今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2021年4月号 No.714

行事予定

ゴールデンウイークの締めくくりは『チェブラーシカ』で決まり!

「チェブラーシカ」  今年度第二回のDVD鑑賞会は人形アニメ『チェブラーシカ』です。

 今や、100円ショップでも買えるキャラクター。その製作は1969年(昭和44)です。まだ、生まれていない方も多数いらっしゃるのでは……。

 ロシアからやってきた可愛い、そして不思議な動物の物語。第一話から第三話と本邦初公開の幻の第四話も一気に鑑賞しましょう。短編なので、ここで内容を話してしまうと楽しみがなくなります。当日のお楽しみに。

 大人の方も、この日ばかりは童心に戻ってロシアのファンタジーを味わってみてください。

日時:2021年5月5日(水祝)午後1時
会場:横浜平和と労働会館5F教室
参加費:500円(黒パン・お菓子・紅茶付き)
※小学生・中学生無料

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax: 045-201-3714
E-Mail: event@kanagawa-eurasia.org

活動報告

今年の総会は対面・リモート・委任状の3形態で開催

 2021年神奈川県日本ユーラシア協会の定期総会は、3月28日日曜日午後1時30分から開催されました。

 午前中に強い雨が降っていましたが、午後には小降りになりました。

 今回の定期総会は、初めて対面出席とリモート出席と委任状出席の3つの出席形態での開催となり、総会開会時刻には、平労会館5Fの横浜ロシア語センター教室に対面出席者10人、リモート出席者4人が集まりました。

 委任状出席は101人ですが、いつもなら、総会前日に委任状出席者を過半数にするために電話確認を20人ぐらいするのに、今回は、前日の段階で過半数を超えることが見込まれ、電話確認作業は実施せずに済みました。会員みなさまの意識の高さの現れだと感謝しています。

 総会は、Zoomによる音声の不備がありましたが、無事終了することができました。

 コロナ禍の終息の目途がたたず、会員が集合するイベントができず、ハバロフスクなど隣国ロシアへも行けない中、協会活動やロシア語センターをどのように行っていくか不透明な部分も多々ありますが、会員皆様の英知と工夫で乗り切っていくことを確認して総会は終了いたしました。

(木佐森)

2021年神奈川県日本ユーラシア協会定期総会議事録

 2021年3月28日13時40分~14時45分 横浜平和と労働会館5F教室

1. 開会宣言・総会役員選出 司会の野口福美氏により開会が宣言され、議長として中垣内隆彦氏が選出されて開会を宣言した。その後、総会書記に滝沢三佐子氏、資格審査員に板垣美紀氏が選出され承認された。その後、木佐森会長より昨年より続くコロナ禍と昨今のユーラシア情勢を含めた開会のあいさつが行われた。

2. 資格審査報告 資格審査員の板垣氏の報告で、13時52分現在会員223名中、リモートを含め出席と委任状115名を確認し、協会規約第28条及び第30条3項の規約に基づき本総会が成立していることが宣言された。

3. 経過報告・方針、会計報告・予算案および会計監査報告は各担当者から報告された。

4. 会計監査報告 金子隆一氏により会計が適切に処理されていることが報告された。

5. 質疑応答 特に質問はなく、上記報告・方針は承認された。

6. 新年度役員選出 一部昨年退任した役員名が記載されていたので修正し、承認された。また、役員を代表して、田中理事長が挨拶を行った。

7. 閉会挨拶 野口氏が総会閉会の挨拶を行った。

(総会書記 滝沢)

現代ロシア映画鑑賞会「カリキュレーター」

「カリキュレーター」  4月4日(日)「カリキュレーター」(D.グラチョフ監督・2014年・ロシア)を参加者、スタッフ2名で鑑賞しました。

 スタッフ2名だけの寂しいDVD鑑賞会でしたが映画の方は現代の科学技術を駆使した良いものに仕上がっていました。

 犯罪者が日本でも島流しに遭ったように未知なる生命体の巣食う惑星に犯罪者が流されて生死をかけたバトルが展開されました。

 一応恋愛映画の様な所もあり今迄の現代ロシア映画鑑賞会で1番面白かったです。

(中垣内)

