今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2017年9月号 No.671

行事予定

大人のロシア映画鑑賞会(子どもも可)「フライト・クルー」9/23開催!

フライト・クルー  芸術の秋にふさわしく、秋分の日の夕方よりロシア映画鑑賞会を行います。
 ワンドリンクつき(アルコールあり)、おつまみ持込歓迎。ドリンク片手に2016年ロシア興行成績No.1のアクション・スペクタクル大作を楽しみませんか。

【映画情報】
 大噴火が起こった火山島から飛行機で脱出を図るパイロットの奮闘を描き、ロシアで大ヒットを記録したディザスターパニック大作。
 冒険あり、恋あり、ホームドラマあり。ツポレフ機、AH-12などメカ好きは必見。本紙2017年3月号にも映画評を掲載しました。

とき:9月23日(土・祝)18:00~
場所:横浜平和と労働会館5F教室
参加費:500円(ワンドリンクつき)
鑑賞作品:「フライト・クルー」(2016、ニコライ・レベデフ監督作品、123分、字幕付)
参加申込:準備のため、あらかじめ申込を協会事務局にお願いします。

お申し込み・お問い合わせ:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局(※日曜祝日休、8/7~19夏休み)
Tel/Fax 045-201-3714
eurask2@hotmail.co.jp

よこはま国際フェスタ2017 ボランティア募集

よこはま国際フェスタ  神奈川最大級の国際協力・多文化共生イベント「よこはま国際フェスタ」。今年は10月7日(土)・8日(日)、9日(月・祝)の3日間、10時30分から16時まで、昨年と同じくグランモール公園(横浜美術館前)で行われます。

 神奈川県日本ユーラシア協会は7日(土)のみ出店します。(※主催者抽選により変更になりました)。食販ブースでロシア料理(ピロシキ、ボルシチ)やジョージアワインを販売します。

よこはま国際フェスタ  前日の6日(金)・当日には、調理や販売のボランティアスタッフも必要です。詳細はこちらのチラシ(PDFファイル)をごらんの上、ご都合のつく方は担当できる日時や内容を協会事務局までお知らせください。皆様のご協力をお待ちしています!

当協会ボランティアお申し込み・お問い合わせ先:
神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
eurask2@hotmail.co.jp

第70回ロシア語能力検定試験

 10月7日・8日に横浜平和と労働会館4階で検定試験が実施されます。

●10月7日(土)
【2級】
筆記10:00~12:00、聴取12:00~12:25、会話(口頭作文)12:30~
【4級】
筆記14:00~15:30、テクストの朗読(録音)15:30~

●10月8日(日)
【1級】
筆記10:00~12:00、聴取12:00~12:25、会話(口頭作文)12:30~
【3級】
筆記13:30~15:30、聴取15:30~15:45、テクストの朗読(録音)15:50~

活動報告

第19回 大河アムール・ハバロフスク市民交流の旅 断片

シベリヤ鉄道が10000kmになったら

ウラジオストク駅 モスクワからの距離9,288kmの標識  今回の旅行はウラジオストックでの訪問が3日間あった。その時に大変印象に残ったことがあった。それを是非記しておきたい。

 ウラジオストック訪問2日目(8/9)。この日はオプションでウラジオ市内の観光があった。その際、モスクワからの終点であり太平洋側からの始点であるシベリヤ鉄道のウラジオストック駅に行った。

 駅構内には大きなモニュメントが設置されている。それには大きく「9288」の数字が刻まれている。初めて参加された方々は、「これ、何の数字?」とガイドに尋ねていた。ガイドのロマンさんが「モスクワからの距離です。9288kmということです」と答えた。「ああ、そうだったの」「すごいわ。日本列島の4倍以上の距離ね」と参加者は驚きの声をあげていた。ロマンさんは続けて言った。「10000kmに伸びれば、ピョンヤンまで行けます。鉄道でピョンヤンまで行ければいいですよね」と。

 私はこの時、はっとした。「そうだ。鉄道で何の障害もなく、モスクワからピョンヤンまで行ければどれだけいいだろう。それは世の中が平和で友好的であるということだ」と思ったのである。鉄道は陸続きで、どこまでも行ける。何の障害もなく、不安もなくレールがピョンヤンまで伸びれば、核だのミサイルだのという現在の不安と緊張などはないはずである。ロマンさんの言葉を聴いただけで、この旅行に参加した意味があると深く感じた。本当に10000kmになることを私は夢見ている。


