今月の表紙

特定非営利活動法人神奈川県日本ユーラシア協会機関紙「日本とユーラシア」

2016年12月号 No.662

行事予定

「望年会」12月25日開催

 今年を忘れるのではなく来年に望みをつなぐ「望」年会。当日お時間のある方はぜひご参加ください。ユーラシア協会ならではの話題を肴に寛ぎ、楽しみましょう。

日時:12月25日(日)13:00~
参加費:1,000円、一品持ち寄り
会場:横浜平和と労働会館5階 当協会教室
お申し込み先(準備の都合上、要予約):神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

2017年1月15日(日)ヨールカ祭

ヨールカ祭  神奈川県日本ユーラシア協会の1年は、ロシア風新年会「ヨールカ祭」で幕を開けます。日本在住のユーラシア(旧ソ連)の国々出身の方々と、協会員・教室講師生徒・ユーラシアに興味のある皆さんが交流できる最大のパーティーです。子供向けプログラムとプレゼント、ロシア料理会食、コンサートやロシア語劇など盛り沢山なプログラムを予定しています。詳細はチラシ画像をクリックしてPDFファイルでごらんください。

日時:1月15日(日)13:00~16:00
会場:横浜市従会館4階ホール
参加費:一般2,500円、会員・ユーラシア諸国(旧ソ連)出身者・高校生2,000円、2016年7月以降入会・入学者1,500円、小中学生1,000円、未就学児童無料
要予約。お申し込み締切:1月12日(木)。予約の際にはお名前、参加人数、連絡先電話番号、大人・中高生・小学生・未就学児童の区分をご連絡下さい。
お申し込み・お問い合わせ先:神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp


ボランティアスタッフも募集中!

 例年100人以上が参加する大きな行事になりますので、ボランティアスタッフもまた大勢必要です。ボルシチをはじめとする大量のロシア料理を前日から何品も作ったり、会場の準備・配膳・物販・後片付けなどをする裏方の力に支えられて初めて、開催が成り立ちます。こちらにもぜひご協力いただければ大変助かります。皆様のご応募をお待ちしています!
 お申し出は協会事務局まで。

ヨールカ祭ボランティア スケジュール(案)
◆1月14日(土)午前 横浜平和と労働会館1階協会事務所に集合、食材等買い出し/ロシア料理の調理/物品の準備など ※時間は追ってお知らせします。
◆1月15日(日)朝 横浜平和と労働会館1階集合・荷物運搬/横浜市従会館4階ホールで会場設営・装飾・料理準備/13:00開会・料理提供開始/16:30~17:00撤収・運搬/17:00~協会事務所・教室での片づけ

★前日の調理・当日午前中の設営を担当された方はヨールカ祭の参加費無料!

ヨールカ祭  塩漬けニシン、ビーツ、じゃがいも、にんじん等を重ねてゆで卵で彩った前菜「外套を着たニシン」(写真左)は目に鮮やか、舌にも美味しい、毎年好評のメニューです。
 ニシンを塩漬けにし、大量の根菜をゆで、大きな型に何杯もつくります。あなたも調理ボランティアに参加して、作り方を覚えてみませんか?

お申し込み・お問い合わせ先:神奈川県日本ユーラシア協会事務局
Tel/Fax 045-201-3714
E-mail eurask2@hotmail.co.jp

活動報告

自然とは、人間とは ―「デルス・ウザーラ」DVD上映会

デルス・ウザーラ  11月27日は雨が心配だった日曜日でしたが、上映会の時間は大丈夫でした。この日は「デルス・ウザーラ」のDVD鑑賞会でした。協力監督の河崎保さん(93歳)をお招きしての大変貴重な上映会でした。参加者は、当日参加の方も含めて合計12人。ロシア語教室の会場では少し手狭と思えるほど。