初めての会場での開催『マチルダ』鑑賞会

「マチルダ」  3月20日(土祝)、初めての会場は3F会議室でした。飛び込みの方も含めて、5人が参加。モニターが設置されており、鑑賞会には持って来いの場所。ところが、席の関係で横並びになっての鑑賞となりました。

 参加者の中には、歴史に造詣が深く「大津事件の時に切り付けられた皇太子ですよね」と述べる方もいらっしゃいました。

 主人公のバレリーナとの不倫。正妻であるドイツ皇帝の親戚女性との不和との対比が興味深いものでした。

 また、史実をもとにしているので、日本では知られていない列車事故や不倫の際の危難などの描写が盛り込まれていました。

 映画の中のニコライ二世は政治的には能力が疑われるシーンが多くありました。映画のセリフの中に「あの皇帝では大ロシアは治められない」というものがありました。

 後にオフラーナとなる秘密警察の姿も見られ、単なる不倫を描いた恋愛映画ではなく、政治的な描写を含む社会映画ともいえるものでした。

 参加者からは「こんなことがあったなんて知らなかった」「ニコライ二世の姿が目に浮かぶ」などの感想がありました。その場で、次回の『チェブラーシカ』の参加申し込みをされる方もいらっしゃいました。今後も参加者に満足してもらえる鑑賞会にしていきたいものです。

(関戸)

教室案内

横浜ロシア語センター第134期 4月開講

 第134期は4月15日(木)より対面およびオンラインで順次開講します。
 初めて学ぶ方のための「入門」クラスは水曜夜と土曜昼に新設予定。
 全クラスの詳細は教室ホームページをごらんください。
 見学は3クラス・30分まで無料ですが、事前にご予約をお願いします。

ロシア語講座「会話で学ぶ日本案内」受講生が露作文を発表

 横浜ロシア語センター第133期「会話で学ぶ日本案内」クラス受講生の皆さんが授業の課題で書いた日本文化についてのロシア語作文をホームページに掲載しましたのでぜひご覧ください。

 「東京の日本庭園」(仲法夫さん)、「偕楽園」(板垣美紀さん)、「能」(和田馨さん)についての素晴らしい発表です。

 このクラスでは文法を復習しながら、日本の伝統文化(茶道、能劇、歌舞伎、着物、庭園等)についての会話、モノローグ、プレゼンテーションを学んでいます。

● 受講生によるクラス紹介

エレーナ・コンドラシキナ先生お手製のロシア料理を囲んで歓談も  現在は受講者3名で、エレーナ先生が教科書『日本のロシア人』を中心にロシア文学の説明も交えた授業を展開されてます。

 ロシア語のみの授業ですが、先生は英語にも堪能ですので、英語を用いた質問にも優しくご対応くださります。

 クラスの特徴としましては、レッスンだけではなく課外活動も盛んな事です。

 コロナ禍ではありますが、各自が感染に留意しつつ先生宅にご招待を受けたり、ロシア映画をご一緒しましたりと「ネイティブの先生と共に活動し、実際に使われているロシア語を体験できる」事が大きな魅力かと思います。

 先生のご提案で作文も宿題の一環となり、自分の思いを伝える事の難しさを認識できました。

 まだまだ先生からの修正が多めの課題ですが、第133期の記念として形に残せる事を受講生一同嬉しく思っております。

(板垣)

ロシア民族楽器「バラライカ」「ドムラ」教室

 ロシア民族楽器を本格的に習える当教室は毎月2回土曜日にレッスンを行っています。
 レッスン内容は奏法の基本から音楽理論や高度な内容まで。毎月土曜日に開講、実質個人レッスンとなります。初心者の方も、以前習っていて中断された方も歓迎します。

 詳細はお問い合わせください。

時間:14:00~17:45の間、各45分
講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
レッスン料(1回、税10%込):一般11,000円、会員9,500円
※オンラインの場合は各1,000円引き


