今回初めてヨールカ祭に参加しました。ロシアを中心に様々なユーラシア圏の雰囲気を味わい事ができました。美味しいロシア料理も堪能させていただきました。私が通うクラスも歌で舞台に立ちました。オリガ先生がソビエト時代から”年越し”と言えば、この映画と言うことで選曲された「運命の皮肉」の主題歌です。

 人前でロシア語を披露するという良い経験ができ嬉しいです。オリガ先生にアクセントや歌詞の意味を教えてもらい、YouTube などを参考にしながら各自練習をしました。そして毎授業ごとにみんなで合わせて歌いました。本番では用意していた音源が使えず、別の音源を使ったのですが、アカペラに近い形になってしまい焦りました。ですが、なんとか切り抜け、各自の練習の成果が出せて上手く歌えたので良かったです。

 来年のヨールカ祭に向けてロシア語を頑張ろうという気持ちが湧いてきました。クラスの人たちとも絆が深まりとても有意義な時間でした!

(五十嵐)

● 木曜初級Ⅰクラス合唱「モスクワ郊外の夕べ」

ヨールカ祭2019  「今回初めてヨールカ祭に参加させて頂きました。果たしてロシア語で歌なんて歌えるのかしらと不安でしたが、先生のご指導と会場の温かい雰囲気の中、楽しく歌うことが出来ました。ありがとうございました。(井土井)」

 「ヨールカ祭ではロシア語の歌に挑戦しました。ロシア語はまだまだですが、『ロシア語が大好き』という気持ちは伝えられたかと思います。(早川)」

 「前列に陣取った手強い小さな審査員を前に緊張の中で初めてロシア語の歌を無我夢中で披露いたしました。楽しい時間をありがとうございました。(木全)」

 「先生の歌詞の訳文がとても美しく、旋律も切ない素敵な曲だったので、一所懸命覚えて精一杯歌いました。とても良い思い出になりました。(田口)」

● 木曜初級Ⅱロシア語劇「おだんごパン」

ヨールカ祭2019  「そんなの自分で作るんだよ!」
 木佐森さんは、自作のそば屋主人の衣装を見せてくれた。

 Ты не один

 「多少、発音が違ってもいいから、大きな声で話すこと!大きな声でね!!」

 「ただセリフをロシア語で言ってるだけじゃ、観ていてつまらないよ!」「感情を入れて、動きはつけて!」

 「クルクル回ってたら、いいんじゃないかしら…」「こー、山を転がっていく風に、コーょ、こー」 

 僕は、イギリスのロックスター、クリッシー・ハインドが大好きだ。なんてったって、かっこいい!

 Алло! Слушаю Вас!

(小林)

教室案内

ロシア語教授法研究会 第7回ミニシンポジウム 開催報告

ミニシンポジウム  1月26日(土)、横浜平和と労働会館4階会議室でロシア語教授法研究会の第7回ミニシンポジウムが開催されました。

 今回は授業数の多い土曜日の夕方16:30から19:00までの開催時間でしたので、横浜ロシア語センターの講師が多く出席できました。その他、会員・一般の方を含めた21名の参加者は、問題提起と講義を聞いた後、休み時間も惜しんで、より効果的なロシア語調音法や訓練法などについて活発に意見交換しました。

ミニシンポジウム  竪山洋子先生からの問題提起は、上級者にもみられる発音の癖や母音の弱化の無視など、その多くが日本人ロシア語学習者に共通する問題点でした。問題提起を受けて、徳永晴美先生が、最新のロシア語音声学に依拠した具体的な調音法について講義をして下さいました。

 徳永先生の講義には、外国人訛りは個性として許される部分もあるとの大前提を踏まえた上で、ЛとРを区別して発音できなければ全く違った意味になること、母音の弱化はロシア語発音の妙味の一つであること、日本語と違って母音が伴わない連続子音には注意が必要なこと、Ж, Ш, とЩの調音の違いなど、その他にも多くの有益な情報が盛り込まれていました。また、教える側は最初から正しい「調音分析に則った模倣」の発音指導をすべきであること、しかし、発音を重視するあまり受講者のやる気を削いではならないことなど、講師としての気配りの大切さも教示されました。

 ロシア語講師達は効果的に発音指導をするために多くの有益な知識を得ることができ、受講者の方達も具体的な発音法を学べた有益なミニシンポジウムになりました。

(野口)