 時間通りの上映となり、参加者はその映像の迫力とシベリヤの大自然の美しさに目を奪われました。そのシベリヤの大森林に住む猟師デルス・ウザーラと、シベリヤ地誌調査探検隊の隊長アルセーニエフとの交流を描いたものです。「森の人」デルスは、探検隊の誰も知らない、大自然に生きる知恵を身につけていました。しかも、その知恵を自分のためだけでなく、森に来る人すべてに役立つようにしていました。道に迷い、吹雪に遭遇したデルスとアルセーニエフ。デルスの指示に従い、アルセーニエフは草を刈り、吹雪を避ける小屋を作ります。隊長も案内人もありません。生きるために知恵を体力を絞るのです。そして、森の中にある小屋にはマッチと米と塩を置いていくようにアルセーニエフに依頼します。後から来る人が生き延びるようにです。

 その姿勢にアルセーニエフは心打たれます。こうして、二人は信頼を保ちました。しかし、「森の人」であるデルスも寄る年波には勝てません。目が悪くなり、猟師として致命的な状況になりました。アルセーニエフはハバロフスクの自宅にデルスを連れていき、暮らし始めます。アルセーニエフの息子は「森の人」デルスの話を興味津々で聞いていました。しばしの安らぎがありました。しかし、デルスは「森の人」でした。川に行けば誰でもタダで飲める水を、桶に組んできて売る男を悪人といいます。薪がなくなったら、公園の木を斧で切り倒そうとします。デルスにとって「文明」とは足かせであったのです。デルスは最新式の銃を餞別にもらい、森に帰っていきました。しかし、その最新式の銃があだとなりました。強盗はデルスの銃を奪うためにデルスを殺害してしまうのです。

 映画の前後に河崎さんから、撮影の裏話を話していただきました。「戦争と人間」第三部(山本薩夫監督1973年製作)のレニングラードロケでの協力監督の経歴で、この「デルス・ウザーラ」の依頼があったこと。春先の氷が割れるシーンは、河崎さんが直接指示を出して撮影したこと。箱根の黒澤明監督の別荘に呼ばれて話を持ち込まれたことなどは、映画のパンフレットには載っていない話です。また、シベリヤでのロケの際、「世界のクロサワ」がソ連女性に囲まれてご機嫌であったことなど、初耳の話も。素晴らしい映画に感銘し、興味深い話に耳を傾けることができた楽しい上映会でした。

 次回は、河崎保さんが主人公仲代達矢に対して、怒りの言葉を投げつける「不毛地帯」の上映会を企画しています。

(関戸)

10年ぶりのパニヒダ 横浜外国人墓地で開催される

パニヒダ  11月6日(日)は10年ぶりのパニヒダ(正教会において永眠者の為に行われる奉神礼)を横浜ハリストス正教会との共催で横浜外国人墓地にて開催しました。当協会での準備にずいぶんと不備があり、次回は十分に注意しなければいけないという教訓となりました。

 けれども、今回のパニヒダでは当日の祭事を執り行ってくださった横浜ハリストス正教会の水野神父の話は大変有意義でした。特に、函館のニコライ神父を殺害しようと攘夷浪士が襲った際、ニコライ神父が人を殺害することの罪深さと愚かさを説くとその攘夷浪士がロシア正教に入信したという話は初耳でした。攘夷という言葉は「夷狄(いてき)」を「攘ち払う(うちはらう)」という意味です。つまり、外敵を倒してしまえということです。何の理由があるのでしょうか。ただ、外敵であるからというだけなのでしょうか。これでは、友達になれるものもなれなくなってしまいます。自分たちとは違うものは全て敵だなどという考えでは、友好は成り立ちません。相互理解が必要なのです。

パニヒダ  その攘夷浪士に襲われるという悲しい事件に巻き込まれた二人のロシア軍人、ロマン・モフェトとイワン・ソコロフの墓前でパニヒダが行われました。祈りの合間に聖歌隊の歌が入ります。その荘厳な歌声はユーラシア協会、横浜ハリストス正教会の参加者の胸にしみこんでいきました。横浜外国人墓地のすぐ近くは元町ですが、そのにぎやかさはここまでは来ません。道行く人も思わず足を止めて、パニヒダを見守っていました。参加者はローソクを手に、祈りの言葉を胸にしまいました。横浜で命はてた二人のロシア軍人は157年後、こうして日ロの草の根の友好の元となったのです。

