2011年5月号(通算595号) バックナンバー |
今月の表紙 N・K・ピモネンコ画 「小ロシアの復活大祭早課」 |
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◆ グルジア料理教室詳細は上記リンク先ページをごらん下さい。皆様のご参加をお待ちしています。 ◆ 2011年度 第57回ロシア語能力検定 公開試験
試験日程:2011年5月29日(日) ◆ 大自然とハバロフスク市民交流の旅 説明会
日時:2011年6月19日(日)14:00~16:00 ◆ 第13回 大自然とハバロフスク市民交流の旅
雄大なアムール河を臨む大自然の中で |
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◆ ハバロフスクの旅旅のコンセプトが、ハバロフスク市民との交流とありました。その名の通りロシア人との交流が沢山あり、掛け値なしに楽しさ一杯の旅でした。 新潟空港からほんの二時間ちょっとでハバロフスクに到着。あれ?と思う近さである。 私は趣味でロシア語を学んでいますが、普段はロシア人と会話する機会は滅多にない。ところがたった2時間余で到着した所は、もうロシア語圏内。会う人はみんなロシア語を話している。当たり前だけど、嘘みたいな本当の話。私はそれだけでもう嬉しくなってしまった。 四泊したホテルは、ハバロフスク・インツーリストと云って、アムール河を見下ろす好所にあり、清潔だった。 鍵番で知られるジェジュールナヤが居たのが面白かった。ソ連時代の鍵番は、それだけで貫禄であったが、現代の彼女達は明るくて愛想がよかった。二度程室内調具の不具合に注文をつけた時、即刻担当者を呼んでテキパキと処置してくれた。当たり前だけど、サービスは良い。 日本ユーラシア協会が用意してくれた市民レベルでのふれあい計画にはいろいろあった。ロシア人家庭に泊まるホームステイ、ピオネールの少年・少女との野外交流、市内観光、アムール河クルーズ、ロシア人とのお別れパーティー等、全てロシア人が身近に居て楽しかった。 中でもロシア人家庭に泊まるホームステイが印象深い。特別に裕福な家庭とは思えないけれど、誠実で行き届いた接待をして頂いた。家族のこと、子供の教育、子供の民族衣裳、台所の調度、趣味等々、あれやこれや、若い美しい婦人がホスト役になって説明してくれた。お蔭で一面的かも知れないけれど、ロシア人家庭の実際を理解することが出来、楽しい雰囲気の中で一夜を過させて頂いた。 自由時間に一人でこわごわ街に出て見た。街の表情がとても優しい。不安とか、危険とかの要素は全く感ぜられず、旅行者として身構えるところがなかった。 旅行前から楽しみにしていたハバロフスクのメーンストリート、ムラヴィヨフ・アムールスキー通りは、レーニン広場とウスペンスキー教会を結ぶ、真直で、広くて、落ちついた通りだった。途中クワスを売る小店をようやく見つけ、ロシアの国民的飲料と云われる念願のクワスを味わうことが出来た。ムラヴィヨフ・アムールスキー通りは尾根道のような高台にあるらしく、左右に細い通りが何本も下り、そこに日本で云う下町風の生活空間があるようだった。 よく知られている中央市場に立寄る。とても活気があり、物価も高くない。見てまわっていて飽きることがない。 ある店で、買い物の途中でルーブルが足りなくなった。近くに両替店はないかと、店員に尋ねたら、近くにあるけど道がやゝこしいから(そう云っているらしかった)連れてってやるから一緒に来なさい、と云う。店を放っておいていいの、と思ったが、親切が自然で嫌味がない。 五泊六日の旅はすぐ終ってしまった。楽しい時間は早く過ぎるんですね。まるでロシア語の現場教室のようでした。協会ロシア語を学んでいる人達に、ぜひこの旅に参加されるようおすすめしたい気持です。私は来年も又、参加させて頂くことになりそうです。 同行の皆さん素晴らしい交流をありがとうございました。 日本ユーラシア協会の関係者の皆さん、よい旅をありがとうございました。
平成22年9月22日 ◆ シリーズ・ロシアの現在 第2弾 「ロシアの国家予算」一地方の被害というよりも、国家的損失といえる東日本大震災。その復興のために「消費税」20%などという意見もあります。国家予算はそのまま国民の暮らしに直結します。 今回の学習会は「ロシアの国家予算」というテーマでした。1992年にソ連が崩壊し、社会主義経済からの変化。そのロシアはどのように国家予算をたてているのか、スレイマン講師から詳しく教えていただきました。 ロシアの国家予算の構造、その特徴。また、予算の推移、今後の課題までが説明されました。 ソ連時代は150もあった税項目が、現在は15まで減っていること。消費税は18%であること。統合主体予算の支出に占める社会政策費は収入の34%であること。 いずれも、初めて知ることばかり。すぐ隣の国がどのような経済状況にあるか、全く知らなかったことです。関戸は旅行で毎年のようにハバロフスクへ行っていますが、現地での買い物にこれだけ消費税がかかっているなどとは夢にも思いませんでした。 社会は経済が土台です。その予算がどのようになっているのか、大変興味深い講演でした。参加者からの質問に答える意味で、次回はまた日を改めて学習会を企画します。 (関戸) ◆ ウラジオの画家イーゴリさん来日2012年ウラジオストク市で開かれるAPECに関連して、環太平洋の都市(横浜・シンガポール・ホノルル)の風景画展を開催したいので、画家を派遣したい、ついては手助けをしてもらえないかと、同市から日本ウラジオストク協会(会長中本信幸氏)を経由して依頼がありました。 神奈川協会としてはできることを手助けすることになり、3月31日(木)午後5時、林さん山田さん熊川さん棚田さん木佐森が事務所に集まりました。そこに、成田から直行して来た画家のイーゴリさんと田代さん(日ウラ協会副事務局長)が到着。さっそく、離日までの4/1~4/21の担当スケジュールを決めました。 4/1は、林さん棚田さん木佐森が車で横浜市内の名所めぐりです。成田山別院では、勤行に参加。昼食は回転寿司。午後5時に閉門直前の三渓園に到達。 4/2は、山田さん熊川さんが三渓園を隈なく案内し、一人でも来れるようにバスの乗り方も伝授。 一番多く担当した林さんは、4/5に横浜美術館、上野国立博物館などを案内。4/12には、山種美術館、渋谷Bunkamura、皇居などを案内し、4/21には成田まで同行しました。 4/21は、熊川さん、木佐森も二俣川駅でお別れの挨拶。その時の話では、イーゴリさんは、伊勢山皇太神宮・大桟橋・三渓園(3枚)・富士山など8枚の絵を画いたそうで、大変満足していました。 (木佐森)
