NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会
クリスマスツリー

冬休みのお知らせ

2022年12月24日(土)から2023年1月6日(金)まで、協会事務所・各種教室・物販事業等は休業いたします。何卒ご了承ください。

PAGE TOP

ヨールカ祭2023

新年会「ヨールカ祭」 2023年1月15日(日)開催

 毎年恒例の新年会「ヨールカ(もみの木)祭」、2023年もリアル会場とオンラインの併用で開催する予定です。
 コロナ禍のため会場の人数を制限し、昨年同様無観客開催の可能性もありますので、オンライン参加をお勧めします。
 詳しくはチラシ画像をクリックしてPDFファイルをごらんください。

日時:2023年1月15日(日)14:00~17:00(日本時間)会場:横浜平和と労働会館2・3・4・5階&Zoomにて
参加費:会場1,500 円(出演者1,000円)、オンライン無料
定員:会場30名、オンライン100名(先着順、要予約)
参加申込締切:2023年1月10日(火)
出演申込締切:2022年12月19日(月)

PAGE TOP

ロシア語・日本語交流会 ロシア語・日本語交流会 ロシア語・日本語交流会 ロシア語・日本語交流会

自宅の塀にトトロの絵を描きました! ロシア語・日本語交流会「私の趣味」

 10月30日(日)18:00(日本時間)に、第6回目のロシア語日本語交流会が実施されました。

 ウリヤノフスクからは、カーチャさんの「絵の趣味」の紹介ビデオです。彼女は建築大学で数か月間だけ絵を学んだとのことですが、風景画、人物画もなかなかの腕前です。彼女は最近、自宅の車のガレージ扉に“となりのトトロ”の絵を描き、近所では名所?になっているそうです。

 オクサーナさんは、可塑性のプラスティックを使って彼ら自身が手作りで作ったオシャレな家具(椅子、食器棚、衣装箪笥など)のコレクションをビデオで紹介してくれました。

 さらにリューバさんからは日本の古い紙幣と貨幣のコレクションの趣味、ダーシャさんによる自作のアニメと漫画の紹介、ビクトリアさんは日本の昔話を読む楽しみの紹介、ウラジーミルさんは重量挙げ(210kgを腰まで持ち上げることが出来るそうです!)の紹介がありました。

 またウラジオストクからはクセーニアさんのビーズでの美しくて繊細なアクセサリー作り、アリョーナさんは日本のアニメをロシア語翻訳でなく日本語原作を見て理解することへのチャレンジ、などの紹介がありました。

 日本側では、横浜の神門さんからは、講談のいろいろな調子、読み方について紹介があり、井村さんからランニング(フルマラソンを完走されたとのこと)、額田さんはフィギュアスケート鑑賞、滝沢さんはロシア映画鑑賞、筆者(柴田)はロシア語のバレエ書籍をロシア人と共同で日本語翻訳していること、などの紹介がありました。

 質疑応答では、ロシア側から「日本の貨幣では昔も今も、真ん中に穴の開いたものがあるが(例えば5円玉、50円玉)があるが、なぜ穴を開けているのか」との質問がありました。これに対しては、コスト削減とか偽造防止などではないか、との答えがありました。また日本側からの「ビーズはどこで買っていますか」の質問に対しては、インターネットで購入しているが、日本製のビーズは最高の品質だけど値段が高いです、との回答がありました。

 今回も日本そしてロシアの参加者からの多種多芸の趣味の紹介があり、参加者はみな“驚きそして感動し”、活発な交流が行われ、大変に楽しい時を過ごすことが出来ました。 参加者は、ウリヤノフスクから7人、ウラジオストクから3人、日本側から8人の計18人でした。

(東京城東支部・柴田)

 
ウクライナ避難民の皆様との交流会 ウクライナ避難民の皆様との交流会

ウクライナ避難民の皆様との交流会

 (公財)かながわ国際交流財団の依頼をうけて、11月26日午前中にウクライナ避難民の皆様にロシア語で横浜案内をすることになりました。当日の午後はウクライナの皆様が野毛山動物園で親睦を深められる予定なのに、あいにくの雨予報。急遽27日の日曜日に変更になりました。会場の変更や参加予定の方たちへの連絡など多少準備作業が増えましたが、無事に終えることができました。

 当日は、10:45頃お客様を教室でお迎えし、ラリーサ・ジェルーリ先生のウクライナ語での歓迎の挨拶でスタート。参加者紹介の後、パワーポイントを使ってロシア語で当協会案内と横浜市の概要や観光名所についての説明をしました。その後は参加者の歓談、お土産の交換、記念撮影などですぐにお別れの時間が来てしまいました。

 短い時間でしたが、小学生のザハール君をはじめウクライナの皆様が活発に話してくださり、和やかで楽しい交流会になりました。

 お客様は、大人5名、子供2名、かながわ国際交流財団の方2名。協会側は会場が狭いので人数制限をさせていただき、田中理事長と講師、ウクライナ語とロシア語を学んでいる方など6名の参加者だけでしたが、皆様、心のこもった対応をして下さいました。

(野口)

PAGE TOP

横浜ロシア語センター第137期 生徒募集中!

 第137期開講中。入門~上級、会話、演劇、文学、ウクライナ語入門など、様々な学習レベルに合わせた内容の講座を用意しています。学期途中からの編入も可能です。無料での見学は30分×3クラスまで。詳しくは当センターホームページをごらんの上、ぜひお気軽にお問い合わせ・お申し込みください。

 

ロシア語文学読解講座 新規受講生募集!