パニヒダ  祭事の後には「糖飯」が参加者にふるまわれました。さらに、水野神父夫妻とスタッフは外国人墓地内のロシア正教墓群の散策を行いました。次回は、十分な準備を整え開催したいと思います。

【お詫びと訂正】本紙2016年9月・10月号(紙面版)のパニヒダ予告記事中の「160年前」は「157年前」の誤りでした。訂正してお詫びします。

(文・関戸/写真・小新)
※表紙の写真もごらんください。

驚きと初耳と、愉快な仲間 ― キルギスを知る会 ―

キルギスを知る会 キルギスを知る会 キルギスを知る会

 7月の「ジョージア(グルジア)を知る会」に続いて、ユーラシア諸国を知る会の第二弾は「キルギス」でした。

 10月23日(日)に三人の講師による話と、料理を楽しむ集いが開催されました。旧ソ連は15の共和国から構成されていました。中学校や高校の地理の授業では、その全てを学ぶことは、あまりできません。今回は普段知ることのできないキルギスについて興味深い話を聞くことができました。そのいくつかをあげると……

1) 国旗は太陽であり、なんとなく日本の「日の丸」を連想させること。国章は鷹と天山山脈をイメージしていること。

2) 国土は日本のほぼ半分程度であり、人口は600万人。横浜市と川崎市の合計とほぼ同じであること。日本からは直通便がなく、モスクワ経由で15時間もかかること(留学生の苦労がわかります)。

3) ポーランドはヨーロッパの「へそ」、キルギスはユーラシアの「へそ」であること。

4) モンゴル系・中国系の騎馬民族・遊牧民族がキルギスを建国したこと。

5) イスラムとロシア正教のそれぞれの影響があること。

 以上のことは、学校の授業ではまず教わりません。教科書では「中央アジアを構成する国々の一つ」の一行で終わってしまうのです。何も知らない・何も分からないでは、相互理解のしようがありません。やはり、身近なことから知ることが大事なのです。

キルギスを知る会

 そこで、知る会ではキルギスの「味」から。ボランティアのお手伝いもあり、「プロフ」(キルギスの焼き飯)、「ボルソク」(小麦粉を練って揚げたもの)、「シャカロブ」(キルギスのトマトサラダ)、「チャラプ」(牛乳から作る飲み物)を食べながら、飲みながらの楽しい会食と歓談の時間を過ごしました。「キルギスでの人気のスポーツは?」の質問には、youtubeの動画を上映し、馬で行うサッカーのような競技を説明してくれました。初めて見るので、興味深く鑑賞しました。

 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいました。次回もユーラシア諸国の新たな知る会を企画し、有意義な知る会にしたいものです。

(文・関戸/写真・滝沢)

よこはま国際フェスタ 元気いっぱいの仲間と共に

 例年2日に渡って開催されていた国際フェスタでしたが、今年は10月8日(土)~10日(月・祝)の3日間開催されたうち、当協会は10日だけの参加でした。けれども、準備から当日まで、参加してくれた仲間は元気いっぱいでした。関戸は10日だけの参加でしたが、当日事務所へ行くと前日から時間をかけて作った料理や出品物が山ほど。これが一日分かと思うほどの大量の品々でした。料理については当日も作っていました。調理を担当してくださった皆さんの熱意がわかります。料理だけに来られた方もいらっしゃったとのこと、本当にありがとうございました。

 会場は今までと違い、横浜美術館前の広場(グランモール公園)。荷物を運ぶと、すぐにスタッフが集まってくれました。販売時間になるのが待ち遠しく、仕込みを始めました。お待ちかねの開始時間。ボルシチとピロシキとハチャプリ(ジョージアのチーズパン)、ワインの売り声をあげました。周りのブースはパフォーマンスで勝負のようで、もうもうと上がる煙と肉が焼ける香ばしいにおいがあふれていました。こちらも負けじと女性たちの民族衣装と華やかさで売り上げました。ことにボランティアで来られた方々の頑張りには感謝です。

