今年も暑い夏になりそうですが、何と言っても「夏休み」は楽しいものです。
家族で、友達と、一人ででも、高原、山、海に出かければ、日常とは違った環境に浸ることができます。
そこで夏のロシア語日本語交流会は「夏休みの過ごし方」、「私の夏休み」などをテーマに開催します。
ウリヤノフスク、ムルマンスク、ウラジオストクの日本語を学習している人との交流会です。
最初にロシア語で、続いて同じことを日本語で3分以内にラスカス(お話し)してください。他の人がラスカスするのを聞くだけでもOKです。お申込みを待っていますよ。
日時:7月28日(日)18:00(日本時間)
Zoomミーティングルームにてオンライン開催
サーミ族とは、スカンジナビア半島に住む少数民族。その居住範囲は、現代のノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアと広範囲にわたり、ラップランド(サーミ人が住む島)とも呼ばれます。
NPO法人「ムルマンスクの中の日本」創立10周年を記念して、共催イベント第4弾オンライン手芸教室「ロシア・サーミ族の伝統的な人形『サーミ・ニータ(サーミの少女という意味)』」を開催します。
北方少数民族サーミ族の文化について話を聞きながら、トナカイの革等を使った可愛い人形を一緒に作りましょう。詳細はチラシをご覧ください。
日時:7月7日(日)16:00~18:00
場所:横浜平和と労働会館5階 神奈川県日本ユーラシア協会教室
講師:シャルシナ・オリガさん(ムルマンスク州NPO法人「サーミ連合」)
参加費:一般700円 会員500円(7歳以上のお子様は保護者同伴で参加可)
定員:10名(先着順、要予約)
締切:7月5日(金)
6月23日は沖縄慰霊の日です。1945年のこの日、日本軍の組織的抵抗が終了したのです。毎年、慰霊が行われます。
今年は日曜日。戦争と平和を考える緊急企画として、『激動の昭和史 沖縄決戦』(岡本喜八監督作品、1971年)を鑑賞します。現在のロシア・ウクライナ、イスラエル・ハマスの戦闘と同じように多くの一般市民が命を失った悲劇です。私たち日本ユーラシア協会はその戦争の悲劇を繰り返すまいとして、友好運動を行っています。是非、ご参加ください。
なお、当日は神奈川合唱団による、沖縄戦の悲劇を切々と歌い上げる「さとうきび畑」の歌唱も予定しています。
また、簡単料理会も並行して行います。即席アクローシカ(冷製スープ)を調理します。作って食べるだけの参加も大歓迎です。
日時:6月23日(日)13:00~
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
参加費:800円(黒パン・アクローシカ・紅茶付)
※作って食べるだけの参加は300円
2024年8月11日~15日、ロシア極東の都市・ウラジオストクへの旅行を企画しています。直行便がないため上海経由でウラジオストクへ。現地では市内観光のほか、当協会元講師で現在ウラジオストク在住、ロシア語日本語交流会でもおなじみのルザエヴァ・マリーナさん宅訪問も予定しています。
詳細は実行委員会作成のチラシにて。今回は個人旅行の扱いになります。
2024年のロシア正教のパスハ(復活祭)は5月5日の日曜日でしたが、1週間後の5月12日の日曜日に、ウラジオストクから来日中のマリーナさんの至れり尽くせりの準備により、当協会でのパスハの聖餐が横浜平和と労働会館5階教室で行われました。
会場には、キリストのイコンの布が飾られ、マリーナさんが滞在中の千葉県山武市にあるロシア正教修道院で作られたボルシチ、キノコ入りカーシャ、肉入りブリヌイ、会場で作ったロシア風キュウリの塩漬け、そしてクリーチがテーブルの上に並べられています。
参加者は14人でしたが、クリーチは全員分が用意されており、帰りに全員のお土産となりました。これらの料理は、前日の11日土曜日に関戸さんが栃木から千葉山武市に立ち寄って横浜まで運んでくれたものです。