 12月18日より、毎週日曜10:30~12:00開講中の文学読解講座(竪山洋子先生担当)では新しい課題に移ります。予定を変更し、チェーホフの『可愛い女(原題:Душечка)』を講読します。課題の切り替えに合わせた新規受講や見学も歓迎!日本語訳がいくつも出ていますので、見学の方はそのいずれかを読んでからご参加いただければ大丈夫です。中途編入の方の受講料は残りの回数分のみでOK。お申し込み・お問い合わせは横浜ロシア語センター事務局へ。

 
テアトロ 12月号

【書籍紹介】総合演劇誌「テアトロ 12月号」

 今月の特集は「青春の光と影―わたしが観た青春のドラマ」。

 横浜ロシア語センターオンライン講座「ロシア演劇」を担当されている安達紀子先生のエッセーと、翻訳戯曲「長男」が収録されています。

 「長男」は、ソ連時代のチェーホフとも称される人気作家アレクサンドル・ヴァンピーロフの代表作の一つ。終電を逃した二人の若者が、一晩の宿のためにとある問題家族の長男であると嘘をつくという、現実離れした滑り出しですが、コミカルなストーリー展開と人情味あふれる登場人物の言動で、読む者の心をしっかりとつかみます。

 オンライン講座では2021年度に安達先生とともに「長男」を読了。現在も引き続きソ連の戯曲作家の作品を取り上げており、さまざまな魅力を堪能中です。

(滝沢)

 

ロシア民族楽器 バラライカ&ドムラ教室

 ロシア民族楽器を本格的に習える当教室は毎月2回土曜日にレッスンを行っています。
 12月のレッスンは10日・17日になります。来年は第2・第4土曜開講予定。

時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館6階会議室

PAGE TOP

組織状況

(2022年11月30日現在)

 137期の開講によるロシア語クラスの入れ替えも収まるとともに、コロナ禍が続いていて集まってのイベントが大きくできないので、各事業とも収入は小さくなっています。嬉しいこととして、長らく当該ロシア語センターでロシア語講師をされてきた先生が入会されたことがありました。その一方で高齢者施設に入所したので、「退会する」との連絡も親族よりあり、会員数は、入会1人、退会1人で、10月末会員数と同じ227名です。

(木佐森)

 

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2022/11/30
単位:円
摘 要本年度当該月収入前年度当該月収入対前年度増減
一般会計66,46088,550-22,090
教育事業484,200512,378-28,178
一般事業44,25082,619-38,369
合 計594,910683,547-88,637
摘 要本年度当該月支出前年度当該月支出対前年度増減
一般会計383,494642,567-259,073
教育事業494,335561,375-67,040
一般事業20,53944,834-24,295
支出合計898,3681,248,776-350,408
当該月収支-303,458-565,229261,771
累計収支計2,447,9641,012,2031,435,761

 22年11月の財政状況は、ロシア語センターへの新規受講生も一段落し、イベントも少なかったことから、各事業収入が小さくなっています。支出で、一般会計が昨年より25万円少なくなっているのは、講師料及び事務職手当の支給が12月にずれ込んだことによります。でも、赤字すれすれだった昨年に比べると、まだ、少し余裕があります。

(木佐森)

PAGE TOP

ロシア語医療用語ハンドブック 全17冊セット

【ウクライナ避難民支援】ロシア語医療用語ハンドブック 全17冊セット 特価14,800円(税込)

 医療通訳必携!ロシア語通訳協会の協力により、同協会発行の「ロシア語医療用語ハンドブック」全17冊セット(通常価格31,500円)を半額以下の特別価格にて提供いたします。
 診療科ごとに解剖図・主な疾患と症状・検査・治療など、医療の必須単語・表現や解説を日本語・ロシア語で掲載しています。
 ロシア語話者も多いウクライナからの避難民の方々などの医療現場通訳支援や、ご自身の学習にお役立てください。

 
ガイドのためのガイドブック

ガイドのためのガイドブック 日本の文化:能と狂言 ロシア語版・日本語版セット 1,380円(税込)

発行元・ロシア語通訳協会の協力により、通常の半額以下の特別価格で提供いたします。
本書では能の概要を写真やイラストとともにまとめてあります。
ロシア語話者に日本文化や伝統芸能を紹介する際の資料としてお役立てください。

 
アルメニアワイン
アルメニアワイン

アルメニアワイン「カルムラヒュット」「アレニ」特価2,100円(税込)

 アルメニアといえばブランデーが有名ですが、この度当協会に初めて同国のワインが入荷しました。
 銘柄は「アルマス・カルムラヒュット」(2015)と「アルマス・アレニ」(2017)。どちらもアルメニアの土着品種を使用した赤の辛口・ミディアムボディ。カルムラヒュットはスパイシーで渋みがあり、アレニは渋み控えめで上品な酸味。
 協会事務所にて、通常2,800円のところ特別に2,100円で販売中。
 原産国:アルメニア/アルコール分:12.5%/内容量:750ml

PAGE TOP

 
ボルシチの素

ウクライナ産 ボルシチの素 210g / 540円(税込)

これからの寒い季節におすすめ!水、肉、じゃがいも、キャベツ等を別途用意すれば、本格的な伝統ウクライナボルシチ5-6人前がこれ一瓶で手軽に作れるボルシチの素が入荷しました。
日本語レシピ付きなので初めての方でも安心です。本品の分量は味をみてお好みで調整してください。
原産国:ウクライナ/賞味期限:2024年5月11日

 
ボロディンスキー・ライ麦パン

ラトビア産 ボロディンスキー・ライ麦パン 350g / 540円(税込)

本場の味でユーラシア通の方々にも大人気!封を開けるとライ麦とコリアンダーの香りが立ち上る、風味豊かな黒パンです。
バターかクリームチーズをたっぷり塗って、イワシの燻製、ハム、卵、ポテトサラダ等々、お好みの具材を載せても楽しめます。
賞味期間が長めなのでまとめ買いされてはいかがでしょうか。
原産国:ラトビア/賞味期限:2023年1月20日

PAGE TOP

ロシア・トップ10

【芸能】Русская Десятка ロシア・トップ10

 ロシアから、2022年11月第3-4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中4曲が新曲!