ミニシンポジウム  1月26日にロシア語教授法勉強会のシンポジウムがあり、ロシア人と日本人のロシア語教師とロシア語の生徒が集まりました。

 テーマは発音教授法で、竪山先生が問題提起し、徳永先生が回答するという形式で行われました。

 母音の弱化、й、軟音、л、р、ш、щなど日本人の発音しづらい音について細かく説明していただきました。

 その後、質疑応答と懇親会があり、お菓子を食べながら、質問が飛び交い、大いに盛り上がりました。

 私もшとщの発音が難しいと徳永先生に質問したところ、丁寧に発音の仕方を教えてくださいました。日々練習したいと思います。

(井村)

ミニシンポジウム 日本語母語話者にとって最も発音が難しい単語の一つは«скруплёзно»。скに母音を入れない、уははっきり発音する、плёも難しい。лとрを区別し、зをдзにせず、語末のоも弱化させる等、全て要注意!


横浜ロシア語センターロシア語講座 第129期生徒募集!

 今期も瞬く間に終盤を迎えました。ほとんどのクラスは2月末か3月上旬に修了しますが、継続者2名以上で4月からの新学期もクラスが存続し、基本的に同じ時間帯と講師で持ち上がり、学習内容も今期の続きになります。

 見学も歓迎しますが、満席のクラスはご希望に沿えない場合があります。新しく学習を始める方のために、3月に体験講座も予定しています。詳細は次号にて。お問い合わせは教室事務局まで。


ウクライナ語 生徒募集

 ウクライナへ渡航する方、言語や文化に関心のある方にお勧めです。

 今期から当教室に復帰された担当のピスクノーワ・オクサーナ先生はNHKのロシア語講座でもおなじみですが、ウクライナ語も教えられます!これまでにロシア語を学んだことのある方も、お互いの言語の似ているところや違うところを発見しながら、楽しく習うことができるでしょう。

 月・水・木・金曜日10:30~17:00の間、1コマ90分で個人・ペアレッスンのご相談に応じます。初心者から上級者まで、どなたでも歓迎します。

 詳細は教室ホームページをごらんください。受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講しています。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

 今後の日程:今後の日程:2月23日、3月9日、3月23日
(変更の場合がありますので、見学・受講ご希望の方は事前にお問い合わせください。)

生徒募集クラス:
16:00~16:45ドムラ中級
17:00~17:45バラライカ初級

※12月から各1時間ずつ開始を繰り上げます。

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

日程:毎月1回、土曜日開講
2018年度後期日程:10月20日、11月17日、12月15日、1月19日、2月16日、3月16日

◆グループレッスン:Aクラス(現在休止中、受講生3名で開講可能)
◆アンサンブルクラス(90分)13:00~14:30

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階
神奈川音楽センターホール
※11月17日のみ3階会議室


組織・財政

組織状況

(2019年1月31日現在)

 2019年度の会員数は、234名から始まりました。1月、1名の方から高齢により退会するとの連絡があり、19年1月末の会員数は233名です。

 18年度は、会員数217名から始まり、18年末には234名になりましたので、8%増となり、目標の会員数10%増に肉薄する成果をあげています。

 ですから、今年度の19年末には1割増の257名を目標とすることは、困難ではありますが、不可能なことではありません。みなさまのお力添えで挑戦していきましょう。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2019/1/31
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計112,322141,148-28,826
教育事業181,000180,022978
一般事業465,094370,42894,666
合 計758,416691,59866,818
前年同期(単位:円)2018/1/31
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計243,051275,733-32,682
教育事業388,856301,58087,276
一般事業340,880281,71059,170
支出合計972,787859,023113,764
当期剰余金-214,371-167,425-46,946
合 計758,416691,59866,818

 収入は、一般会計(会費収入など)及び教育事業収入(授業料など)は前年並みですが、物販やイベント事業などの一般事業が前年を26%も上回っています。

 ヨールカ祭の参加費は昨年より減少していますが、物販収入が、対前年比317%となっています。

 支出は、授業クラスの増加により、講師料などの教育事業支出が対前年比129%、約3割増えています。

 一般事業では、昨年末仕入れの請求が遅れて1月になってしまったことで、前年比171%になっています。仕入れが多かった分、物品販売額も増加(対前年317%)しました。19年度も、ロシア語教室を中心に置き、会員数の増加を図り、物品販売も大きく増やしていきましょう。

(木佐森)

お勧め商品

ボロディンスキー・ライ麦パン 540円 (税込)

ボロディンスキー・ライ麦パン ボロディンスキー・ライ麦パン
 旧ソ連など東ヨーロッパで最もポピュラーなライ麦パンの一つです。
 ライ麦モルトを使用し、じっくり長い時間をかけて発酵させる伝統のレシピで作られ、当地では毎日のように食べられています。
 おだやかな酸味と甘み、ライ麦に加えたコリアンダーの独自の爽やかな香りが特徴です。
 本場の味をぜひお楽しみください。
 14枚+2エンドにカットされたものが二重の袋に入っています。
 ラトビア製、350g。賞味期限:2019年7月15日
※協会事務所で購入すると、税込500円になります!