パスハは、まずは、聖餐のことわりで、赤ワインを一口飲み干し、マリーナさんからパスハについて説明がありました。それから、マリーナさんが持参されたパスハのDVDを参加者みんなで見ながら聖餐となりました。ボルシチもこれぞロシアの味です。コロナ前に訪ねたロシアで食べたことがある、お酢を入れない塩水とニンニクで漬けたキュウリが、とてもおいしかったです。
聖餐でお腹がいっぱいになるころ、パスハならではの、卵の絵付けが始まりました。お湯に装飾シートで包んだ卵を入れて、定着させるのです。マリーナさんの指導で参加者一人一人がパスハの卵を作りました。
最後に、お土産のクリーチを持って家に帰りました。とてもロシアを感じ、早くロシアに行きたいと思う一日でした。マリーナさんありがとうございました。
(木佐森)
5月6日14:00から横浜平和労働5階教室で「チェブラーシカ」というソ連時代のアニメの有名なDVD鑑賞会が有りました。参加者はスタッフのみの3人となってしまいました。しかし今回はまだ未公開映像が有りというお話でした。
私の操作ミスで未公開映像を先見て後から前見たシーンを見ることになってしまいましたが、ソ連時代に子供達に人気が有ったであろうアニメは日本人には逆に新鮮たったように思います。
チェブラーシカは色々なキャラクターと行動を共にしていきます。意地悪な女性に列車に切符を隠された事などソ連時代にもいろんなユーモアがあの社会主義国にもあったのは少し意外でした。ピオネールと言うソ連の組織の存在を耳にしたのも久しぶりでした。
当日欠席が一人いた事が残念です。
(中垣内)
5月26日(日)、第83回ロシア語能力検定試験が行われ、横浜市従会館4階ホールで実施された横浜会場では、4級13人、3級15人が受験されました。出席率は4級では18人のところ5人の方の欠席で出席率は72%、3級では20人のところ3人の方の欠席で出席率は85%でした。
毎回、試験前にアンケートを書いてもらっていますが、今回は「なぜロシア語を始めたのか」を書いてもらいました。そして、アンケートの集計結果は、「ロシア語を何処で学習しているか?」では4級でも「独習」が増えて、「通学している学校」と同数になっています。3級では、「独習」している人が半数の7人で、「通学している学校」が2人、横浜ロシア語センターが3人となっています。
横浜ロシア語センターを「知っていたか?」の問いに、4級では62%が「知らなかった」、3級での半数が「知らない」と答えています。「検定試験を何で知りましたか?」との問いに「学校の先生」「ホームページ」と答えた人が多いのですが、「資格ガイド」からと答えた人が1人いました。
(木佐森)
【4級】
〇 ロシアのフィギュアスケート選手が好きで、インタビューを聞いたときに、興味を持ち、聞き取れるようになりたいと思ったのが、きっかけで勉強を始めました。
〇 アーティストのt.A.T.u.に興味を持ったのと、遊んでいるDMMのゲームにロシアの文豪が出て来て、ロシア文学を学びたいと思ったから。
〇 もともと語学全般が好きで、また検定に受かると大学で単位が認定されるため、学習を始めた。
〇 ロシアの文化が好きだったことと、好きなマンガでキャラクターがロシア語を話していたので、勉強を始めました。
〇 ロシア語を始めたきっかけは、高校の時代に、旧ソ連邦の歴史、とりわけ、軍事面に興味を抱いたためです。当時は、まだ戦争が始まっていなかったため、周囲からの批判もなく、学んだり、語ったりすることができたため、その頃にロシア語のアルファベットを学びました。
【3級】
〇 ロシア語を原書で読めるようになりたいです。
入門、初級、中級、準上級、上級、演劇、会話等各クラスを開講中。定員に空きがあり、レベルが合えばどのクラスでも随時編入可能です。無料見学は合計3クラスまでOK。
各コースの詳細は横浜ロシア語センターのホームページをご参照ください。
Всех желающих изучать японский язык мы приглашаем на индивидуальные курсы японского языка при обществе ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава.