「パイジョム」と「ニナーダ」

 今回、私は旅行中に大変な目に会った。団長の田中さんに次ぎ、参加回数が多い私にとっては思ってもみない失敗だった。

 8/12、旅行中最後の夜のハバロフスクでのこと。昼間、散策で街中を歩き、今まで行かなかった大きな書店があるのを見つけた。しかも夜11時まで営業とのこと。「後でゆっくり来ることにしよう」と考え、さよなら夕食会の後、ホテルから一人で外出した。

 昼間、バザールまでバスで行ったので、その同じ系統のバスに乗った。ところが、昼間とは違い書店に行く前に道を曲がってしまったのである。ここで次の停留所で降りれば良かったのだが、「循環だろうから、また戻るだろう」と考えそのまま乗っていた。するとバスは市街地からどんどんと遠く離れてしまった。終点について、車掌が私に降りるように言ってくる。「元のバス停にはもどらないのか?」と聞くと、「ここが終点で、もう市街地には戻らない」とのこと。やむなく、降りたがそこは新興の団地のようだった。

 もうバスもない。タクシーも走っていない。仕方がない。歩くしかないだろう。1時間か2時間歩けば何とか着くだろうと思って歩き出した。バスに乗っているときには夜だし、分からなかったので、明るい方向へ行けば市街地だろうと思って街灯らしきものが点灯している方へ歩いていった。30分程度歩くと、小さなカフェがあった。数人の客がいた。中に入って、インツーリストのホテルカードを見せて、ここに戻りたいと言うと皆驚いている。どうやらだいぶ離れてしまっているようだ。その時、私は本屋に行くだけと思っていたので、ホテルのカードと現金しか持っていなかった。電話もなく、ホテルへの連絡手段もない。

 困ったと思っていると、いきなり肩をつかまれ、「パイジョム(行こう)」と言われた。あっという間に車に乗せられ走り出した。何と、今、私が歩いてきた道をそのまま戻っていくではないか。明るい方が市街地だと思って歩いていたが、それはさらに郊外の住宅地の明かりであったらしい。あのまま歩いていたらどうなっていたか。そのロシア人はインツーリストの前まで送ってくれた。何かお礼をしたいと思い、1000ルーブルを渡すとびっくりして「ニナーダ、ニナーダ(いらない、いらない)」という。無理やり胸のポケットに押し込んで、車を降りた。

 今、考えてみるといくつもの危険があったと思う。全く知らないところを一人で歩いていた。もしも、襲われることがあったら……。もしも、車にはねられたら……。もしも、金を強要されたら……。ひょっとしたら、命の危険もあったかもしれない。治安が良く、送ってくれたロシア人が親切であったからとしか思えない。パック旅行では絶対ありえないことであっただろうが、今回は私の好奇心から引き起こした失敗だった。スタッフとして、大いに反省するしだいである。

(関戸)

歴史を見る眼―『カティンの森』DVD上映会

カティンの森  8月20日(日)、参加者は4人と寂しかったですが、上映会を行いました。

 戦後70年以上も過ぎてから明白になった旧ソ連の蛮行が映像で明らかにされました。内容については、すでに案内のとおりです。

 日朝協会の小黒さんが、「ポーランドは最初にドイツに侵攻され、わずか2週間程度でソ連にも侵攻されました。朝鮮半島は南北に分断され、ドイツは東西に分断されました。終戦の時期がずれていれば日本も分断の悲劇があったでしょう」と感想を述べられていました。この分断により、家族がばらばらにされ、敵味方の立場になるというポーランド国民の悲劇も映画は描写していました。安根さんは「戦争だけはどんなことがあっても絶対にしてはいけませんね」とのこと。

 映画の中だけで済む話ではありません。憲法9条を「改正」して、日本が再び戦争できる国にしようとしている今の世の中をしっかりと見つめなければなりません。そんなことを考えさせられる上映会でした。

(関戸)

教室案内

横浜ロシア語教室 第127期生徒募集中!