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  北方領土を巡り、日本と長期協議中のロシアから、2019年1月第4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中2曲と、おとなしめ。来月3月号に早春の新曲の嵐が吹き荒れるか?!

 10位にスラーヴァの«Верная»(誠実な女)が入りました。

 8位に、昨年3月にリリースし今尚スーパーヒット中の話題曲«Босая»(裸足の女)がランクインしました。灼熱の夏に実にピッタリのこの新曲は、プロジェクトユニットを構成する二人のマーシャによって世に出されました。ブロンドのマーシャ・シェイフはHIPHOPと作曲担当。一方、黒髪のマーシャ・ザイツェワは作詞と作曲担当。二人は2014年にタイで偶然出会い、音楽プロジェクトを立ち上げることで意気投合し、どこの音楽プロデュースセンターにも依存せずに積極的に活動しています。正に「素晴らしい!」の一言。YoutubeのPVの視聴回数は既に9千万回以上。今後にも期待!

 コケティッシュなカラウロワとの首位争奪戦を制したのは、ビランの新曲«Молния»(稲妻)でした。おめでとうございまーす!:-)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart、2018年1月21~27日/MOPA)

【画像引用元】 Слава→https://sovety.guru/
Дима Билан→http://www.peoples.ru/
#2Маши→http://вконтакте24.рф/

演 劇

ロシア語劇団コンツェルト第48回本公演「かもめ」

12月27日 於:早稲田大学学生会館

「かもめ」  劇団コンツェルトとしては今回が4回目の上演となるという「かもめ」。ここ数年、いろいろな作品に挑戦しているコンツェルトだが、今回はひさびさに原点に戻った演目といえようか。演出は、過去同劇団で舞台美術を担当していたという異色の経歴の持ち主、大和さん。チェーホフは「かもめ」を「喜劇」としているが、主人公の自殺で終わるラストシーンがどうして喜劇なのか、純粋に見つめなおしたいという演出動機。久々にこれもまた新鮮に感じた。

 重なり合う三角関係の「5プード(1プードは約16㎏)の恋」は、初めから成就しそうにない。それなのに当時者は自分をすり減らして恋に身を焦がしてしまう。これが戯曲から読み取れる「喜劇」だ。ほかにも喜劇の要素があるとすれば、親子関係の滑稽さ、老いへの不安かもしれない。ある演出家はコースチャと母との相克を、よくある親子のドタバタとしてフィーチャーしたり、医師ドールンに迫る人妻ポリーナの空回りセリフなどに喜劇的展開を与えたりする。残念ながら、私が観た初日マチネーでは、まだどこを喜劇として演出したいのかよく見出だすことができずにいたが、おそらく千秋楽では成功したのではないかと思う。

 学生演劇という性格上、役者や裏方が常に入れ替わって行く。しかも異なる大学の学生たちが寄り集まってロシア語で演劇をやるということを、すでに半世紀近く続けている。それだけでも驚異的で頭が下がる思いだ。多くの挑戦を繰り返してきた劇団にとって、チェーホフは原点でもあり飛躍への準備でもある。50回公演に向けて、快進撃を続けてほしい。

(文:滝沢 三佐子/写真:劇団提供)

ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ公演
ミュージカル「YOSHIKO」悔いなき命を

1月14日 於:東京・紀伊國屋ホール

ミュージカル「YOSHIKO」悔いなき命を  山口淑子、川島芳子、岡田嘉子。昭和初期の大陸越境者という括りで、私の脳裏に浮かぶ女性たちだ。3人の「ヨシコ」のうち山口淑子と川島芳子は、ミュージカル「李香蘭」の中で、敵対する日本と中国の間で翻弄されるアイコンとして描かれた。そして今年、恋人・杉本良吉と共にソ連へ亡命した岡田嘉子の生き様が、ついにミュージカルという形で登場。