Наши курсы ориентированы в первую очередь на русскоговорящих, проживающих в Японии, поэтому большинство наших преподавателей владеют русским языком на высоком уровне. Возможны аудиторные и онлайн-уроки. Мы внимательно выслушаем Ваши пожелания и подберём оптимальную учебную программу.
За справкой обращайтесь по электронному адресу eurask2@hotmail.co.jp или в офис общества ≪Япония-Евразия≫ префектуры Канагава (просьба заранее сообщить о своём визите по электронной почте).
当協会の日本語教室は、主にユーラシア(旧ソ連)諸国出身のロシア語を母語とする方を対象としています。
日本での生活に必要な日常会話や日本語能力検定試験対策など、それぞれの目的やレベルに合わせて個人レッスンで丁寧にお教えします。
ロシア語版ホームページもありますので、学習希望者にぜひご紹介ください。
毎月原則2回、横浜平和と労働会館6階会議室で第2・第4土曜日に開講中。
基本奏法、譜読みから音楽理論、デュオから基本的なアンサンブルまで学べます。
6月のレッスンは8日、22日の予定です。お問い合わせは神奈川県日本ユーラシア協会事務局まで。
時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館6階会議室
4月に140期ロシア語講座が開講して、ロシア語入門クラスの火曜日講座クラスに5人、土曜講座クラスに4人、計9人の方が横浜ロシア語センターに入学されました。そのうち7人の方が、ユーラシア協会の会員と成られました。他に準上級クラスに2名の方が入講、入会され、計9人の方に新会員になっていただきました。久しぶりの大型入会です。
3月末の会員数が199人、新規入会者は9人なので、5月末の会員数は208名です。
(木佐森)
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 | 2024/5/31 | ||
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単位:円 | |||
摘 要 | 本年度当該月収入 | 前年度当該月収入 | 対前年度増減 |
一般会計 | 133,200 | 51,850 | 81,350 |
教育事業 | 438,935 | 500,900 | -61,965 |
一般事業 | 62,032 | 117,481 | -55,449 |
合 計 | 634,167 | 670,231 | -36,064 |
摘 要 | 本年度当該月支出 | 前年度当該月支出 | 対前年度増減 |
一般会計 | 615,436 | 600,942 | 14,494 |
教育事業 | 545,664 | 457,324 | 88,340 |
一般事業 | 95,028 | 151,828 | 46,034 |
支出合計 | 1,256,128 | 1,210,094 | 201,427 |
当該月収支 | -621,961 | -539,863 | -82,098 |
累計収支計 | 1,370,562 | 1,196,471 | 174,091 |
今年の5月の財政状況は昨年23年度と同じようになっています。しかし、教育事業費が6万円少なく、教育事業支出が約9万円多くなっています。
横浜ロシア語センターのクラス状況を見ると、2人~3人クラスが多くなっており、経済効率が悪くなっていることが影響していると思われます。
入門クラスが、5人と4人になっていますので、この傾向が来年も続けば各クラスの人数も増えていくと期待されます。