 ブースに来られた方の中には、戦争体験者や肉親・知人にシベリヤ抑留を体験したという方もおられました。関戸の父はシベリヤ抑留体験者なので、その話をすると「お父様も苦労なさったんですね」との言葉。そういう悲劇を乗り越えて、今は新たなロシアとの関係があります。協会のチラシや機関誌を手渡し、いろいろと語りました。また、物産展や民芸品のマトリョーシカを見て、「可愛い~」とはしゃぐ子供たちの姿もありました。当日作っていたピロシキを往復して運び、終了前には全て完売という快挙。いつもだと多少残っていたもので「残り物打ち上げ」をしていましたが、今年は持ち帰るものはありませんでした。これは、ちょっと残念かも(!?)。

 一日だけでしたが、元気いっぱいの仲間と素晴らしい参加となりました。来年も、元気あるスタッフとボランティアの皆さんと一緒に参加したいと思います。

(関戸)

※写真は2016年11月号をごらんください。

教室案内

横浜ロシア語教室 生徒募集中!

 入門・初級・中級・上級・会話・演習の各クラス生徒募集中。中途編入も可能です。見学は3クラス・各30分以内まで無料です。

 詳しくは教室ホームページをごらんください。受講お申し込み・お問い合わせは教室事務局まで。


授業補習サービス「ロシア語寺子屋」

 当教室受講生補習のための「ロシア語寺子屋」は、学期中の第2土曜日と第4土曜日に行っています。
 ロシア語を学んでいて何か分かりにくいことなどありましたら、どうぞ気軽にご相談ください。
 ご利用の際には前もって教科書のページや質問内容をご連絡下さい。
 人数が多い時は、個別に20分単位で時間の調整をさせていただきます。
 皆様のご利用をお待ちしています。

ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室

2016年度前期(2016年4月~9月)
レッスン予定日:2016年度後期(2016年10月~2017年3月)
前半:10月8日、10月22日、11月5日、11月12日、12月3日、12月17日
後半:1月7日、1月21日、2月18日、2月25日、3月11日、3月25日
生徒募集クラス:
17:00~17:45ドムラ中級
18:00~18:45バラライカ初級

講師:北川 翔(バラライカ奏者、北川記念ロシア民族楽器オーケストラ主宰)
会場:横浜平和と労働会館5階
会員受講料(1回45分×6回分):3~5名クラス:24,000円、2名クラス:36,000円、1名クラス:54,000円


みなとみらいマトリョミン教室

日程:毎月1回、土曜日開講
2016年度後期日程:10/15、11/19、12/17、1/21、2/18、3/18
※レッスン日に見学随時可能です。発表会、協会行事等で演奏の機会もあります。是非お気軽にご参加ください!

◆グループレッスン:
Aクラス 13:00~14:00(空席2)
Bクラス 14:10~15:10(空席2)
◆アンサンブルクラス(90分):
15:20~16:50 (お問い合わせ下さい)
※10月から時間帯が変わりました

入学金:3,000円(継続の方、休学1年以内の方、当協会会員は免除)
受講料:アンサンブル3,600円×6回=21,600円、グループレッスン3,085円×6回=18,510円
会場:横浜平和と労働会館2階 神奈川音楽センター 音楽ホール
講師:檜垣 紀子

組織・財政

組織状況

(2016年11月30日現在)

 今年度年初会員数 209名、入会者累計42名、退会者累計28名。11月末会員数223名、年初比14名増。

財政状況

NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会2016/11/30
単位:円
摘 要本年度収入前年同期収入対前年同期増減
一般会計1,691,4261,665,03026,396
教育事業8,603,7598,551,40652,353
一般事業2,043,4761,984,29459,182
合 計12,338,66112,200,730137,931
前年同期(単位:円)2015/11/30
摘 要本年度支出前年度支出対前年同期増減
一般会計5,864,0346,092,557-228,523
教育事業3,367,9413,150,837217,104
一般事業1,288,2431,076,376211,867
支出合計10,520,21810,319,770200,448
当期剰余金1,818,4431,880,960-62,517
合 計12,338,66112,200,730137,931