 サイレント映画の女王・岡田嘉子は今で言うならスキャンダル女優だ。主演映画「椿姫」の撮影中、相手役の竹内良一と駆け落ち。仕事を干されようが嘉子は一向に介せず、竹内の妹・百合子と一座を結成。一時は一世を風靡したが、しだいに人気も傾き竹内と別居する。

 その頃、思想犯の執行猶予中だった杉本良吉は、井上正夫一座に演出を請われ嘉子と出会う。ロシア演劇に詳しい社会主義者杉本は嘉子にとって大きな刺激。左翼という意味すら知らない嘉子だったが、彼らはほどなく恋仲となる。しかし嘉子には良一が、杉本には病身の妻・智恵がおり、ダブル不倫状態に。

 盧溝橋事件が起こり日本は戦争へと突き進んだ。徴兵されれば死は免れない。身の危険を感じた杉本に、嘉子は「いっそソビエトへ逃げちゃいましょうか」と誘う。かくして1937年12月末、二人は上野から樺太へ向かう夜行に乗り、雪原の逃避行を決行した。

ミュージカル「YOSHIKO」悔いなき命を  イッツフォーリーズは「夜明けのうた」などの代表作がある故いずみたくによるミュージカル劇団。本作にも彼による珠玉のナンバーが並ぶ。また、当時の流行歌「道頓堀行進曲」などノリノリで華やかなレビューもあり楽しい。特に嘉子役・水野貴以、杉本の妻役・大川永(Wキャスト)、竹内の妹(関谷春子)の3人はそれぞれ違った個性をもった役柄・声質だが、彼女らの歌う「悔いなき命を」は絶品。「闇は光の中から生まれる」「平和を願うのはいつも心の中だけ」といった歌詞も、願望と現実の違いを突きつけ、運命の過酷さを的確に表現していた。

(文:滝沢 三佐子/写真:劇団提供)

映 画

「未体験ゾーンの映画たち 2019」

開催中 於:ヒューマントラストシネマ渋谷

 今年で8回目となる劇場発映画祭「未体験ゾーンの映画たち 2019」。さまざまな理由で一般映画館では観られない作品が目白押しだ。ホラー、SF、エンタメと多岐にわたる58本の中で、今回は3本のロシア映画が上映となる。

黒人魚  (1)『黒人魚』(『ゴースト・ブライド』のポドゲイフスキー監督作品、2018)。水の精ルサルカをモチーフとしたホラー。VFXを駆使した“黒人魚”がすごい。

(C) KIT Film Studio

シャッター 写ると最期  (2)『シャッター 写ると最期』(ゼンコヴィッチ監督作品、2018)。ポラロイドカメラを題材にした戦慄の1本。鈴木光司の「リング」を思い起こすようなクオリティの高い恐怖が広がる。

(C) OOO «LABORATORIA KINO», 2018

タンク・ソルジャー重戦車KV-1  (3)『タンク・ソルジャー重戦車KV-1』(マクシモフ監督作品、2018)。こちらは東部戦線でのソ連第15戦車団を描いた戦車もの。実話に基づいた勇気と愛と戦いの物語。

(C) 2018 Oda Film Production LLC, (C) 2018 Pimanov&partners Co.

 上映スケジュールなど詳しくは、「未体験ゾーンの映画たち2019」公式サイトで。

(滝沢 三佐子)

『都市と人間』コレクション展 ―都市×モニュメント×カタストロフィ―」
連携企画 ソヴィエト映画特集

とき:2019年2月16日(土)~2月24日(日)の土日【全4日間】
ところ:川崎市民ミュージアム・映像ホール

 名匠アンドレイ・タルコフスキーと彼に師事したコンスタンティン・ロプシャンスキーのソヴィエト時代の作品をとりあげ、地球の近未来都市のシーンに赤坂見附付近の立体高速道路の景色が映される『惑星ソラリス』や、壊滅的に破壊された都市が印象的な『ミュージアム・ヴィジター』など、計4作品を35mmフィルムで上映。

 詳しくは、川崎市民ミュージアムサイトで。

★ ソヴィエト映画講座

日時:2月23日(土)「死者からの手紙」上映後
講師:井上徹(映画史・ユーラシア文化研究者、エイゼンシュテイン・シネクラブ代表)
受講料:無料

(滝沢 三佐子)

ユーラシア通信

ウクライナのチョコレートがお手頃価格で!