(木佐森)
スヴェトラーナ・ラティシェヴァ&野口福美著/アーバンプロ出版センター/2024年4月20日発売
教育・通訳現場で長い間ロシア語に携わってきた当センター講師の野口先生と上智大学准教授ラティシェヴァ先生の共著。
これからロシア語を学ぶ人、もっと上手に話したい人と願う人が、上級文法まで総合的に学べるよう、「文字と発音を本格的に学び、人称代名詞を二つ格変化させるだけで多様な場面で使える易しい会話表現を習得できるようにした」。旅行やその他のコミュニケーション場面で大いに役立つ易しいフレーズもたくさんとりあげている。
音声はQRコードから無料でダウンロード可能。神奈川県日本ユーラシア協会・横浜ロシア語センター事務所でも発売中。
竪山洋子&オリガ・タラリキナ著/語研/192ページ/2024年3月29日発売
当センター講師でもあり、通訳・翻訳者として活躍中の竪山先生と、外国人向けロシア語教授法を専攻したオリガ先生のお二方による共著。
ロシア語の学習を進めるのに必須の重要語彙を厳選。「見たことのある単語の意味が思い出せない」、「何度も繰り返して覚え直しているのにまた忘れてる」、「別の意味があったはずなのに出てこない」。意味を思い出すための「手がかり」を増やして、単語と文法・語法をつなぎ、語学力の基礎を固めるための一冊。音声は語研サイトより無料ダウンロード。
神奈川県日本ユーラシア協会・横浜ロシア語センター事務所でも発売中。
5月24日に終業式と卒業式。最高学年11年生の、大学進学のために人生を賭ける共通テストЕГЭが始まったロシアから、2024年5月第3-4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。もうすぐ夏なのに、10曲中また2曲だけが新曲という大人しい動きです。
いまや露のファッションリーダーの一人と言っても過言ではない、クライムブレリの新曲≪Кто такая Мэри?≫(メリーって誰?)が7位にランクイン。2月にリリースされ、現在のYouTube再生回数は250万回です。
先月首位だったアルティク&アスティの≪Качели≫(シーソー)を2位に後退させたのは、カザフスタン出身の若きアーティスト、ジャズダウレンの≪Дарите женщинам цветы≫(女性に花を贈って)でした。未だ大学生の彼ですが、そのプロフィールは謎に包まれています。80年後半から90年代にかけて大人気を博した伝説の露音楽ユニット、ラスコヴィ・マイ(Ласковый май)やそのVoだった故ユーリ・シャトゥノフの作品を彷彿とさせ、多くのロシア人に注目されています。本当に似てますよ、一度聞いてみてください。3月にリリースされ、現在のYouTube再生回数は関連動画合わせて5999万回です。おめでとうございまーす!:-)
(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2024年5月17日~22日/MOPA)
画像は https://vk.com より
※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。
36年ぶりに来日したモスクワ芸術座の公演が5月28日(火)から31日(金)に、東京・かめありリリオホールで行われました。演目は、チェーホフの「決闘」です。
黒海沿岸のリゾートで繰り広がられる人生劇です。人妻を連れて、当地に来たラエフスキーと人妻のナジェージダを巡り、様々な人間模様が織りなし、決闘までもつれ込みます。最後には、善意ある人間として立ち直るチェーホフの小説をアントン・ヤコブレフが脚本にして、それを火曜ロシア演劇講座の安達紀子先生が日本語に訳しました。当日、会場で全員にイヤホンモニターが配られ、劇が進行していくと、イヤホンから栗原小巻さんの各配役になり切った日本語が流れてきます。観劇で感激したお二人の感想をご紹介します。
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5月29日に東京・亀有にて約3時間にわたり、開催されたモスクワ芸術座日本公演となるチェーホフ原作の演劇「決闘」を拝聴した。