 入門・初級・中級・上級・会話・日本案内の各クラス生徒募集中。中途編入も可能です。見学は3クラス・各30分まで無料です。詳細は教室ホームページをごらんください。

 受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


ロシア語能力検定3級対策講座 9月開講!

 過去に出題された模擬問題を解きながら、文法知識を整理していきます。
 既に開講していますが、1回ずつの受講も可能です。引き続き生徒募集中ですので、ぜひお申し込みください!
 詳細は教室ホームページをごらんください。

【日時】9月9日(土)、16日(土)、23日(土)、30日(土)14:00~15:30、15:45~17:15(各日2コマ 計4日間)
【講師】小林淳子(横浜ロシア語教室講師、通訳案内士)
【受講料】1回当たり会員6,600円/一般7,600円

学習動画シリーズ「おもてなしのロシア語」No.5 配信開始!

 神奈川県日本ユーラシア協会横浜ロシア語教室の講師・スタッフの企画・制作・出演による「おもてなしのロシア語」は、「アルファベット」に始まり「挨拶」、「出迎える」、「知り合いになる」と続き、各シリーズのカラーが出ていて、一歩ずつ楽しくロシア語を学ぶ構成になっています。もうご覧頂いているでしょうか?

 次回シリーズNo.5のテーマは「許可を得る」。見知らぬ地で「~しても良いですか?」と尋ねることは、その地のマナーを知る上で大切なことですね。また、「~してはいけません」とルールをお伝えするのも大事なことです。No.5では空港や美術館、また観光地を舞台にして、よく使われる「許可を得る」ための表現やルールを伝える表現を紹介しています。「~してはいけません」と伝える時も、「残念ながら」と一言加えることができれば、受け取る印象が柔らかくなりますね。

おもてなしのロシア語  2020年のオリンピックに向けてロシア語圏からのお客様も多くなることでしょう。温かくお迎えし、お知り合いになり、ルールもお伝えできればきっと喜ばれることでしょう。これからも楽しくて役立つシリーズが続きます。お見逃しなく!

脚本・出演:織田 桂子、須藤アレキサンドラ(横浜ロシア語教室講師)
撮影:田中 豊造
編集:大山 麻稀子
監修:徳永 晴美
制作:NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 横浜ロシア語教室

【視聴方法】 インターネットでYouTubeにアクセス
→「おもてなしのロシア語」または「神奈川県日本ユーラシア協会」で検索
※上の埋め込み画像をクリックすると直接見られます。また、横浜ロシア語教室HP、協会HP、Facebookからもリンクしています。

【シリーズ内容】
No.1 アルファベット
No.2 挨拶
No.3 出迎える
No.4 知り合いになる
No.5 許可を得る
No.6 店での買い物
No.7 通りで尋ねる
No.8 駅で尋ねる
No.9 レストランで

おもてなしのロシア語

シリーズNo.6以下も鋭意制作中!

 No.6のテーマは「店での買い物」。お土産を買いたいというロシア人を案内する場面を題材に、買い物の時によく使われる単語やフレーズを取り上げました。詳細は次号にて。どうぞご期待ください!

神奈川県日本ユーラシア協会のYouTubeチャンネルも併せてごらんください。
以前行われたロシア語公開講座の一部や、当協会講師でもある北川翔先生が出演するバラライカコンサートの模様もお楽しみいただけます。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

レッスン予定日:2017年度前期(2017年4月~2017年9月)
前半:4月8日、4月22日、5月6日、5月20日、6月3日、6月17日
後半:7月1日、7月15日、8月5日、8月12日、9月2日、9月16日

2017年度後期 (2017年10月~2018年3月)
前半:10月7日、10月21日、11月11日、11月18日、12月2日、12月16日

生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


バラライカ&ドムラ 無料体験教室

 ロシア民族楽器の美しい音色を体験してみませんか?第7回国際ロシア民族楽器コンクール「ベロゴーリエ杯」バラライカ部門第1位に輝いた世界第一級の奏者・北川翔先生のレッスンを直々に受けるチャンスです。ぜひお試しください!

予定:11月4日(土)午後


みなとみらいマトリョミン教室 アンサンブル/グループレッスン

 都合により今期は休講となっていましたが、10月から開講します。
 これまで習っていた方も、まだこれからの方も是非お申し込みください!