 今ロシアの街中でよく耳にするガガーリナとビラーンのデュエット曲≪Души≫(魂)が10位にランクイン。

 いまYouTubeで大人気、12歳の元気な少女、ノボシビルスク出身のミラナ・ハメトワちゃんとモスクワ出身のミラナ・スターちゃんの9月20日にリリースされたコラボ曲≪ЛП≫(イチバンのお友だち)が9位にランクイン。

 マヤ・ミシェルは前回3月にDOSEとタッグを組んで楽曲≪Путашка≫でTOP10入りしていましたが、今度はエルエスペーと組み新曲≪Курточка≫(コート)で4位に。

 露政府から海外エージェント指定されて闘争中のモルゲンシュテルン。彼は逆に悪評・不評がウリで億万長者になったラッパーなので、ファンもそのつもりでついて来ているし、彼のウリに露政府が「うっかり箔を付けてしまった」感があります。そんなお騒がせモルゲンシュテルンと、2014年に麻薬取引で逮捕されスペインでも刑務所に3年半服役、未だに露国内入国禁止措置を受けている曰くつきのラッパー、キザルのコラボ曲≪Double Cup≫(ダブルカップ)が3位にランクイン。

 人気不動ズィヴェルトのダンスミュージック≪Wake Up≫(目覚めよ)を2位に退かせ、DJ Smashと期待の新人アーティスト、ニヴェスタのコラボ曲≪Позвони≫(電話して)が首位奪取しました。おめでとうございまーす!:-)

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2022年11月18日~24日/MOPA)
画像は https://vk.com より

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。

 
「ライフ」 「ライフ」
(C) Emir Baigazin Production
「This Is What I Remember」 「This Is What I Remember」
(C) Kyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films
Q&A登壇のアクタン・アリム・クバト監督 Q&A登壇のアクタン・アリム・クバト監督
「フェアリーテイル」 「フェアリーテイル」
「コンビニエンスストア」 「コンビニエンスストア」
(C) OOO _METRAFILMS_, PERFO d.o.o., _KARMA FILM PRODUKSIYON_ LTD STI
「クロンダイク」 「クロンダイク」
(C) Protim, Kedr Film

【映画】第35回東京国際映画祭2022

10月24日~11月2日

 新型コロナ対策が引き続き行われる中で、今年はレッドカーペットや海外からのゲストを招いてのトークなどが3年ぶりに復活。会場となった有楽町界隈は連日活況を呈した。

 ユーラシア諸国が製作国にクレジットされている作品は、オープニングの「ラーゲリより愛を込めて」(日本)のほか、以下の作品が上映された。「This Is What I Remember」は審査員団から高い評価を得たが、残念ながらコンペティション部門での受賞には至らなかった。また、同時期に開催される東京フィルメックス映画祭では、常連のキルギス、アゼルバイジャンなどのノミネートはなく、ユーラシア諸国関連の作品は上映されなかった。

 今後、劇場公開が予定されている作品もあるため、作品概要を以下に述べる。


● コンペティション部門
「ライフ」

(原題:Жизнь、エミール・バイガジン監督作品、カザフスタン、2022)

 ガールフレンドが予期しない妊娠をし、金策に行き詰っていた青年アルマン。顧客の人生イベントをデジタル化する会社に就職し、一大プロジェクトに抜擢されるが、データをすべて消去してしまうミスを犯し、半殺しのリンチに遭う。穴埋めに経営の責任を負わされた彼は、ガールフレンドも家も失いあてもない旅に出る。残酷なシーンが得も言われぬほど幻想的に、美しい映像で展開する。カザフの若者の過酷な人生の断片を切り取った詩的な作品。


「This Is What I Remember」

(表記は英題 アクタン・アリム・クバト監督作品、キルギス=日本=オランダ=フランス、2022)

 名実とも、日本が世界初の公開となるワールド・プレミア作品。「あの娘と自転車に乗って」「馬を放つ」などの作品で定評のあるクバト監督が、出稼ぎ先のロシアで事故による記憶喪失となった父親を好演。本人のセリフはほとんどないが、行動と表情の演技が光る。父親を連れ戻した息子(監督の実子)夫婦も近所の目を気にしながら、父親を見守る。だが、20年も行方が知れなかった間に、金持ちの男と再婚した息子の母親は苦悩する。厳格なイスラム思想との軋轢と女性の人権、キルギスの環境破壊にまで多くの問題を提起するが、心温まるラストシーンは感涙。


● ガラ・セレクション部門
「フェアリーテイル」

(原題:Сказка、アレクサンドル・ソクーロフ監督作品、ロシア=ベルギー、2022)

 「モレク神」でヒトラーを描いたソクーロフの新作。天国に入れなかったヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、チャーチルが煉獄を思わせる廃墟の中をそぞろ歩きながら、お互いを罵ったり、自らを憐れんだりする。実写の映像資料をキャプチャーし、幻想的な色彩に落とし込んだ驚くべき手法は観る者を虜にする。ところどころジョークがちりばめられ、20世紀の独裁者たちの行く末をユーモラスに描く。


● ワールド・フォーカス部門
「コンビニエンスストア」

(原題:Продукты24、ミハイル・ボロディン監督作品、ロシア=スロベニア=トルコ=ウズベキスタン、2022)