チェーホフ作の「決闘」と言うと、小山内薫の寄与もあり、ロシア芸術に精通している方々であれば、誰しもがその内容を知っていると思う。しかし、私はロシア語こそは数年間、勉強に励んでいても、芸術等の文化的なことはロシアそれ以外問わず、正直全く疎い人間である。そのため、今回、あえて何も聞かず、読まずに、純粋に素人目線で劇を楽しむことにした。
舞台が始まると、渡された翻訳機でセリフを聴こうと思っていたのをすぐにやめた。なぜならば、実際の役者の発する声のインパクトに魅了されたからだ。私のロシア語はまだ初級の域なので、役者のセリフの意味はほぼ分からない。ましてや内容も分からない。そのため、ただ、感じるままに各役者の劇を感じた。
率直な感想として、「情熱」と「率直さ」というのがキーワードである。私の抱くスラブ系とは異なる、ラテン系のようなユーモア交えた明るさや情熱的なものが伝わってきた。同時に、決闘の場面で、相手と対峙しても、自分を貫くことの率直さを実感した。恐らく、これらの要素はロシア人の持つ精神性に繋がっているのだろう。このことは自身に対する大きな学びにもなった。
最後に、これはあくまで私個人の劇に対する勝手な解釈であることをご容赦願いたい。
(塚本)
1.舞台装置とその扱いの妙に唸った。
序盤。垂れ下がったロープ群、主人公ラエーフスキイは登場するや、まとわりつくロープを何度も払いのけ格闘する。それだけで彼の焦燥と懊悩が顕わになった。
終盤近く。下手ベッドと上手テーブルを登場人物が芝居の動きを止めずに舞台から下げていった、見事。
その後、四つの昇降板を取り外していくのも、役者が芝居の流れの中で実に滑らかに為した。
最終盤、舞台中央にこんもりと見えていたのは石のベンチか、それを登場人物がひっくり返すと船となり、同時に舞台中央を一段低くしておいた狙い(そこが海となる)も了解された。意想外の工夫に感嘆。
2.演出と役者の練度の高さを痛感する。
ラエーフスキイが、息切れでか怒りでか、感情を昂ぶらせたとき、顔色がほんとうに赤くなったのには驚嘆した。また、登場人物のそれぞれがチェーホフが描き分けたとおりの姿で立ちあらわれた。懊悩を抱えただらしなし、ロシアの大地が育んだ底なしの善人、既成の道徳と理知を振りかざす男、宗教心に縋っている補祭、等々。外貌からする配役の妙も相俟って、見事だった。ロシア文学の香りを久しぶりに堪能した。
(小澤)
5月14日 於:アトリエ春風舎(東京・小竹向原)
昨今、ゲネプロ(本番さながらに衣装を着けて通して演じる)を公開する劇団が増えてきたので、さっそく行ってみた。本番ではないが、限りなく本番、舞台監督からの位置確認やアナウンスの確認などが入る。この劇団は、2017年に立ち上げられた三村聡氏による演劇ユニットで、開演前に三村氏から「ちゃんと最後まで行きつくかどうか」と前置きがあった。そして「明日の本番はガラッと変わっているところがあるかも…」との言葉で、演劇は生ものだなあと改めて実感した。
さて、本作はチェーホフの「かもめ」を原作としているが、登場人物が極端に少ない。トレープレフと母のアルカージナ、恋人ニーナと作家のトリゴーリン(その他若干はトリゴーリン役の三村氏が演じる)のみ。舞台はトリゴーリンの視点から母と息子の確執、ニーナの心変わりなどが”観察“されて、まるで彼の「ちょっとした小説の題材」を積み重ねていくような展開だ。ニーナが演じる劇中劇もアクションが豊富で少々演出過多なところが、”新しい形式“を目指すトレープレフとの考え方の対立のようで面白かった。
しかし、トレープレフが作家として独り立ちしニーナと再会する場面では、すでにトリゴーリンからの視点はない。「習作」なのだから、トリゴーリンがニーナを棄ててアルカージナとよりを戻した心理などあってもよかったのではないかと思う。
トレープレフ自殺後、津軽三味線のじょんがら節に合わせてトリゴーリンが踊り狂うのも、「思い付きで破滅させた」のがニーナだけでなくトレープレフまでも「破滅させた」のではないだろうかと思わせる演出。
最後までダメ出しは出ず、ラストまで駆け抜けた楽しいゲネプロだった。