日程:毎月1回、土曜日開講
2017年度後期日程:10/21、11/18、12/16
※11月のレッスン日は18日になりました。
※2018年1月以降のレッスン日は、決まり次第お知らせします。

◆グループレッスン:
Aクラス 13:00~14:00
Bクラス 14:10~15:10
◆アンサンブルクラス(90分):15:20~16:50(空席についてはお問い合わせ下さい)

講師:檜垣 紀子
会場:横浜平和と労働会館2階
神奈川音楽センターホール


組織・財政

組織状況

(2017年8月31日現在)

 7月・8月に入会していただいたのはお一人で、やはりロシア語教室の受講に伴う新規入会です。退会者は、本人から「高齢により、身辺整理のため退会したい」等の電話があり、3人の方が退会となりました。

 年度当初会員数は221名で、8月末会員数は216名(7月は218名)に留まっています。退会者累計23名、新会員累計18名です。

(木佐森)

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2017/8/31
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計1,174,7421,129,80044,942
教育事業5,110,3534,885,993224,360
一般事業1,155,5351,362,306-206,771
合 計7,440,6307,378,09962,531
前年同期(単位:円)2016/8/31
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計4,361,0024,315,59645,406
教育事業2,618,6902,256,405362,285
一般事業916,042875,26540,777
支出合計7,895,7347,447,266448,468
当期剰余金-455,104-69,167-385,937
合 計7,440,6307,378,09962,531

 7月・8月は、一般事業の物品販売が持ち直しています。6月の売上は14万円でしたが、7月8月合計で32万円、月平均16万円で、夏休みを考えると成果がみられます。一方、それに対応して支出の商品仕入れ額も増えており、売れ残りをなくすことが求められます。

 教育事業の支出額が前年に比べ大きくなっているのは、7月の授業数が多かったので、その分講師謝金も増加しています。

(木佐森)

お勧め商品

ひまわりの種のハルヴァ(プレーン、アプリコット入り)各540円(税込)

ひまわりの種のハルヴァ 口いっぱいに広がるナッツの香ばしい香りと甘み。
ひと口で魅了される美味しさです。
温かい紅茶とともにひまわり種のハルヴァをお楽しみください。

内容量:250g
原産国:ロシア
原材料:粉末ひまわり種、モラセス、砂糖、甘草エキス、香料
保存方法:直射日光を避け、21度以下の涼しい場所で保存してください。
賞味期限:プレーン・2018年1月11日、アプリコット入り・2017年12月19日

燻製イワシ(スプラット)オイル漬け 350円(税込)

燻製イワシ 濃厚で芳醇なスモーク特有の豊かな香り、黄金色に輝く美しい色合いが特長です。
ビールやウイスキーのおつまみにピッタリ!

原材料名:イワシ(スプラット)、食用菜種油、塩
内容総量:160g(固形量112g)
原産国名:ラトビア
賞味期限:2019年12月9日

『基礎から学ぶロシア語発音』 2,052円 (税込)

基礎から学ぶロシア語発音 リュボーフィ・ゴルボフスカヤ、安岡治子 著
ISBN 978-4-327-39434-9 C1087
A5判 並製 音声ダウンロード 140頁 刊行年 2016年5月

 間違った発音ではロシア人にまったく通じない!?
 東京大学で日本人学習者の発音指導に長年携わってきた著者たちが、母音・子音・イントネーションを1つ1つ、徹底的に指導します。発音練習ドリルを多数掲載!
 付属の音声教材と豊富なイラストで、正しい発音を確認しながら、ロシア語発音の基礎を学べます。音声は研究社ウェブサイトより無料ダウンロード。

『ロシアへの道 初級ロシア語教科書1』 4,320円 (税込)

ロシアへの道 発行:サンクトペテルブルグ 出版社「ズラトウスト」
編者:V.E.アントーノワ、M.M.ナハービナ、A.A.トルストゥイフ
ISBN 9785865478171
A4版変形 全344ページ ロシア語

アルファベット、文法の習得、読み書き、聞き取り、会話まで、全ての分野をバランスよく学べる外国人向けのロシア語教科書。全15課。
横浜ロシア語教室の入門~初級クラスでも使用しています。

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  涼しい風が吹き始めたロシアから、8月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。10曲中6曲が新曲!