 モスクワの24時間スーパーで働くウズベキスタンから来た出稼ぎ労働者たち。元締めをやっているロシア人女性の下、パスポートを取り上げられ、過酷な労働に従事させられ、顧客の慰みものにも差し出される。逃げ出そうとする者には恐ろしい懲罰が下される。ムハッバトは出産したばかりの息子を元締めに取り上げられた。彼女は支援団体の助けを借りて故郷に逃避するが、実母の医療費をねん出する必要に迫られて、自らが出稼ぎブローカーとなっていく。「アイカ」(2018)を彷彿とさせる、出稼ぎ労働者の非情な現実を描いた作品。


「クロンダイク」

(原題:Клондайк、マリナ・エル・ゴルバチ監督作品、ウクライナ=トルコ、2022)

 2014年7月、ドネツクのグラポべ村で実際に起こった出来事をベースに作られた作品。トリクと妊娠中の妻イルカの家が、親ロシア派のミサイル誤爆を受けた。壁が崩れてもイルカは立ち退きを拒否。トリクは、ロシア側につくかウクライナ側につくか、厳しい選択を迫られる。その時、マレーシア航空機がミサイルで爆撃される事件が起き、2人の家のそばにバラバラとなった機体の一部が落下。親ロシア派は証拠隠滅のため、トリクに一刻の猶予も与えない行動に出る。平和な村が終わりのない戦いに巻き込まれていく恐怖と、イルカの逞しさが深い印象を与える作品。


● TIFFシリーズ
「フリーダム・オン・ファイアー」

(原題:Зима у вогні: Боротьба України за свободу、エフゲニー・アフィネフスキー監督作品、ウクライナ=イギリス=アメリカ、2022)

 2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻以来、キーウ、マリウポリなど攻撃を受けた様々な都市の一般市民にインタビューを行い、現在なお進行中の戦争が人びとに何をもたらしたかを描く。

(文:滝沢 三佐子)

 
「検察官」 「検察官」 「検察官」 「検察官」

【演劇】劇団1980「検察官」

10月27日 於:俳優座劇場

 「劇団 イチキュウハチマル」と読む。文字通り、1980年に旗揚げした劇団である。筆者は初めて鑑賞させてもらったのだが、今回のゴーゴリ作「検察官」は、劇団1980と長く交流しているモルドヴァのイヨネスコ劇場の演出家ペトル・ヴトカレウ氏を招いての新演出ということだ。

 ある地方都市に、首都サンクトペテルブルグからお忍びで検察官が来るという知らせが届く。長年の不正と汚職を隠そうと、市長はじめ町の有力者たちは慌てふためく。そこへたまたま町と通りすがった無一文の若い役人が検察官と勘違いされる。市長たちは若者を豪華な接待に招待し、賄賂を送り、不正のお目こぼしを謀るばかりでなく、あわよくば中央での要職の道を求めて大騒ぎする…。

 錆びた鉄板をジャングルジムのように組み立てた舞台装置が、廃墟となった工場のように見える。その組み立て装置をルービックキューブのように自在に組みなおしながら、場面が展開。

 登場人物たちは芸能人のような派手ななりの若者と、汚職や不正をもみ消そうとする町の有力者たちが田舎の伊達者たちのような衣装をキメていて笑える。中でも市長の妻や娘は極彩色のミニスカートと不似合なスリッパ姿で、若者を丸め込もうと必死である。そして、市長の夢に登場する大きなネズミが不気味さを演出。視覚的な色彩の過剰と、後半に向かってエスカレートしていく双方の要求が、ネズミの幻影とともにグロテスクなまでに高まっていく。

 首都から遠くはなれた地方都市で、カネ・女・陰謀が渦巻いている。若者が偽検察官だったというオチに対して、ヴトカレウ版「検察官」は滑稽や諧謔だけでは終わらない。逃げ場のない後味の悪さが残る。観客もあざ笑われた市長たちと同じで、カタストロフにあずかることはできない。この演出に好き嫌いがあるかもしれないが、ソ連時代にモルドヴァが置かれた立場を隠喩しているのではと感じた。

 終演後、ペトル・ヴトカレウ氏、駐日モルドヴァ大使がゲスト登壇するアフタートークが行われた。劇団1980とイヨネスコ劇場は「国の外交関係が始まるより以前から劇団どうしの関係は始まっていた」と長きに渡る交流を説明。「文化の力は政治の力に勝る」と結んだ。その後行われた観客との質疑応答では、主にロシアのウクライナ侵攻について、モルドヴァでの現状などについての単刀直入な質問が相次いだ。人口260万人のモルドヴァに50万人のウクライナ人が避難し、うち8万人が定住を希望しているという現状、うち半数が子どもで、豊かでないモルドヴァの家庭で生活を共にしているという。

 現在のモルドヴァとロシア、ウクライナの関係についての質問には、次のような返答があった。「もともとルーマニアの一部だったモルドヴァは、ロシア(ソ連)に力づくで引き裂かれました。同様に、ロシアとウクライナが兄弟かという問いに対しては、兄弟は力づくでなるものではありません」

(文:滝沢 三佐子/撮影:宮内 勝)

 
田中正也氏 田中正也氏
田中正也氏(中央)と横浜ファンクラブ 田中正也氏と横浜ファンクラブ

【音楽】前回「展覧会の絵」から大発展 田中正也「魔法のピアノ」

 コロナの感染拡大第8波の予想が現実のものとなりつつある11月23日の勤労感謝の日、氷雨に震えながら、すみだトリフォニーホール(小ホール)で開催された田中正也のピアノリサイタルへ足を運びました。

 今年もコロナウイルスの脅威が常態化の下、聴きたいコンサートは相変わらず少なく気分が落ち込みがちの日々が続いています。しかし、今年も田中正也のピアノは、私に幸せなひと時を過ごさせてくれました。