(文:滝沢 三佐子/撮影:古川 智史)
4月23日(火)、神奈川県民ホール小ホールで、ロシアの若手演奏家3人による楽しいコンサートを鑑賞したので、感想を述べてみたいと思います。
悲しいことに、プーチンのウクライナ侵攻という暴挙のおかげで本来はロシアの若手演奏家の奏でる美音に酔いたいところですが、それもままならず、少し後ろめたい気持ちを抱いて、久しぶりの県民小ホールに足を運びました。
クラリネット、パーカッションという少し室内楽ではマイナーな楽器にピアノを交えてのプログラムです。どんなコンサートになるのか期待と不安が半々といったところでしょうか。
プログラムの前半のスタートは、私の大好きな作曲家シューマンの小品です。
「3つのロマンス」は、シューマンの「オーボエとピアノ伴奏のための3つのロマンス」のオーボエをクラリネットに変更してシューマン自身が作曲したものです。そう度々演奏されることは無いと思いますが、ジュラフスキーのクラリネットが醸し出す、作品の、心を揺さぶり癒してくれるような演奏に酔いしれました。
2曲目は、ショパンの幻想即興曲です。4曲ある幻想即興曲の中で最初に作曲された作品で、ピアノとシロフォンで演奏されました。私個人としては、ピアノだけで聴きたいな、というのが本心です。
3曲目、現代の作曲家でパーカッショニストのゲラシメツのスネアドラムのための“Asventuras”です。初めて聞きましたが、数種類のスティックを駆使して過激な演奏を披露してくれました。音楽の世界は広いと痛感しました。
前半の締めくくりは、クリュチェリョーヴァのピアノで、誰でも知っているショパンの幻想ポロネーズです。
彼女も若手とはいいながら、大家の片りんをうかがわせる演奏でしたが、残念なことに、彼女の意図する音をピアノが表現しきれなかったことです。やはりスタインウェイを使わせてあげたかった、と思いながら聴いていました。
休憩をはさんで第2部が始まります。
まず、ジュラフスキーの2本のクラリネットを使い分けた、コヴァーチとガーシュインの作品です。いつも思うのですが、いわゆる西洋人が吹きこなす管楽器が奏でる音を聞くと、日本人の演奏家の演奏とは差を感じてしまいます。特に金管楽器は顕著です。その中で横笛の歴史があるフルートはその差が一番少なく、次いでクラリネットが続きます。しかし、ジュラフスキーのクラリネットを聴いたとたん愕然としました。出てくる音の質の違いというか、鋭い音は鋭く膨らみのある音は豊かに、ピアニシモは優しくささやきかけ、フォルテシモはやかましくない。本当にこの若さでこれらの音をなぜ出せるのか…
2つのクラリネットは大きさもはっきりわかるほどの違いはなく、歌口も共用(付け替えていた)でした。しかし、少し大きい方のクラリネットから出てきた音は、低音部が豊かに聞こえ、見た目以上に音域に差があるように感じました。コヴァーチの作品は現代曲らしく、また、ガーシュインの作品は有名なラプソディー・イン・ブルーの作曲家の面目躍如といっていい完成度を聴くことが出来ました。低音の豊かな楽器に変えたことを納得させられました。素晴らしい!5年後、10年後が楽しみです。
最後は、クリュチェリョーヴァのピアノで2曲。
リストのメフィストワルツ第1番と、大好きなピアニストで指揮者のプレトニョフが編曲した「くるみ割り人形」組曲です。プレトニョフは来日1回目から聴き続けており、作曲家としても大変才能があり、編曲(アンコールで弾いた「浜辺の歌」は素晴らしかった!)も即興的に披露してくれました。
才能あるピアニストの演奏は期待で一杯でしたが、やはり楽器が彼女の演奏についていけず、もやもやした気分で聴き続けました。才能は疑いもありませんが、楽器がひどすぎました。
次は彼女の才能が満喫できる楽器で聴きたい、と思いながら帰途につきました。
(金子)
(原題:Zielona Granica、アグニエシュカ・ホランド監督作品、2023年、ポーランド=フランス=チェコ=ベルギー)