みなとみらいマトリョミン教室

 マトリョーシカの中に世界最古の電子楽器テルミンが内蔵されたユニークな楽器「マトリョミン」の教室です。
 この1年はコロナ禍で休講が続いていましたが、4月からオンラインで個人レッスンを再開します。


組織・財政

組織状況

(2021年3月31日現在)

 今年は218名の会員数から始まりましたが、3月になり、134期のロシア語講座の募集も始まりました。また、春期集中講座も開講しましたので、その結果、「句読点」集中講座を受講する方が3名、134期入門講座の2名の計5名の方が新しく会員になられました。

 3月28日の21年定期総会の開会時点での会員数は223名です。12月の会員数目標は20年当初の会員数の238名です。20名以上の会員確保が必要です。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2021/3/31
単位:円
摘 要本年度当該月収入前年度当該月収入対前年度増減
一般会計267,900334,600-66,700
教育事業2,527,7102,673,950-146,240
一般事業76,060199,479-123,419
合 計2,871,6703,208,029-336,359
摘 要本年度当該月支出前年度当該月支出対前年度増減
一般会計587,9101,152,575-564,665
教育事業728,647295,844432,803
一般事業116,73295,76620,966
支出合計1,433,2891,544,185-110,896
当該月収支1,438,3811,663,844-225,463
累計収支計52,4411,037,050-984,609

 まだ続くコロナ禍の中、2月に比べると、収入は少しづつですが、ロシア語講座を主力に持ち直しつつあります。それでも、既にコロナ禍にあった昨年に比べると全収入項目ともマイナスになっています。

 支出では、一般会計支出が昨年より50万円も少なくなっているのは、消費税を昨年は3月に納入しましたが、今年は2月納入になったためです。消費税は授業料まるまるの10%になるため、支払消費税は50万円になってしまいます。

 ちなみに、法人市民税は5万4千円です。日本の税制度のおかしさで、大きな利益を上げているところから取るべきなのに、輸出企業には消費税を還付してしまい、利益が上がらない事業所からも活動全体に10%の税金を課しているわけです。

 1月からの累計収支計は5万円(昨年は100万円)に留まってしまいました。半年定期のロシア語講座収入は3月、9月に限定されています。

(木佐森)

お勧め商品

レモン・ジンジャージャム 390g/600円(税込)

レモン・ジンジャージャム 生姜とレモンがおいしいビタミン豊富なジャムです。ヨーグルトに添えたり、温かいお茶にして飲んだり、紅茶やアルコールのアクセントとして加えても。ベーカリー製品のコーティングにもお勧め。

原材料名:砂糖、レモン、しょうが、ペクチン
原産国:ウクライナ
賞味期限:2023年7月21日
保存方法:直射日光を避け常温保存

リンデンハニー 250g/850円(税込)

リンデンハニー リンデン(菩提樹)の花から採れるまろやかでコクのあるはちみつ。ハーブのさわやかな香りとミントのような味わいが特長です。酸素や栄養を壊さないように、低い温度で処理した純粋な生はちみつです。

原材料名:はちみつ
原産国:ウクライナ
賞味期限:2022年12月9日
保存方法:直射日光を避け常温保存
※1歳未満の乳幼児には与えないでください。

野生の花はちみつ 250g/650円(税込)

野生の花はちみつ 野生の花から採蜜したウクライナのはちみつ。爽やかな香りとマイルドな味わいが特長です。酸素や栄養を壊さないように、低い温度で処理した純粋な生はちみつです。

原材料名:はちみつ
原産国:ウクライナ
賞味期限:2022年12月9日
保存方法:直射日光を避け常温保存
※1歳未満の乳幼児には与えないでください。

ロシア菓子詰め合わせ 350円(税込)

ロシア菓子詰め合わせ 協会事務所にて販売中です!
内容は以下の通り。

写真左列:
ドブリャンカ(クリーム&ヘーゼルナッツ入りデザート)
オトロミー(ウエハースデザート)
フトローク(ウエハース ミルク味)

中列:
アデル チェリー味(アーモンド入りスイーツ)
アデル バニラ味(アーモンド入りスイーツ)
ショコナトカ(トリュフチョコレート)

右列:
オット・クラスーリ(クリームファッジ/3個)
モン・オリンプ(セサミチョコレート)
デスティーノ(チェリー入りチョコ菓子)

原産国:ロシア連邦チュヴァシ共和国

※在庫状況により内容や価格が変更される場合があります。

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

ロシア・トップ10  ワクチン導入後徐々に新規患者数が減少、人数規制緩和なども徐々に緩和してきているロシアから、2021年3月第3-4週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。今月は10曲中4曲が新曲!