 8位にウクライナ出身モナチクの«УВЛИУВТ»がランクイン。スタヴロポリ出身のポップユニット・グラードゥスィの新譜«Здорово великолепно»(見事だ、立派だ)が7位に。初代ローヤ、2代目カラウロワ、そして現在3代目のレラがVoの5sta Family の新譜«Многоэтажки»(高層マンション)が3位という高位置に登場。5位にマールシャルの今年初めてのシングル«Мы вернемся домой»(家に帰ろう)が入りました。

 世界的ヒット«MAMA LOVER»を引っさげ来日公演したSEREBROの新曲«Между нами любовь»(私達の間の愛)が、首位を占めていたアルティック&アスティを押しのけ、第1位になりました!おめでとうございまーす!:-)

画像引用元
Александр Маршал→http://www.peoples.ru/
Юлианна Караулова→http://www.peoples.ru/
Градусы→http://www.peoples.ru/
5sta Family→http://www.tele.ru/
Банд`Эрос→https://volnorez.com/
Monatik→http://hitplaneta.ru/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2017年8月14~20日/MOPA)

演劇・映画

CP Project vol.5「結婚申し込み~チェーホフ短編戯曲」

8月25日 於:恵比寿スペース29

結婚申し込み  今年は予感どおり「ワーニャ伯父さん」と短編戯曲の当たり年らしい。普段「結婚申し込み」は「熊」とペアで上演されることが多いのだが、今回は「結婚申し込み」1本立てで小一時間の上演。普通に演じられるときより若干長い。いったいどんな風に展開するのか興味をそそられた。

 登場人物は地主の娘ナターリヤ、彼女へプロポーズをしにやってきた幼馴染のローモフ、二人の成り行きに翻弄される“損な役回り”なナターリヤの父の三人。世間話のつもりで話した話題が、ご近所どうしの一歩も引かないライバル意識に変わる。そこをどう料理(演出)するかが見所だ。

結婚申し込み  さて、今回は農地「牛ヶ原」をめぐる所有権問題が某国と某国の領土問題に換骨堕胎され外交問題に発展、あわや軍事衝突かというところでローモフが発作を起こしてぶっ倒れる。

 いったん和解するナターリヤとローモフ。ナターリヤはローモフからプロポーズの言葉を引き出すべく狩猟の話を持ち出すが、これがお互いの飼い犬批判と自慢合戦になり再び両者は言い争いに。両者の犬の名は「シンゾスキー」と「ユリンスキー」。いつのまにか国政に都政を絡めての大批判へとエスカレートする。チェーホフ作品に時事問題を見事にマッチさせるという度肝を抜く演出だ。

結婚申し込み  台本と演出はスタニラフスキーシステムを学び、演劇と通した教育やワークショップを行っている小山裕嗣氏。個人的には好きと嫌いの矛盾が可笑しい「熊」が好きなのだが、今回の演出では、今も昔も変わらない人間の滑稽さが深く表現されており、単なるドタバタでないところに好感をもった。上演後のアフタートークでは、もっと現代的な設定でチェーホフ劇をやってもらえたらという意見が出される中、今回の上演はチェーホフ作品の敷居をより低くしてくれたのではと感じている。

(文・滝沢 三佐子/撮影・山村 厳)

Gフォースプロデュース
「氷雪の門」~昭和20年、乙女たちが決めたこと~

氷雪の門  樺太・真岡(現ホルムスク)で電話交換手として勤務していた10代から20代前半の女性たちが、1945年8月20日、ソ連軍上陸の際に集団服毒自決をした。本作はこの「北のひめゆり」とも称される真岡郵便局事件を題材にした作品である。敗戦したとはいえ、当時は「生きて虜囚の辱めを受けず」という意識が支配的。したがって物語の流れは、彼女たちはなぜ死ななければならなかったのかを時間をさかのぼっての再現となっている。

氷雪の門  度重なる避難や疎開命令も受け入れず、親の説得さえ聞き入れない彼女ら。しかし、電話交換手という仕事は彼女らのアイデンティティでもあった。そこに一人ひとりの家族の事情や職務への使命感、戦争への憎悪や自由への憧れなど、死に至るまでの彼女たちのゆれる心情が重層的に描かれる。美化されがちな「強制された死」ではなく、一人ひとりには自決する理由があったとするのだ。