いったいこのような事実が存在していたとは、と目を疑うような話である。所はポーランド=ベラルーシ国境。人々は戦乱収まらぬシリアや、人権抑圧するイランやアフリカ諸国から逃れてきた”難民“。彼らはベラルーシ政府のいう「ベラルーシを経由すればEU圏に安全に逃れられる」と流した宣伝に乗り、全財産をはたいてやってきたのだ。しかし実態は、ベラルーシ側が鉄条網をくぐらせて「追い立てて」いた。すると、ポーランド国境警備隊が待ってましたとばかりに彼らを拘束、再び鉄条網をくぐらせてベラルーシ側に追い立てる。その繰り返しだ。このような難民の扱いは、EUに混乱を引き起こすためベラルーシが画策した「人間兵器」というらしい。度重なる追い立てに人々は疲弊し、飢え、病に倒れる。抵抗する者は射殺される。そして逃亡する者でさえ、深い森に閉ざされた国境を安全に越える術はない。
この作品は、ポーランド政府の2021年に行った国境警備の実態を機に作られたという。多くの難民の体験談や資料を練り直し、出演者もそうしたバックグラウンドを持つ者を起用。多角的な視点を取り入れるため、難民・国境警備隊・難民支援者の3つの角度から、彼らの「正義」を立体的なストーリーに仕立て上げた。それ以上にモノクロの映像はあまりにも生々しく、ドキュメンタリーのような錯覚を禁じえず、ポーランド政府は上映禁止にしたそうだ。
難民の受け入れが日本よりゆるやかだと言われるヨーロッパでさえ、子どもや老人が追い立てられ、妊婦が瀕死の状態となっても、決して人間扱いしない(できない)人々がこんなにもいる。任務としての国境警備隊だけでなく、その家族も意識は同じだ。それに立ち向かう支援者たちの勇気と行動力。そして映画はラストでウクライナからの避難民を歓迎するポーランド国境警備隊を映し出す。それはまるで、「あなたの関心はどこにあるの?」と問いただしているかのようだ。
今話題の「関心領域」(アウシュビッツ収容所の隣で展開されていたドイツ人の日常生活を描いた作品)と併せてぜひ観てもらいたい作品である。
Kinocinemaみなとみらいで公開中。
(C) 2023 Metro Lato Sp. z o.o., Blick Productions SAS, Marlene Film Production s.r.o., Beluga Tree SA, Canal+ Polska S.A., dFlights Sp. z o.o., ?eska televize, Mazovia Institute of Culture
(文:滝沢 三佐子)
協会パスハ正餐の前日、5月11日(土)に関戸はマリーナ・ルザエヴァさんを迎えに行きました。
初めて行く山武市。読み方さえも知りませんでした。地元では「さんぶ」ですが、インターネットで検索すると「さんむ」でした。成田空港をかすめて、ナビに従いマリーナさんが滞在する修道院へ。ところが、修道院へ近づくにつれて道が細くなり、やっと一台が通れるほど。すれ違いは絶対にできない細い道でした。
(本当にこれで大丈夫なのか)と不安を感じたところ、坂の上に正教会の十字架の先端が見えました。写真の通りの修道院です。マリーナさんを迎え、大量の荷物を載せるのが目的だったので、長居はできませんでした。それでも、建物内部を見せてくれました。写真をご覧ください。また、飼育しているニワトリの卵もご馳走してくれ、しばしの休憩。
礼拝の際には30~40人ぐらい集まるとのこと。偶然ですが、大阪から親子連れが来ていました。関戸も大阪で暮らしたことがあるので日本語で大阪のことを語り合いました。
慌ただしく、修道院を後にしましたが、機会があれば再訪したいものです。
(関戸)
※編集部注:マリーナさんはウラジオストク在住の当協会元講師。2024年4月から6月まで千葉県山武市の「聖ソフィア修道院」に滞在中。5月12日に当協会で15年ぶりにパスハの正餐を企画・実行されました。詳細はこちら。
「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。毎月末締切、翌月15日頃に発行見込み。
※投稿記事は誹謗中傷や公序良俗に反するもの以外ほぼ原文のまま掲載していますが、必ずしも協会としての見解を反映するものではありません。
今月は休載いたします。
これまでの連載は協会サイト内 中世ロシア興亡史のページ をごらん下さい。