 ホールの受付では相変わらず厳しい感染対策が求められていましたが、来場者は慣れてしまったのかトラブルもなくホールへと向かい、開始のベルを待つばかりです。

 今回も彼の得意なロシアとフランスのピアノ作品をメインにシューベルトの歌曲をピアノ用に編曲したものと、私もピアノがうまく弾けたら挑戦したいブラームスのパガニーニ・バリエーションというプログラムでした。

 挨拶代わりの最初の曲がシューベルトのアベ・マリアです。さすがにリストが編曲しただけに元の歌曲を知らなければピアノの小品!と思える編曲です。二曲目は、ブラームスがやはりピアノ用に編曲したパガニーニの主題による変奏曲です。ご存知の様に元の曲はヴァイオリンのための作品です。パガニーニが作曲したものですから並みのヴァイオリニストには歯が立ちません。自分で弾けたらなんとうれしいことか、といつも思っています。田中正也のテクニックの切れと自家薬籠中の物にした、といってもよい解釈は素晴らしいものがありました。

 続く作品は、彼にとってはお手の物のプロコフィエフです。しかし、サルカズムという作品は聞いたことがなく、俺が知らないような作品は大したことがないだろう、と期待半分で聞いたのですが、これがなかなか良いんです。すごく得をした気分でした。余韻を楽しめた曲や、ブリリアントなスタインウェイにぴったりの作品で、まだまだ自分の知らない名曲があるということを痛感させられました。いや、気に入りました。

 プログラム前半の最後の曲は、フランス音楽のエスプリともいえるドビュッシーピアノ作品「喜びの島」です、名曲中の名曲です。昔、この曲はワトーが描いた「シテール島への船出」にインスピレーションを得て作曲したとレコードのライナーノートに書かれていたので、画集を借りて鑑賞したのですが、芸術に鈍感なためか、いくら見ても「?」、ドビュッシーの感性には届きませんでした。

 休憩をはさんで後半は、ラヴェルの名曲中の名曲「亡き王女の為のパヴァーヌ」で始まりました。この曲を聴くと、音楽を含む芸術・文化の面ではフランスとロシアは強い絆で結ばれていると認識させられます。

 最後の曲、今年のプログラムの目玉は、ムソルグスキーのどなたでもご存知の組曲「展覧会の絵」です。元々はピアノのための作品ですが、どちらかといえばラヴェルの管弦楽用に編曲したもので聞かれることが多いのではないでしょうか。40分近くの大曲ですが、さすがにロシア物はお手のもの、飽きさせることなくフィナーレの第10曲「キエフの大門」へと駆け抜けます。ブラボー!です。管弦楽も華やかで好きですが、元のピアノ曲も聞いて圧倒されます。勿論演奏者が自分のものとしているからでしょう。既存CDの「展覧会の絵」から大発展を遂げている。

 ますます彼のピアノはさえてきており、聴くものに居ずまいを正たせ、緊張を強いるに至り始めました。来年も楽しみです。

 気になったのは、今年は頑張りすぎて会場を揺るがすかのような音量だったことです。

 アンコールは三曲。

 先ず、大曲を聞いた耳を休ませるかのようなドビュッシーの「月の光」。なんとも心地よい思いにさせられました。二曲目は、打って変わってリムスキーコルサコフの「くまんばちの飛行」。楽しい小品ですが名曲です。正也君グッドです。〆は、もちろんリストの名曲“ラ・カンパネラ”です。毎年聞いていますが、彼の解釈・テクニックの進化で聞くたびに新しい発見があります。勿論、毎年聞いていて判るものですが。

 来年も、彼のピアノは私たちに幸せと満足感をもたらしてくれるでしょう。楽しみです。

(金子)

PAGE TOP

3年ぶりの現地観戦 NHK杯国際フィギュアスケート競技大会

11月19日 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

 3年ぶりにNHK杯国際フィギュアスケート競技大会を現地観戦しました。11月19日のみでしたが、早朝便で札幌に向かい、1日全カテゴリーのフリープログラムを堪能しました。

ペア:デビューの地でりくりゅう優勝

 今や押しも押されもせぬトップスケーターとなった三浦璃来&木原龍一ペア。3年前も同じ真駒内セキスイハイムアイスアリーナで行われたNHK杯は彼らの国際大会デビュー戦でしたが、組んで3か月とは思えないほど息の合った演技に「これは…!」と思ったものです。そして今回再び札幌の地で、怪我をも乗り越え、スピードのある爽快な滑り、流れが止まることのない別格の演技を見せてくれました。前半に細かいミスは出たものの、大きなスロー3ループからデススパイラル、木原選手がしゃがんだ姿勢から三浦選手を持ち上げるリフトへの流れは圧巻で、他を寄せ付けない優勝でした。

 2位のアメリカペアは2アクセル2回を含む3連続ジャンプを決めて、勢いに乗りました。

 上品な持ち味の3位のカナダペアは、キャリーリフトがよく進み、そこから膝でスライドしてスピンに入っていくところなど見応えがありました。

女子シングル:キム・イェリム(韓国)初優勝。2位坂本花織と共にファイナル進出。

 NHK杯2連覇中の坂本花織選手は、SP2位発進。フリーはアイスダンスの名伯楽M.F.デュブレイユによる振付でパワーと柔らかさを兼ね備えたプログラムに挑戦しています。冒頭の雄大な2アクセルから始まり、着氷が乱れるジャンプもありながら、さすがと思える疾走感を見せてくれましたが、終盤、得意とする3ループが抜けた瞬間、声を出せない会場からため息が漏れました。フリーではトップに立ったもののSPでの点差でキム・イェリム選手に及ばず2位。