 1974年に作られた映画「樺太1945夏・氷雪の門」では、公開直前に反ソ連映画であるとして配給中止に追い込まれるという事件が起こったが、この舞台ではソ連軍がヤルタ会談での密約をどのように利用し、どのように樺太侵攻における大義名分を得たのかがセリフで説明されており、ソ連軍への感情は冷静である。

氷雪の門  また、真岡郵便局事件の直前に起こった太平炭鉱病院の看護婦23人集団自決を絡め、看護婦の一人が妹だったという設定が加えられている。また、彼女たちが所持していた青酸カリの出所は、職員の一人の実家が薬屋だからと設定されている。人数分足りなかったため、3人が生き残ったとされている。これが事実だとしたら、生存者の一人がその職員だったというラストはあまりにも皮肉な結末だ。

 当時の日本人にとって、「死」と「恥」は不可分だった。それを植え付け、巧みに操ったのが「国家」だ。そのことはこの舞台で直接的に表現されていないが、私たちは教訓として汲み取るべきだろう。

(文・滝沢 三佐子/写真・劇団提供)

ユーラシア通信

2017年夏 ボリショイサーカス観覧記

ボリショイサーカス  神奈川県日本ユーラシア協会(ロシア文化フェスティバル事務局からの特別提供)から今夏、ボリショイサーカスの優待券をいただいた。うちの息子たちは「サーカスに行ける~!」と大喜び、夏休みのビッグ・イベントとなった。

 会場の横浜文化体育館のロビーには、親子連れ、孫連れの人々があふれていた。席に着くと、まもなく彩り豊かなライトアップと愉快なミュージックでサーカスの幕が開く。大人でも否応なくワクワク感が高まった。

 最初の演技から、正直度肝を抜かれた。4、5歳(?)ぐらいの小さな女の子3人が踊り出てきたかと思うと、驚くほどの体の柔らかさを駆使して、素晴らしい連携プレーでアクロバットを披露していく(トリオ・アクロバット)。その一つ一つの技の高さにも感心したが、これだけテンポの速い音楽に合わせながら、これだけ幼い女の子たちが一糸乱れず演技をし通すには、どれだけの練習を積み重ね、どれだけのプロ意識を持っているのだろう、とそちらの方に内心驚愕せざるをえなかった。常々感じていることだが、「芸術の分野では日本はロシアの足元にもおよばないなあ」と思ってしまった次第である。人々の能力に差異がある、というよりも、芸術に対する真摯な心意気が、ロシアと日本ではまったく違うような…。そこにロシア人の精神面の純粋さも感じるわけで、ロシアに対するリスペクトを覚えながらのその後の観覧となった。

ボリショイサーカス  続いて、可愛い猫や犬の絶妙な演技、巨大なフラフープを用いて地面の上を移動するフープ・アクト、手に汗握る空中アクロバットなどが登場し、前半の演技が終わり、小休憩となる。

 後半最初の演技は、空中ブランコだったが、たった一つのミスもなく、その技術力の高さには舌を巻くものがあった。素晴らしい演技、としか言いようがなかった。

 一つ残念だったのは、最後の方に2歳の末の子の集中力が切れ、彼に付いて会場とロビーを行ったり来たりする羽目となり、ものすごい速さで何着も服を着替えるイリュージョンを見損なったこと(涙)。その他、ピエロの爆笑ものの演技、棒上バランス・アクト、迫力満点の馬のサーカス(ジギト)など見どころ満載のサーカスだった。

 上の子3人は一度も席を立つことなく、すべての演技に釘付け、大きな感動を覚えた良い夏になった模様。とても、とても素敵な時間だった!