 9位にビラーンのラブソング≪Она моя≫(彼女は僕の好きな人)がランクイン。

 7位にバルスキフとズィヴェルトのデュエット≪Bestseller≫(ベストセラー)がランクイン。作詞作曲からMV制作まで半年を要した大作です。

 6位にマルロウの新曲≪Ты горишь как огонь≫(君は炎のように燃えている)が入りました。今回は炎に包まれた女の子がMVに登場。

 4位にロボダの新曲≪Родной≫(愛しい人)。MVでは、お互い伴侶・恋人がいるのに昔を思い逢いたくなった二人を描いています。

 ハビブの≪Ягода малинка≫(ラズベリーの実)が2ヶ月連続首位を奪取しました。新曲のこれまでのYOUTUBE視聴回数は1億3400万回までに到達しました。おめでとうございまーす!:-)

※全文、チャート、PV視聴はユーラシア芸能ブログでどうぞ。更新再開しました!

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2021年3月19日~25日/MOPA)

あのズヴェズダー*は今
3. ヴァレリー・レオンティエフ (Валерий Леонтьев)

*ロシア語でзвезда=スターの意。

 かつてショウビズ界を席巻した有名人の当時と現在を追う。第3回目はヴァレリー・レオンティエフ(以下、敬称略)。

1980年代中頃のレオンティエフ  1949年3月19日ソビエト連邦コミ自治共和国のウスチ・ウサ村でトナカイ飼育農家生まれ。現在72歳。66年第一中等学校卒業後はイワノヴォ州へ転居し、海洋学者を夢見て極東大学へ進学しようとしたが資金不足だったため断念。同年ロシア国立演劇学校へ願書を提出後考え直し、止めた。イワノヴォ州の町で様々な仕事に就いた後、同郷ヴォルクター市で鉱物研究所の支部に入り、実験助手として働いたときもあったという。その傍ら音楽活動も始め、72年には同市の文化宮殿でのソロコンサート、同年にはスィクティフィカル市で開催された音楽コンテスト「ペースニャ72」で優勝。78年にレニングラード文化単科大学の通信課程を修了、ゴーリキーフィルハーモニー管弦楽団に入団した。そこから国内外の数々の音楽コンテストに出場。これまでに42もの最優秀賞や優勝を獲得し続けて、各国政府から16もの芸術勲章を授与されている。

コンサートの模様  また彼の音楽スタイルが変化していった。劇場の意向もあってロックオペラに取り組み、出で立ちも「輝く光線」をイメージし、サタデーナイトフィーバーを髣髴とさせる白のスキニースーツやビディコンジャンプスーツ、シルバースキニー、メタリックレギンスに大きなメッシュのTシャツなどの派手な衣装にヒールの靴を履くようになった。最盛期は露歌謡界のプリマドンナ、プガチョワとチケットの最高値の順位を競うほどだったという。

 デビューから現在までに、300曲近くものシングルをリリース。中でも1983年リリースの≪Полёта на дельтаплане≫ ≪Зелёный свет≫ ≪Маргарита≫は日本のソ連&ロシアソングファンの間でも有名だ。今年に入って新譜≪На крыльях любви≫を含むEPをリリースして、まだまだ現役をひた走っている。