 キム選手は飛距離のあるクリアなジャンプが持ち味で、これが嬉しいグランプリシリーズ初優勝となりました。

 転倒したものの4トゥループに挑戦した住吉りをん選手は、その後一蹴りが伸びるスケーティングときれいなジャンプで挽回しましたが、最後のジャンプミスが惜しかったです。しかしフランス大会に続いて3位に入り素晴らしいシニアデビューとなりました。

 スケートカナダで優勝し、ファイナル進出への期待がかかる渡辺倫果選手は、SP9位と出遅れましたが、フリーでも3アクセルに挑み着氷しました。抜けたジャンプもありましたが、フリーで3位、総合で5位まで順位を上げました。貫録をも感じさせる演技で、太鼓の音のアクセントに合わせたコレオステップも印象的でした。

アイスダンス:フルニエ・ボードリー&サアアンスン組(カナダ)涙の初優勝

 「かなだい」効果もあって、すっかり人気種目となったアイスダンス。

 優勝したフルニエ・ボードリー&サアアンスン組は、深いエッジの伸びるスケートで情熱的なフラメンコのプログラムを演じ、リズムダンスに続きフリーでも1位、グランプリシリーズの初優勝を勝ち取りました。コレオグラフィックステップシーケンスで長いファルダ(スカート)を翻らせながらのスパニッシュ表現も秀逸でした。女性のデンマークの国籍が取れず平昌オリンピック出場を断念、カナダに移籍した後も男性の怪我など困難な道のりを辿った二人がつかんだ優勝に胸が熱くなりました。

 常に独創的なプログラムで楽しませてくれるチョック&ベイツ組(アメリカ)は、今回はややおとなしいプログラム、1位と僅差の2位でした。

 3位のグリーン&パーソンズ組(アメリカ)のラプソディー・イン・ブルーは、曲のここぞという部分にぴったり嵌る要素が配置された爽快なプログラムでした。

 村元&高橋組は、第二グループでフリーを滑る成長ぶり。オペラ座の怪人のドラマチックな世界に酔いしれた人も多かったでしょう。後半やや疲れが見えましたが、リフトではレベル4を取り揃えています。

 小松原&コレト組は、最初のステーショナルリフトに入る動きが流れるように美しかったですが、リフトで2回のタイムオーバーはもったいなかったです。

 波に揺られるような浮遊感のアシストジャンプで始まった折原&ピリネン組(フィンランド)。妖しくも美しいセイレーンの歌に会場中が引き込まれ、前半グループで最も熱い拍手を浴びていました。

男子シングル:世界チャンピオン宇野が貫録の逆転優勝

 SP首位の山本草太選手を約5点差で追いかける宇野昌磨選手。フリー開始後、ループ、サルコウと2つの4回転ジャンプを成功させ、フリップこそ抜けたものの3アクセルからの連続ジャンプも見事に決めました。コレオステップは、全身の使い方が際立って美しく、深みのある音のチェロが奏でるアリアと宇野選手の重厚な滑りが相まって、静謐な世界を作り上げていました。連続ジャンプが1つ入りませんでしたが、堂々の優勝。

 宇野選手に続いて演技した山本選手は、今季非常に安定している4回転ジャンプを3本決め、終盤のイーグルでも会場を沸かせましたが、3アクセルで転倒しフリーは6位。しかし総合2位となり、宇野選手と共にファイナル進出も決めました。

 世界ジュニアで共に表彰台に乗った二人。その後、大きな怪我に苦しみながら一歩ずつここまで上がってきた山本選手の演技中、リンクサイドでは宇野選手、そして友野一希選手がずっと声援を送っていました。

 その友野選手は、前半ジャンプミスはありましたが、そんなことはすっかり忘れてしまうほど楽しさ溢れる演技で、ステップでは魅力全開。ころころ変わるこうもり序曲のリズムに、観客の拍手がぴったり揃っていましたが、これも友野選手の演技の力でしょう。

 3位は、フリー2位となったチャ・ジュンファン選手(韓国)。4回転2本、セカンドの3ループも決め、最後は得意の美しいイナバウアーで、クールに007を演じ切りました。

 今回はジャンプが不調でしたが、個性的な演技を見せるアダム・シャオ・イム・ファー選手(フランス)も今後注目していきたい選手です。

 久々の国際試合観戦でしたが、ここにロシア選手が参加できていないのは、なんとも悲しいことです。一刻も早く戦争をやめ、普通に試合ができる平和な世界を取り戻すことを願ってやみません。Нет войне!

(山成)

結 果

● 男子シングル
1. 宇野昌磨 279.76 Final
2. 山本草太 257.85 Final
3. チャ・ジュンファン(韓国) 254.76
4. 友野一希 251.8

● 女子シングル
1.キム・イェリム(韓国) 204.49 Final
2.坂本花織 201.87 Final
3.住吉りをん 193.12
5.渡辺倫果 188.07 Final *
* 渡辺倫果選手のFinal進出は、グランプリシリーズ最終戦の結果を待って決定した。

● ペ ア
1.三浦璃来/木原龍一 216.16 Final
2.エミリー・チャン/スペンサー・アキラ・ハウ(アメリカ) 187.49 Final
3.ブルック・マッキントッシュ/ベンジャミン・ミマール(カナダ) 175.65

● アイスダンス
1.ロランス・フルニエ・ボードリー/ニコライ・サアアンスン(カナダ) 210.41 Final
2.マディソン・チョック/エバン・ベイツ(アメリカ) 209.13 Final
3.キャロライン・グリーン/マイケル・パーソンズ(アメリカ) 191.10
6. 村元哉中/高橋大輔 178.78
9. 小松原美里/ティム・コレト 164.30