(大山)

長崎滞在記

 2017年の夏、仕事で長崎に滞在しました。長崎はご存知の通り原子爆弾の被爆地です。西洋医学を日本で初めて受け入れた歴史を持つ長崎は、被ばく医療の研究では日本一の知見を誇る医学都市でもあります。

 滞在中、8月9日長崎原爆の日の平和記念式典に参列しました。本年の平和式典で被ばく者としての思いを訴えたのは88才の深堀好敏さんでした。深堀さんのお話しを、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンからの参列者に通訳していると一人の人の目に涙が浮かびました。「私たちの国にも放射線被曝に苦しむ人がいるから理解できるのです」とその人は仰いました。

 被ばく者の深堀さんの訴え、「核は人類と共存できない」との言葉は大変重く私たちの胸に迫りました。長崎市長の毅然とした政府への呼びかけに感銘を受けました。日本には世界唯一の被爆国としての責任があります。市長が呼びかけた「世界各国のリーダーの皆さん、被爆地を訪れてください」という言葉を、私は日本人1人1人に自分のこととして受け止めて頂けたらと思います。私は、長崎という土地が72年間経験してきたことを現地でひしひしと感じました。

 滞在中、高校生が「微力ではあるが無力ではない」を合言葉として高校生平和大使として一万名の署名運動を展開していました。平和式典も高校生が司会をしていました。若い世代に平和の尊さを伝えていくということが長崎では結実しているのを目の当たりにし感動を覚えました。私たちの横浜ではどうでしょうか?

 現地を訪れ見聞してくることの大切さを痛感した長崎の滞在でした。

(竪山)

シベリア追憶の旅(1)

シベリア  今夏、ザバイカリエ地方(もとチタ州)での通訳業務の依頼電話を受けた時、引き受けるべきかどうか迷った。シベリア奥地への旅は前に何回か体験しているので、かなりハードな旅になることは想像できた。ひざの痛みが気になった。だが、一方でシベリアへもう一度行きたいとの思いが募った。仕事の魅力もさることながら、シベリアをもう一度この目で見たかった。あの宏大無辺の空間に点在するシベリアの村落は様変わりしているのであろうか。あのゆったりとした心地良い時の流れは速くなっていないだろうか。

 仕事を引き受けた。旅の身支度と共に体調を整え、痛み止めも十分に備えた。今回のザバイカリエ地方への旅は、戦争の激流に飲み込まれ、シベリアで命を落とされた日本人抑留者の方たちを偲ぶ旅であるとともに、これまでかの地で見聞した私の記憶がよみがえる旅になりそうである。

ハバロフスク空港

シベリア  ハバロフスク空港に飛行機が着陸するとき、私が最初に窓越しに探すのはいつもあの旧館である。その建物を最初に見たのは東京オリンピックが開催された1964年。ロシア文学とソ連にあこがれていた三池炭鉱の鉱夫の娘がモスクワ留学に向かう旅の途中であった。横浜港大桟橋で父母や友人たちに見送られ、2泊3日のナホトカ航路の船旅をし、ナホトカからは鉄道でハバロフスクに入り、レーニン広場に面するホテルに一泊し、翌日モスクワへ飛び立った時の思い出の建物である。

 今はもの憂げな小ぶりの古い建物だが、あの時の私には豪奢な洋館に見えた。奥の待合室のビュッフェで初めて食べたサーモンオープンサンドはとても美味しいご馳走であった。だが、トイレ文化の違いにショックを受けたのもこの建物の中であった。当時の東京の公衆トイレは和式トイレで決してきれいではなかったが、少なくとも個別のトイレにドアーは付いていた。だが、その美しい建物の中にあったのは、丸いしゃがみ式の便器で、前にドアーが無い、横だけが低めで細めのボードで仕切られているだけのトイレであった。前ドアー付きのトイレも一つあったが、そのドアーの上下の部分は広く開いていて、真ん中部分だけを隠すだけのものだった。どちらのトイレもその後ソ連国内を旅する時に時々見かけた。今は、さすがにドアー無しのしゃがみ式トイレは見かけなくなったが、ドアーの上下が開いているトイレはまだ見かける。今回もインツーリストホテルの地下にあるトイレでこのタイプのトイレが健在であることを確認した。トイレに入る目的は皆同じ、清潔でさえあれば、音を気にすることも、足元を隠すことも必要ないのかもしれない。ロシアの人々はおおらかなのだ。

 あの旧館は今もあった。だが、飛行機の窓から見る限り、使われている気配を感じなかった。実際にどうなのか中を見たかったが時間が無かった。そのうち取り壊される運命なのかも知れない。空港から市内に向かうバスの中で、あの建物の外観だけでも残して欲しいと思った。

(野口)