モスクワ市内自宅の様子 モスクワ市内自宅の様子

ダーチャで庭の手入れをするレオンティエフ  私生活では同郷の首都スィクティフカル市出身の音楽アンサンブルЭхоのリーダーをしていたリュドミラと結婚。彼女は1992年から米国マイアミに移住し犬の美容師として働いているが、二人の間に子供はいない…というのがwiki情報。しかし2000年代になると、彼に子供が三人いるという情報がニュースやSNSに駆け回った。一人目は学生時代に彼と事実婚状態だった女性で、レオンティエフのモスクワ上京を熱望したことで離縁し他の男性と結婚した。そして生まれた女の子イリーナがタイミング的に早過ぎたため、彼の子供であるという説だ。二人目はアレクサンドル・ボグダノヴィチ。非嫡出子ともレオンティエフの「愛人(実はレオンティエフはゲイ疑惑もあり、レズ疑惑がある妻のリュドミラと偽装結婚したという噂もあり)」とも言われていて、二人は良く似ている。一時期はレオンティエフのチームにまで招待されていたが、認知は拒否している。三人目はアリーナという少女で、米国のモデルとの間に生まれたとされるが、真偽は明らかにされていない。またこの他にも、スペインの代理母からエカテリーナという娘が誕生したとかいうニュースも飛び交った。しかし当人レオンティエフは、子供たちに関する情報を共有せず、沈黙を守っている。

現在のレオンティエフ <参考>
https://www.leontiev.ru/
Wikipedia. Валерий Леонтьев
https://irma-stream.ru/legendary/deti-valeria-leontieva.html
https://muzhyazheny.ru/biography/leontev
https://www.1rre.ru/340910-u-valeriya-leonteva-est-doch-alina-i-syn-aleksandr-skandalnye-podrobnosti-zhizni-zvezdy.html

(MOPA)

演 劇

ヨージクとその一味~単発公演~
「あなたの知らないチェーホフ短編 セレクト9」

3月24日 於:東京・Performing Gallery & Cafe絵空箱

「あなたの知らないチェーホフ短編 セレクト9」  昨年春、「あなたの知らないチェーホフセレクト12」というタイトルで準備されていた公演だが、新型コロナウィルス感染症拡大で涙の延期。およそ1年の沈黙を経て、ようやくリベンジ開催となった。タイトルを「セレクト9」に改め、チェーホフ「チェホンテ」名義で発表した選りすぐりの短編小説9篇を、10人の俳優たちが入れ替わり立ち代わり演じる(一部ダブルキャスト)。

 演目は、「世間には見えぬ涙」「ぐず」「かよわき女性」「富籤」「お婿さんとパパ」「外交官」「喜劇役者」「退屈なあまり」「めでたい結末」。演目と演目の間は、俳優たちが自らギターなどを弾きながらジプシー歌謡を歌い、テンポよく展開する。

 どれも爆笑だったり苦笑いだったりのプログラムだが、特に印象に残ったのは次の通り。

1.「世間には見えぬ涙」:酒飲みの一人が飲み友達二人を招いて自宅で酒盛りの続きをしようと画策するが、妻に見つかってしまい酒や肴になかなかありつけなくなってしまう。ドリフターズのコントを見るようなドタバタ喜劇で、初っ端からエネルギー全開。チェーホフ像の既成概念が完全に破壊される。

2.「ぐず」:住み込み家庭教師ユーリアの給料を何かにつけてピンハネしようとする女主人。ピンハネ理由がバカバカしいのだが、ユーリアは抗議する術を知らない。意外などんでん返しが面白くもあり、しみじみさせられもする。

3.「富籤」:帝政ロシア時代にもあった宝くじ。新聞で見た当選番号に「当たった!」と喜ぶ姉妹は、使い道について夢を膨らませるが…。セリフの掛け合いが歯切れよく、オチが楽しい。現代っ子っぽい発想の姉妹に共感を覚える作品。

4.「外交官」皆に敬愛されていたアンナが死んだ。彼女の死を夫に伝えに行く役目を仰せつかった大佐。ショックを与えないため、妻の死を遠回りに言う大佐が、まるで遠回りに交渉を行う「外交官」のようだというのが、この演目の主題。想定外な夫の誤解が可笑しい。