PAGE TOP

【ユーラシア歳時記】 「もし横浜マリンタワーができなかったら アレ…もできなかった?!」

 今回は訪日外国人にぜひ案内していただきたいタワーのお話。

 横浜、まず目をひくのが「横浜ランドマークタワー」ですよね。高さ296m。堂々たる存在感です。一方、「横浜マリンタワー」というと、高さ106mとひかえめに建っています。若者からは「地味~!小さ~!」などの声が聞こえてきそうなタワーですが、昔はなかなかの存在感を示していました。

 実は「横浜マリンタワー」は、かつては「世界一高い灯台」としてギネスブックにも載ったことがあります。(灯台としての機能は2008年に廃止)

 そして、注目していただきたい点は、横浜マリンタワーが1961年(昭和36)に開業したことにより触発されて1964年(昭和39)にできたのが、あの、京都タワーだったのです。

 新幹線で京都駅に入るときに見えますね。「あゝ、京都に来たんだ」と思う瞬間ではないでしょうか。

 今や、京都のシンボル的存在ですが、建設時は「古都、京都にふさわしくない!!」と地元から猛反対にあいました。

 京都タワーの設計は、日本武道館の設計も手がけた建築家山田守。その構造は鉄骨を使わない、内部が空洞のモノコック構造というもので(航空機や船舶などと同じ)高さは131m。これは建設当時の京都の人口約131万人を意味しています。そして、「京都だから、お寺のろうそくを模したデザイン」とよく間違われるのですが、あれは灯台をイメージしたデザイン。「海のない京都の町中に?」と不思議に思われますよね。京町家の瓦ぶきを波に見立て、京都の海(町)に光を当てているイメージだそうです。

 おや?灯台?どうやら、ここでも横浜マリンタワーを意識しているのでは?と思うのは私だけでしょうか。

(とくなが なつみ)

 

ロシアの姓(11)ラジオが子供を成すものか

 先日書店に立ち寄ったところ、ウクライナ家庭料理の新刊が目に留まった。しかし料理よりも気になったのは著者の名前だ。著者夫妻の夫の方はキーウ出身のウクライナ系アメリカ人というのだが、「イーゴ・キャプション」とはこれいかに。外国ルーツか?綴りは?と首を傾げつつ頁をめくり裏表紙にたどり着くと、著者プロフィールにIgor Kopshynとある。ウクライナ語ならӀгор Копшин(イーホル・コプシン)か。ロシア語形はИгорь(イーゴリ)だ。本人の発音もアメリカナイズされているのか、日本語表記を決めた人がこれまで日本語で書かれたウクライナやロシアの人名にはかすりもしない人生を送ってきたのか。内容の一部にも言語への無関心・無頓着さが感じられた。帯では「日本初 ウクライナ家庭のレシピ集」と謳っているが、中身の通り「ニューヨークのウクライナ系移民」を打ち出した方が却って素直に楽しめたのに。本は棚に戻した。

 だがこれも「馴染みのない言語の固有名詞を自分達のよく知っているものに変えてしまう現象」の生きた実例だ。例えば「アントヌィシェフ」が「イントネーション」にされるなど、ウクライナからカナダに渡った人の姓が英語風に作り替えられることは実際多かったようだ。

 ロシアでもまた、姓の中にのみ保存されている聞き慣れない言葉を音の似た馴染みのある語に置き換えて、新しい姓を作り出してしまうことがよくあったという。セリヴァノフ、セリヴェルストフという姓はラテン語で「森の」を意味するシルヴァン、シルヴェストルに由来するが、ロシア語のセリーチ(移住させる)、ヴェルスター(露里=約1,066.8m)に変換され「幾露里か移住させられた」ものだ。また古代ギリシャ語のガラクティオン(乳の)に由来するロクチオノフ姓は、似通った音のローコチ(肘)という単語が元だと解釈し直されてしまった。モルドヴィア共和国の書類に見つかったゾオボロトニコフ家は、元は「沼沢化する人」の子孫を意味するザボロトニコフだったのに、沼は干拓され、代わりに尊敬をもって「畜産学者」にされてしまったとか。

 革命以前のロシアでは人口の8割が文盲で、名前は耳でのみ記憶された。また書類に記録する写字生たちが誤記と偽の語源を生み出すことも珍しくなかった。言い間違い、聞き間違い、書き間違いのコンボが決まった名前もあるかもしれない。

 ロシア語では一般にアクセントのないО(オー)をアと発音することは学習者にもよく知られているが、Оは文字通りオーと発音されるものにしか当てないのだと勘違いしたロシア人が現代になって生み出した姓もある。

 その一つ、20世紀後半に「急激に増えている」と言われたのがРадионов(ラジオノフ)姓だ。その少なくない数がРодионов(ロジオノフ)家から「脱退」したものである。本来の語源、ギリシャ語のロドン(バラ)に由来するロジオン(実際の発音はラジオンに近い)という古い名前は忘れ去られ、代わりに広く一般に知られたラジオという単語に結びつけられてしまった。V. A.ニコノフは著書『姓の地理学』で、「正しいものを間違いだと受け取ることを正直に『文盲』と言わずに済むように、『ハイパーコレクション(直しすぎ)』というデリケートな言葉が存在する」と記している。「自分の姓をラジオと結びつけたくなったとしても、どうして意味のない『~オン』と所有を表す『~オフ』がついているのかね」と。ラジオノフ氏の先祖はラジオではなく、ロジオンという人である。

 しかし我が身を振り返ると、母語でさえ未だに知らない言葉や間違いも多く、自分が文盲でないと言い切れるのかどうか甚だ疑わしい。一生勉強するしかなさそうだ…。

(横嶋 冬美)