ウラジオストク簡易ビザ(電子ビザ)について

ウラジオストク簡易ビザ  今まで噂ではあったものの、たびたび延期されてきた「ウラジオストク簡易電子ビザ」だが、このたび8月8日より本格始動した。

 申請は18の国と地域の住民となっているが、これには日本も入っている。日本語版のホームページも開設されており、ロシア語や英語が分からなくても申請できる仕組みだ。

 そして、2018年1月1日より、サハリン、カムチャツカ、2019年には西部の飛び地、カリーニングラードでも運用開始予定である。

 このビザを申請するためには4日前以上前に上述のサイトでパスポート番号などの必要事項を記入し、申請が終われば、写真のようなPDFファイルがEメールで送られてきて、印刷して、パスポートとともに入国管理官に見せる仕組みになっている。

 現在のところ、ウラジオストク空港とウラジオストク港のみの運用となっており、出入国もそれらに限られる。また沿海地方から外に出ることも出来ない。しかしながら、日本からわずか2時間で行けるヨーロッパとして、伸び白がある地域である。

 S7航空とオーロラ航空が交代で毎日運行されており、2,3泊の旅行でも可能である。

 9月30日まで、JALのディスカウントマイルキャンペーンが実施されており、東京~那覇・石垣よりも安い11000マイルでの往復航空券との交換が可能である。ただ、満席の便も出ているので、神奈川からなら大韓航空どうし、あるいはピーチ・アビエーションの羽田発の乗り継ぎ便(羽田深夜・早朝出発ソウル経由昼頃ウラジオストク空港着)も検討のしがいがあるだろう。

 今までは大使館を通じてしかビザの申請が出来なかったことと比べればウラジオストクはまさに「近くて近い友人」に変貌しつつある。日本から1番近いヨーロッパ。是非訪れてみてはいかがだろうか。

ビザ申請はこちらから

画像提供協力:ウラジオ.com

私のブログ「みなときたから」

(内藤)

新在日ロシア大使にはミハイル・ガルージン氏が就任

ミハイル・ガルージン氏  ロシアの外交官ミハイル・ガルージンは8月7日、インドネシアのASEAN常駐代表の任を解かれ、日本大使館を率いることとなった。元駐日大使のエフゲーニイ・アファナシエフは5月に70歳となるがこれは国務の定年である、とロシア外務省筋が「イズヴェスチヤ」紙に語った。

 複数の外務省筋によれば、最近まで在インドネシアロシア大使兼ASEANロシア常駐代表だったミハイル・ガルージンの、新ロシア大使として両院の承認手続きは終了したとのことである。

 57歳のミハイル・ガルージンは日本語と英語を使える常勤の外交官である。すでに日本での勤務経験もあり、特に2001年から2008年まで東京のロシア大使館参事官であった。

 ミハイル・ガルージンは、1970年代からアジア畑で働いてきた外交官で日本だけではなく韓国やタイで大使として勤務した経験のあるエグゲーニイ・アファナシエフ駐日ロシア大使と交代することになる。

(ロ日協会より)

文学紹介「ビールと古本のプラハ」千野栄一著 白水社刊

ビールと古本のプラハ  人は何のために旅にでるのか

 風景を散策するためか、芸術に思いを重ねるため、料理、ワインを楽しむため。いずれにしても、そのために時空を越えるのだ。作者のチェコ文学翻訳者故千野栄一氏の場合は読みすすむとわかるが、ビール賛歌の旅である。かくして古本屋と、ビアホールへ入りびたりになる。陽気な青春群像は,カレル大学時代を彷彿とさせる。百塔の町、プラハは喜びも悲しみも抱えつつ静かにそこにあるのだ。それは古き良き芸術の都でもある。ビアホールにはいればコースターが絵葉書代わりになり、100歳婆という名前の飲み屋もある。そして彼はここで恋もした。ヨーロッパ建築様式の博物館といわれる程,プラハは美しい。建築物が多くの作家、詩人、音楽家などを輩出した芸術の都としても知られている。この町に学び、暮らし、この町の人を知悉した著者が「ビロード革命」後の変化もまじえて、その魅力を描く、青春の書である。それをいつまでも語ろう。決して硬い本ではない。あなたも時空を超えて思い出の場所に旅にでませんか。

(中出)

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