「あなたの知らないチェーホフ短編 セレクト9」  チェーホフの短編は、噛めば噛むほど味が出るスルメのようなもので、人間の虚勢や見栄、ありもしない夢想などを笑いの中に取り込んで愛おしいものにしてしまう。「あなたの知らないチェーホフ」はそんなチェーホフ・マジックを具現化した舞台。チェーホフの時代から見ると、160年後の未来に生きる私たちへ向けたエールかもしれない。

(文:滝沢三佐子/撮影:倉本和人)

映 画

「ハチとパルマの物語」

(アレクサンドル・ドモガロフJr.監督作品、日本、2021)

「ハチとパルマの物語」  「ソローキンの見た桜」を制作した平成プロジェクトが、新たな日露共同製作映画を誕生させた。今回はヴヌコヴォ空港で2年間飼い主を待ち続けた「ソ連版忠犬ハチ公」パルマに、日本の秋田犬を絡ませたファミリーストーリー。

 物語は、ハチのふるさとである秋田県大館市にある秋田犬の里を訪問したあるロシア人の回想で始まる。彼、コーリャこそ、パルマと共に時を過ごしてきた人物だった。

 9歳で母を亡くし、疎遠だった父のもとに引き取られた少年コーリャは、父とうまくいかず何度も家出して母と過ごしたペテルブルグに帰ろうとしていた。父は国内線イリューシン機のパイロットで、国際線乗務員を夢見ており、自分のキャリアと子育ての両立に苦心する。

「ハチとパルマの物語」  ある日、検疫証明書を紛失した男性が犬の搭乗を拒否され、犬をやむなく空港内に遺棄するという事件が発生。犬は航空保安官から追い回されるが、辛くも逃れ切り整備士の小屋にかくまわれる。やがてコーリャも整備士のもとに入り浸るようになり、その犬、パルマがイリューシン18機の轟音にだけ反応して、滑走路へ迎えに行くということに気づく。その頃、忠犬ハチ公の話をとある日本人ビジネスマンから聞いたコーリャは、同じ孤独なものとしてパルマと心を通わせ、飼い主を探し出そうと決意するのだが…。

 大人の身勝手さと弱い立場の子どもやペットの心理を巧みに描き、実話以上の感動ストーリーを紡ぎだすのは、アレクサンドル・ドモガロフJr.監督。父のアレクサンドル・ドモガロフ(「ソローキンの見た桜」「ボリショイ・バレエ 2人のスワン」にも出演)も成人したコーリャ役で出演している。秋田犬を飼うアリーナ・ザギトワが特別出演するほか、名だたる演劇専門学校卒業の俳優陣の中で、ひときわ繊細な演技を見せるコーリャ役のレオニード・バーソフは映画初出演。そしてパルマ役のシェパード、リリヤはまさに「本物の女優犬」というにふさわしく、見事なスタニラフスキーメソッドでパルマを熱演。

 これまでパルマのドキュメンタリー映画は作られていたが、家族みんなが楽しめるフィクションを交えた映画化は初めて。

 5月28日より全国一斉上映。神奈川では、109シネマズ港北、ムービル、109シネマズ川崎、イオンシネマ蛯名にて。

(文:滝沢三佐子)

映画情報

「スプリー」

(ユージーン・コトリャレンコ監督作品、2020年、アメリカ)

 ウクライナの新鋭コトリャレンコがメガホンを取った超迷惑ドライバーによる狂気のライブ配信。「炎上上等、死んでもバズれ!」のキャッチコピーどおり、サンダンス映画祭を熱狂させたSNS時代のジェットコースタースリラー。

 4月23日(金)より 新宿シネマカリテ、ヒューマントラスト渋谷にて公開。

「不思議惑星キン・ザ・ザ デジタル・リマスター版」

(ゲオルギー・ダネリヤ監督作品、1986年、ソヴィエト社会主義共和国連邦)

 言わずと知れたソヴィエトSFの金字塔がアニメ版「クー!キン・ザ・ザ」と同時公開!