参考文献:
В. А. Никонов ≪ГЕОГРАФИЯ ФАМИЛИЙ≫ (1988)(V. A. ニコノフ『姓の地理学』)

 

川西信義さんを偲ぶ

 川西さんと初めて出会ったのは、私がまだ大学院の博士課程に在籍していた頃だった。当時の横浜ロシア語教室の講師と受講生という形で会い、ロシア中世史に熱い関心を寄せる川西さんに引きずられるように二人で『Российские государи 862-1598』を翻訳し始め、さらにそれを基として、神奈川県日本ユーラシア協会の機関紙に連載読物『中世ロシア興亡史講義~歴代君主の素顔とその真実~ 862-1598』を寄稿し始めた(2006年5月)。連載を開始した理由は、日本語で読めるロシア中世の通史が当時あまり出ておらず、その穴を少しでも埋め、大きな流れの中で中世史を捉えたいという思いからだった。

 キエフ・ルーシからロシア・ツァーリ国にいたるまで支配者として君臨したリューリック王朝の面々は、同じ名前を持つ人物が同時代でも時代を違えても何人も存在し、血縁関係も網目のように横にも縦にも広がっており、ある意味非常に分かりづらい。それらを背景に歴史を読み解くのは、こんがらがった毛糸の塊を一本一本ほぐしていくようであり、それには往々にして根気と忍耐強さが要った。その根気と忍耐強さが川西さんにはあり、加えてロシア中世史をこよなく愛する心があった。

 東京ロシア語学院を中退し、ロシア料理レストランの「ロゴスキー」にも勤めていた川西さんは、体が病弱で定期的に病院通いをしていた。体も痩せており、深いしわが刻まれていた彼の顔を見れば、その虚弱さは傍目にも何となく分かった。特に暑さにはめっぽう弱く、反対に冬の寒さには実に強かった。私は、授業中に彼にお願いして暖房をつけさせてもらったことが何度かあった。

 川西さんと個人的に突っ込んだ話をすることはほとんどなかったが、十五年以上も共に翻訳作業をやっていれば、お互いの人間を何となく理解できる。猫を飼っていて、煙草が好きだった川西さん。料理が上手だった川西さん。私に子供ができる度に、笑いながら目を丸くしていた川西さん。私には子供が四人いるので、四度彼の目を丸くさせたことになるが、彼にはどこか達観した境地があって、淡々と社会と周囲を見つめていたように思う。レストラン「ロゴスキー」を辞めた後、病弱だった彼はフルタイムで働くことも叶わず、晩年は横浜国立大学の清掃の仕事に携わっていた。少しでも知識と学問の世界に近い空気を味わっていたいような、そんな彼の淡い思いを私は何となく汲み取っていた。

 古本屋巡りが好きだった彼は、ロシア中世史関連の本を少しずつ手元に集めており、それらの書物によって、翻訳の内容が理解できずに頭を抱えていた私たちは何度か救われた。声を大にして言いたいが、中世史の知識において私は一度も川西さんを越えたことがなく、特にリューリック王朝の傍系を含む系図の相関関係については、私が舌を巻くほど彼はきっちりと隅々まで理解していた。

 川西さんから数か月連絡がなく、さすがにおかしいと思って彼のマンションへ赴いたのは今年の9月初めだった。そこで、5月末日の季節外れの酷暑の日に彼が自宅で倒れ、帰らぬ人となったことを初めて知った。心筋梗塞とのことだった。彼の急逝を知った時の私の驚きと寂しさは、何と表現していいか分からない。「これだけ長く付き合ってきたのに、どうして彼の写真一枚撮っておかなかったのだろう」とどれだけ悔やんだかしれない。ただ一つの救いは、彼にはパートナーがおり、一人暮らしではなかったということだった。

 川西さんが傍らにおらず、ロシア中世史を一人で紐解く作業は実に心細い。ロシア中世史を翻訳しながら「これ、どういうことかなあ?」という私の無知な問いに答えてくれる川西さんは、もういない。彼は「ええー」とにやにや笑いながら、「〇〇な感じじゃないですかねえ」とぼそぼそと答えてくれたものだった。

 あと少し、彼が作って遺してくれた道を自分一人で歩くつもりである。

 川西信義さんのご冥福を深くお祈りしたい。

(大山 麻稀子)

 
ヨールカ
ヨールカ

今年もヨールカを飾りました!

キラキラと光っているツリーで教室の雰囲気が一気に明るくなりました。
遊びにいらした方は、ヨールカの「森」に住む、赤いほっぺのマトリョーシカや元気に遊んでいる鳥たち、袋にプレゼントをいっぱいに詰めたクマさんなど、森の住人を探してみて下さい。
きっと小さな魔法の旅の気分になれると思います。

С наступающим!

(飾り付け ヴァレリヤ、岩下)

 

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。ユーラシア(旧ソ連地域)関連の投稿をお待ちしています。
 催し物の感想、旅行記、講評、写真、絵などさまざまなジャンルの投稿を歓迎します。
 作品は自分のオリジナルか著作権者の許可を得たものに限ります。
 デジタル画像はテキストファイルに貼りつけず、別ファイルでお送りください。
 また、ペンネームや注意事項があればお書き添えください。毎月末締切、翌月15日頃に発行見込み。

※投稿記事は誹謗中傷や公序良俗に反するもの以外ほぼ原文のまま掲載していますが、必ずしも協会としての見解を反映するものではありません。

PAGE TOP

中世ロシア興亡史講義 ~歴代君主の素顔とその真実~ 862-1598
第198回 モスクワにおけるノヴゴロドの鎮圧

協会サイト内 中世ロシア興亡史のページ をごらん下さい。

PAGE TOP