~CIAL桜木町”Fit Care Express”他~

ロイヤルチャーム  ウクライナのチョコレート「ロイヤルチャーム (Королевский шарм)」がお手頃価格で入手できます!なんと14個入りで198円!

 昨年12月、当協会講師のオクサーナ先生より、「ドラッグストアFit Care Depotでウクライナのチョコレートが売っている」という耳よりな情報が寄せられました。早速、CIAL桜木町にある系列の店Fit Care Expressに行ってみたところ、お菓子売り場の棚に極めて普通に陳列されていました。そして今年1月になると、入口すぐの駅方向から見やすい位置にも売り場が作られ、キラキラのポップ付きで大々的に売られるようになっていました。

ロイヤルチャーム  「ロイヤルチャーム」は、青い袋のチョコ味と黄色い袋のクリーム味の2種類で、クリームの入った山型ウエハースにチョコレートがかかったもの。味も上品で食べやすく、このお値段なら大変お得です。外袋は日本向けですが、中の個包装の表示はロシア語とウクライナ語のみ。メーカーАВКはウクライナ東部のドネツクにありましたが、内戦のため工場がドニエプル/ドニプロに移転したそうです。

 協会・教室関係者にも人気のウクライナチョコ。興味のある方はぜひ一度お試しください!

書評「愛かぎりなく デカブリストの妻 抄」

ネクラーソフ 作
谷 耕平 訳
童心社 1,200円+税

愛かぎりなく デカブリストの妻 抄  1825年12月14日、新帝ニコライ一世の即位式に事件は起こった。場所は首都ペテルブルグの元老院広場。反ニコライと立憲君主制の要求に、ニコライは自ら砲の発射を命じた。これが数千人を処分したデカブリストの乱の始まりである。

 本書では、指揮官であったトルベツコイとヴォルコンスキーの妻のその後について書かれている。当時ロシアでは夫がシベリア流刑となった場合、離婚の許可が出たが数人の妻は応じなくシベリアで、ただの女性として生きることを選んだ。子供も捨てなければいけなく、貴族としての恩恵もなかった。トルベツコイは、イルクーツクに住み、その舎は小ぎれいに残されている。指揮官であった彼は、妻を見取り40年間生きた。フランス語を話し、立憲君主を夢見た彼らに恐いものはないのだ。ヴォルコンスキーの妻は年を取って帰ってきた。人権思想・代議制・立憲制は、皇帝が新設した皇帝官房第三部の情報収集と反動政治の強化であえなく散った。春はまだ早かったのだ。

 本書のさし絵は、岩崎ちひろである。

(中出)

書評「プーチン 内政的考察」

プーチン 内政的考察  シリーズ2回目は「プーチン 内政的考察」です。著者は木村汎氏。この本は2016年11月10日初版第1刷発行で、本書の狙いと構成、第1章体験、第2章思想、第3章制度、第4章軍事改革、第5章文民統制、第6章国防相、第7章メディア、第8章NGO、第9章国際NGO、第10章ナヴァーリヌイ、第11章モスクワ市長選、第12危機、第13章当確、第14章存続、第15章衰退、第16今後、からなっています。本文は546頁あります。

 「プーチン 内政的考察」ではプーチノクラシーの主として内政のみを取り扱うとしています。また、プーチノクラシーの特色が顕著に現れていると著者がみなすイシュー(問題)や分野を選び、それについては集中的かつ詳しく検討する方法を採用するとしています。本書の狙いと構成から内容を引用します。

 プーチニズムの形成から中央集権制の確立まで(第1~3章)

 プーチンと軍部との密接な関係(第4~6章)

 プロパカンダとしてのメディアをコントロール(第7章)

 新たな中産階級層と抑圧されるNGO(第8、9章)

 ナヴァーリヌイ、プーチンの好敵手か(第10、11章)

 プーチンの人気の翳りとロシアの今後(第15章、16章)

 となっています。

 感想としては強いロシアを目指し、ゴルバチョフ書記長以来の改革をエリツィン大統領をへて引継ぎここまでロシアが復活してきた立役者だと思いました。ややソ連時代に逆戻りしている感が否めないのが現実ですがプーチン大統領は彼なりに頑張っていると言う風に感じます。

(中垣内)

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
 催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
 ただし、作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
 デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
 また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。
 毎月末締切、翌月15日頃に発行される見込みです。

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 機関紙編集部
〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館1階
Fax 045‐201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp
(機関紙編集部)

歴史・社会