 5月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺にて公開。

ユーラシア通信

マースレニッツァ in シンガポール

前菜:イクラ入りブリヌイ  私が通うRussian Language Center in Singapore主催で、マースレニッツァを祝うイベントがありました。常夏の国で春のお祭り???と思いつつも参加してきましたので報告いたします。

 ご存じの方も多いかと思いますが、マースレニッツァは春を迎えるロシアのお祭りで、その期間中はブリヌイ(ロシア風クレープ)を食べます。ということでこのイベントでも甘いものからしょっぱいものまで様々なブリヌイが供されました。料理は4種類でそのうち3種類が選択可能なメニューでした。
(写真・前菜:イクラ入りブリヌイ)

クイズの一例。ロシアの祝祭日を早い順に並べ替える問題も。  講師とその生徒が同じテーブルに着席するシステムで、私たちのテーブルにはクラスメートと、遅れてきた参加者1名が割り振られました。そしてテーブルごとでマースレニッツァにちなんだクイズを解きました。私たちのテーブルにはロシアの祝日をほぼ暗記している猛者がおり、大変驚かされました。
(写真・クイズの一例。ロシアの祝祭日を早い順に並べ替える問題も。)

 唯一残念だったのは、コロナウイルス対策のためクイズ大会のような全体でのイベントや、テーブル間のコミュニケーションが無かったことです。とはいえ、美味しい料理とクイズのおかげでとても楽しい会になりました。

筆者のテーブルでの記念写真(筆者は左から4番目)  なお、料理は1月号でご紹介したロシア食材店の関係者が準備しており、帰りにはお店で使える割引券が配られました。文化交流をしつつビジネスチャンスも広げられる、素晴らしいイベントのスタイルだと感じました。
(筆者のテーブルでの記念写真。筆者は左から4番目)

(川北)


Хороший человек ハローシイ・チィラヴェーク

 ここサンクトペテルブルクに来てからすでに1ヶ月と半分が過ぎている。2月5日の夜にランスカエ・ショッセにある学校の寮に到着した日が、すでに懐かしく思える。それほど刺激的で充実した日々を送っているからである。

 ぼくは日本でロシア美術史の勉強をしてきた学生である。修士課程を修了したもののロシア語は大変苦手であり、当然、語学の壁にぶつかっている。そして、この壁はいったいどのくらいの高さなのだろうと自問自答する日々である。

 しかし、多くの友人に恵まれたし、メトロに乗って出かけるようにもなったことは、この1カ月半の成長である。

 まず、友人の多くは音楽家であるものの、彼らの母国を尋ねてみるととても興味深い返事をしてくれる。カザフスタン、セルビア、エジプト、シリア、チュニジア、ロシア国内であれば、クラスノダール、カフカース、ブリヤートといった具合である。

 そして、メトロに乗ってどこに向かったかといえば、クラッシク音楽が楽しめるショスタコーヴィチ・フィラルモニア、聖イサアク大聖堂(※編集部注:写真は表紙に掲載)である。

 とにかく、目に見えるもの、耳で聞くもの、五感で感じるものすべてが新鮮であり、僕はこの留学生活がもたらすものははかり知れないと感じている。

***
 追伸、ご質問にお答えします。

Q. 留学中の環境についてより詳しく

A. 現在、ぼくがロシア語を勉強している準備課程は、サンクトペテルブルク国立文化大学の準備課程です。この大学は演劇、ミュージカル、音楽などにも力を入れているようです。普通の人文科学系の学部もあります。寮には楽器の練習をする部屋がいくつか設けられています。そして、ぼくのルームメイトが2人ともバヤン奏者のため、音楽関係の勉強をしている人と仲良くなりました。

Q. サンクトの街のコロナ禍について

A. まず、ぼくはコロナウィルスがなかった時のロシアについて詳しく知らないので、正確なことは言えません。しかし、ロシアの人々のコロナウィルスに対しての意識を考えると、日本人よりはるかにゆるいと思います。外でマスクをしている人は少ないです。メトロではマスクをしている人が多いです。飲食店はほとんどが通常営業です。日本のように、アルコール消毒がしっかり置いてあるお店の方が少ないという印象です。路上で飲んでいる人は見かけません。多分もともとそのような文化はないのかなと思っています。まだ少し寒いですし。

(斉藤)

リビングからロシアが見える!?