 会員数は、11月に2名の方が退会したので、223名に減少してしまいました。残念ながら、5月から続いた純増が11月で止まってしまったことになります。会員みなさまの力を一つにして、12月の望年会、1月のヨールカ祭で3名以上の会員を増やして、純増を再開しましょう。

 教育事業収入は、ロシア語教室に新たな受講生を迎え、前年を上回る収入を確保することができました。この傾向を維持して、会員を増やして2017年を迎えましょう。

(木佐森)

お勧め商品

ロシアカレンダー

2017年ロシアカレンダー 各1,944円(税込)

 水彩画または昔のモノクロ写真でサンクトペテルブルグの風景が楽しめます。現品限り。
 サイズ:縦465mm、横338mm

文化・芸能

芸 能

Русская Десятка ロシア・トップ10

Russia Airplay Chart TOP10  新年&クリスマスの準備で大わらわなロシアから、11月第3週のRussia Airplay Chart TOP10をお送りします。新曲は10曲中3曲でした!

 マイダーノフの新曲«Что оставит ветер»(何が風を止めるのか)が6位になりました。この曲は、ソ連時代にクリミア半島南部に創設された国際子供センター«АРТЕК»のプログラムのオフィシャルエンディングテーマ曲として書かれました。この建屋はソ連崩壊と共にウクライナに渡りましたが、2014年のクリミアのロシア併合により再び、ロシア…というかソビエト色を帯びてきました。«АРТЕК»に集う子供達が肩寄せ見つめ涙し、相互にいとまごいをする姿から、曲作りのインスピレーションを得た」そうです。

 カラウロワの5thシングル«Разбитая любовь»(壊れた愛)が5位にチャートイン。ウクライナ発の新鋭アーティスト、モナチクのメリハリクールなHIPHOP«Кружит»(旋回)が初登場4位。9位からJumpUp、バルスキフの新譜«Туманы»(霧)が第1位になりました!おめでとうございまーす!:-)

画像引用元
Monatik→http://wowone.ru
Юлианна Караулова→http://www.peoples.ru/
Денис Майданов→http://www.peoples.ru/

(Tophit.ru, Russia Airplay Chart 2016年11月14~20日/MOPA)

映 画

「こころに剣士を」

(クラウス・ハロ監督作品、2015年 フィンランド/エストニア/ドイツ)

「こころに剣士を」  1950年代のエストニア。第二次世界大戦中はドイツに占領され、戦後はソ連の支配下となった。そのため、かつてドイツ軍に徴兵された者はソ連の秘密警察から追われる身に。この物語はフェンシング選手エンデル・ネリスの実話をもとに、戦争やスターリンの圧政で肉親を失った子どもたちとの交流を描いた作品だ。

「こころに剣士を」  バルト海に面したハープサルという保守的な田舎町に体育教師として赴任してきたエンデルは、実は子どもが苦手。秘密警察から追われていたため、やむなく始めた教師生活だが、課外活動として始めたフェンシングクラブは子どもたちで大盛況となる。エンデルの身辺を疑う校長の嫌がらせにも関わらず、彼らは手作りの道具でみるみる腕を上げていった。子どもたちの熱意にエンデルも指導に没頭し、彼らと心を通わせていく。ある日、子どもたちが広告を見てレニングラードで開かれる全国大会に出たいと言い始める。身の危険を恐れてためらうエンデル。だが、彼らの夢をかなえるために出場を決意する。強豪ぞろいの全国大会で、フェンシングの道具さえ満足にそろえられない彼らは勝つことができるのか。エンデルの正体をつきとめた校長が秘密警察と共にレニングラードに張り込む中、試合が始まった。