 今回は、まだロシア語を学ばれたことがない方、そして、ロシア語は難しいと敬遠していらっしゃる方へ、ある主婦のお話を紹介します。

 その主婦は、将来、子育てが終わった後の虚脱感を恐れ、新聞の人生相談に投書しました。「趣味も無い自分には、何をすれが良いのか、わからない」という趣旨の手紙です。担当者は「人の手がけぬ外国語を家事の片手間にマスターしていくのもプラスになります」と回答。主婦は、その言葉を胸に外国語を学び始めるのですが、発音の難しさに、たちまち落ちこぼれ、クラス最下位に。そして、「もうだめだ、やめよう」と、一学期で、早くも挫折。ところが、その4年後には、通訳ガイドの試験に合格するのです。

 実は、この話は『台所から北京が見える』という本から。中国語通訳者でいらした長澤信子先生の体験記です。先生は、本の中で「私はいままで、こんなに大勢の人が同じような悩みを持っているとは考えてもみなかった」と、おっしゃっています。人はそれぞれ立場が違っても、将来の自分に不安を抱いていたり、何かをしたいのに、何をすれば良いのか、わからなかったり。そんなときに心の底では、誰かの助言を求めているかもしれません。では、その本から抜粋して「外国語は学問ではないが、生活に彩りを添え、自分の世界を豊かにする手段としては、これに勝るものはないと思うのだが、『もう年だから』『頭が悪いから』『暇がないから』と、自ら扉を閉ざしてしまうような言葉を聞くのは本当に寂しい事である」 「外国語は何歳からでも始められる」

 私も思います。外国語を学び始めると、確実に、見る景色が違ってきます。平地で自分のすぐ近くだけしか見えなかったのが、少し丘に登っただけでも、素敵な景色が見えるように。それを見たくないなんて、実にもったいない。4年後には、大阪万博があります。その時、ロシア語が少しでも話せれば、ロシア人からは喜ばれ、日本人から感嘆の声が上がることでしょう。気持ちの良いですね。私は楽しみでワクワクします。英語はそうはいきませんから…。さあ、あなたも、4年後のワクワクのために、ロシア語の扉をちょっと開けてみませんか?きっと、あなたのリビングからもロシアが見えますよ。

(とくなが なつみ)

インターネットミュージアム「日本のなかのロシア」開設!

「日本のなかのロシア」  新生ロシア連邦30周年、日露国交回復65周年を記念して、インターネットミュージアム「日本のなかのロシア」が4月に開設されました。

 世界で最初に日本語教育を始めたのは315年前のロシアでした。歴史上、日露両国の交流は日本の社会と文化にさまざまな影響を与えてきました。

 日本のなかのロシアを探究して北海道から沖縄まで165カ所の日露関係史跡を総まとめし、音楽・写真・ナレーションによる動画をYouTubeに配信しました。

 有名な記念碑や史跡はもちろん、知られざる顕彰碑、墓碑、建築物、そして人物に遭遇することでしょう。

 地域的視点とは別に音楽・バレエ・演劇などジャンル別の日本のなかのロシアも探究しました。

 今後、あらたな調査、発見で順次追加していく予定です。

 きっと皆様の住んでいる地域や街にも知られざる歴史のエピソードが埋もれているにちがいありません。さあ、日本のなかのロシアを見つけてください。

(佐野)

ソ連プロパガンダ風 COVID-19対策啓発ポスター

COVID-19対策啓発ポスター 遠隔(授業・作業)


COVID-19対策啓発ポスター (右)多分、「君!マスクと手袋を着けてるか!」だと思います。(ブリヤート語)


COVID-19対策啓発ポスター ウイルスとの戦いだ!勝利は近い!


COVID-19対策啓発ポスター COVID-19対策啓発ポスター
(左)ピオネールよ、予防接種をしなさい!そして皆に手本を見せなさい!
(右)同志よ!もはやゆっくりしていてはいけない!スプートニクVは君を救済する!

(日本語訳:MOPA/ロシア・ムルマンスク在住)

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