「こころに剣士を」  子どもたちとの共感が強まるにつれ秘密警察の触手が近づき、得も言われぬ緊張感を生む。夜中に連行される男子生徒ヤーンの祖父役に、ジョージア映画「みかんの丘」で主演したエストニア俳優、レンビット・ウルフサク。二人の別れのシーン、そして一人ぼっちになったヤーンが涙をこらえてフェンシングの練習をする場面は、この映画のハイライトのひとつだ。クラブに参加する女子生徒が多いのに驚いたが、戦争や逮捕で男子が少なくなっていたことを思い出すと、当時の状況もなるほどと理解できる。

 小さな国エストニアがロシアに対してフェアな戦いを挑めるフェンシング。恐怖にすくむ大人たちを尻目に、子どもたちは恐怖を乗り越える。史実と娯楽を兼ね備えた素晴らしい作品だ。12月24日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか横浜でも公開予定。

(滝沢 三佐子)

「天才バレエダンサーの皮肉な運命」

(アンナ・マティソン監督作品、2016年 ロシア)
東京国際映画祭コンペティション部門&記者会見報告
11月2日(於:TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

「天才バレエダンサーの皮肉な運命」  テレビドラマシリーズ「ブリガーダ」でブレイクしたセルゲイ・ベズルコフが主演。彼はこの作品のプロデュースも務め、アンナ・マティソン監督は彼の妻。東京国際映画祭ではコンペティション部門に出品し、上映にあわせて来日した。

 アレクセイはかつて一世を風靡した天才バレエダンサー。スキャンダルによる引退後、脊椎の持病を抱えながらも自分のバレエ教室を運営している。彼の性格の悪さ、エゴイストぶりはゴシップのネタ。愛想が尽きた妻は、彼に娘を押し付けて去る。父の性格の悪さにめげない娘に、アレクセイは自分の夢を思い出し、ついにマリンスキー劇場で新作バレエの演出が認められる。上演の成功を目指し、ダンサーの指導に没頭するアレクセイだが、彼の病は悪化。初演目前のテレビインタビューで踊るようけしかけられ、アレクセイは医者の警告に反して踊り始める。

「天才バレエダンサーの皮肉な運命」  とにかくここまで性格の悪いヒーローは見たことがない。観客とのQ&Aでも記者会見でも、そのことに話題が集中した。ベズルコフが「自分とは真逆の性格」と答えると、監督が「セルゲイのマイナス面を反映させてシナリオを作った」と応酬、架空の作品ながらマリンスキー劇場で新作バレエまで作ってしまった奇抜な発想と行動力についても質問が飛んだ。ベズルコフはバレエに命をかけるセルゲイを「サムライ」にたとえ、アンナ監督は絶望が人間を変えることを強調。惜しくも受賞にはいたらなかったが、バレエの本場ロシアを舞台とした悲喜劇は多くの観客に好意的に受け入れられたようだ。

(滝沢 三佐子)

「レミニセンティア」横浜上映決定!

左端:井上雅貴監督、右端:井上イリーナプロデューサー  横浜シネマリンにて12月24日より。日本映画でありながら全編ロシア語、ヤロスラブリロケの異色SFがついに横浜でも公開されます。
 なお、この作品の国内宣伝とロシア国内での上映を支援するファンドレイジングを12月22日まで行っています。
(写真左端:井上雅貴監督、右端:井上イリーナプロデューサー)

(滝沢 三佐子)

ユーラシア通信

2015年ノーベル文学賞作家
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏を迎えて

 過去2回、チェルノブイリ支援団体関連の招きにより来日経験のあるアレクシエーヴィチ女史の3度目の来日。今回は東京外国語大学から名誉博士号が授与され、それに対する記念スピーチと学生との対話が内容である。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏

 「とあるユートピアの物語」と題されたスピーチで、アレクシエーヴィチ女史はいかにして市井の人たちの「声」をみつけたか、処女作「戦争は女の顔をしていない」から最新作「セカンドハンドの時代」に至るまで、ソ連~ロシア、ベラルーシ、ウクライナのたどった道を関連付けながらその変遷を語った。彼女の著作の中で、人々が語る言葉は回想であると同時にひとつの創造物である。だからこそアレクシエーヴィチ女史はどんな小さな回想の中にも歴史をみつける。また、歴史の真実とは一つではなく、しかもばら撒かれているという。自由を希求することが、彼女の途方もない作業の原動力となっている。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏  第二部・学生との対話では、いくつか刺激的な発言が行われた。

 福島出身の女子学生が、公演前日まで福島を訪れていた女史に現地に対する感想と原発のこれからを質問した。女史は福島の様子がチェルノブイリと酷似していたことを語り、事故後わずか5年で帰還許可が出ていることに驚き、決して安全とはいえない原発への抗議が起こらないことに対して、「日本では抵抗の文化がないのでは」との見解を示した。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏  さらに、「アフガン帰還兵の証言」を読んだ男子学生が、最近のロシアではアフガニスタンでのソ連の軍事行動が再評価されている件について意見を求めた。女史は、プーチン氏の「ソ連がやらなかったらアメリカがやっていた」、シリアにおける作戦に関して「小規模であれば核兵器を使用してもかまわない」という発言を紹介しつつ、ロシアが犯した過去の過ちを再評価する恐ろしい時代になりつつあることを指摘した。また、現在戦争帰還兵やさまざまな被害をこうむった人たちを取材しようとしても、話をすれば補償金が減らされるなどの理由でインタビューを拒否する人も多いという。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ氏  一昨年発生したドンバス(ウクライナ)での戦闘に関する質問も出された。両親がベラルーシ人とウクライナ人であり、ロシア語が母語というソ連的アイデンティティのアレクシエーヴィチ女史にとって、ロシアとウクライナとの対立はことさらショックなことのようで、「プーチンにしかけられた」とも表現した。

 最後に文学における役割についての質問が出された。彼女は「どんな状況においても人間でありつづけるための努力が大切」と強調し、人間を含めた生きとし生けるものを救うのは合理主義的文化ではなく、人文的な力であることを強調した。

(文・滝沢/写真・桜井)

会員からのお知らせ
LINEスタンプ「クマのマトリョーシカ」ができました!

LINEスタンプ「クマのマトリョーシカ」  Здравствуйте!
 皆さんこんにちは、初級III織田桂子先生のクラスで受講している栗山卓也と申します。あだ名は栗なので親しい人からはマロンと呼ばれています。
 今回は今まで習ったロシア語をLINEスタンプにしてみました!
 その名も「クマのマトリョーシカ」。ロシアと言えばクマのイメージとマトリョーシカのイメージ。その2つを組み合わせて作りました。
 日本語・英語・ロシア語の3言語に対応しました。
 このスタンプさえ持っていればロシア語が苦手なあなたでも簡単にロシア人とコミュニケーションがとれますよ!
 テストとして私の知り合いのロシア人に送ったところ、大ウケでした。

 ダウンロードURLはこちら
http://line.me/R/shop/detail/1349003 ⇐スマホ用
https://store.line.me/stickershop/product/1349003 ⇐パソコン用

QRコード  QRコードもありますのでQRコードからLINEストアへのアクセスをお勧めします。
 使い方はカンタン。LINEアプリを開いたら「QRコードマーク」をタップするだけ。QRコードリーダが開きましたら後はQRコードをスマホにかざすだけです。
 このスタンプがより多くの人々に使われることを心より願っております。

(栗山)

投稿歓迎!

 「日本とユーラシア」神奈川県版は会員みんなで作る機関紙です。もっと面白くしたい方、新しい企画を思いついた方、協会や機関紙について感想や意見のある方は、読むだけでなくぜひ投稿してください。

 ユーラシア関連ネタなら文章でも写真でも絵でも、ジャンルを問わず何でもOK。

 ただし全てボランティアで、自分のオリジナル、または権利者の許可を得たもの、著作権法に触れないものをお願いします。ペンネームや注意事項があればそれも忘れずに。

 文章は1記事800字以内が目安で、長ければ編集・分割して掲載する場合もあります。

 原稿はメールやFAXや郵便で下記へ送ってください。締切は毎月末で、翌月15日頃に発行されます。投稿をお待ちしています!

(機関紙編集部)

歴史・社会