4/8、山田の焼き肉仲間と鶴見区渡田に焼き肉を食べに行きました。 (山田) イーゴリ画伯の希望で、美術館を数ヶ所案内いたしました。画面に見入る画伯の眼差しは真剣で、その姿がとても印象的でした。おかげさまで、私も楽しい時間を過ごさせていただきました。3歳の愛娘の話をするときは、もう、笑顔がこぼれんばかりのパパぶりでした。帰国の日、娘さんに、イーゴリさんお気に入りの電動ぬいぐるみの犬のおもちゃをプレゼントしました。今回の訪日のご成功を心から祈っております。 (林) |
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◆ 第114期ロシア語教室 生徒募集中!入門~上級、月曜~土曜。各クラス全15回。個人レッスンのご相談にも応じます。各クラス等の詳細は教室ホームページをごらん下さい。曜日・時間・講師は変更される可能性もありますので、見学・入学をご希望の方は事前に事務局までお問い合わせ下さい。
お申し込み・お問い合わせ: ◆ 日本語教室 Курсы японского языка 生徒募集中!!
月曜~金曜、10:00~17:00の間、1コマ90分。 ◆ ロシア民族楽器 「バラライカ」「ドムラ」教室
毎月2回、土曜日開講 ◆ みなとみらいマトリョミン教室
日程:毎月1回、土曜日開講/4月16日、5月21日、6月18日、7月16日、8月20日 |
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◆ 資本の集中、集積、市場拡大を進めるロシア経済1.巨大国営企業の民営化工程表上程さるロシア経済発展省A・ウバロフ財産関係局長は5月4日、同省が2011-2013年の国営企業の民営化の工程表を政府に上程したと発表した。 それによると、2011年には「ソフコムフロート」(ロシア船舶運航会社)と「ズベルバンク」が民営化され、2012年には「ルスギドロ」(ロシア水力発電会社)、「FSK」(ロシア通信網会社)そして「VTB」(外国貿易銀行)が民営化準備に入り、2013年には残りの大手国営企業、「ロスネフチ」(ロシア石油)、「ロスセリホズバンク」(ロシア農業銀行)、「ロスアグロリーシング」(ロシア農機具リース会社)そして「OAO «Российские железные дороги」(ロシア鉄道会社)の民営化が予定されている。 局長によると、工程表は、I・シュワロフ第一副首相召集の会議で発表され、多数の関係省庁が細部の項目まで規定したものであるとのこと。この工程表は大統領指令の期日、5月15日までに承認される見込み。 2.KAMAZとMAZの統合交渉KAMAZのS.コゴギン社長は、MAZ(ミンスク自動車工場)との交渉のためミンスクに到着、交渉の議題は明確にされていないが、MAZとKAMAZの統合の件であろうと見られている。 2月に兵器・ハイテク工業製品の巨大開発国営企業「ロステクノロジー」は、OAO(株式公開上場企業)「KAMAZ」とOAO「ミンスク自動車工場」を統合し、KAMAZはMAZの株式の100%の保有者になり、ベラルーシ政府はKAMAZの株式を所得する旨を提案していた。 KAMAZの主要株主は49,9%を保有する「ロステクノロジー」で、その他には、ドイツのダイムラーが11%、ロシアの投資会社「トロイカ・ダイアログ」が27,26%、欧州復興開発銀行が4%、MAZとなっている。MAZの株は10%、ベラルーシ政府が保有している。 3.メドベージェフ、ユーラシア経済共同体の司法機関のステータスを承認メドベージェフ大統領が、ユーラシア経済共同体(ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの共同市場)の司法機関のステータスを承認する法律に署名したことが5/4発表された。ユーラシア経済共同体ロシア、ベラルーシ、カザフスタンとの共同市場裁判所のステータスは2010/7/5にアスタナ(カザフスタン)で調印されていた。司法当局そのものはミンスク(ベラルーシ)にある。 関連書類では、経済共同体の組織構造と加盟機関の構成、裁判所の職務員の任命・解任手続き、彼等の全権の範囲、裁判所の特権と免責項目、そして書記官・高官・職員の職務内容が規定されている。法律によれば、裁判所は長官が率い、長官職務は2年間で、国家名のロシア語のアルファベット表記された国名から順番に輪番制で任命される。裁判官は、共同体の国家間評議会で開催が提案される政府間共同体総会の権限で任命あるいは解任される。裁判官の構成はそれぞれの国から2名ずつ任命され、その全権期間は6年とされている。 (柴田) |
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◆ 組織状況
(2011年4月30日現在) ◆ 財政状況
財政状態全体としては順調に伸びていますが、会員数の停滞を反映して一般会計収入が約10%落ち込んでいるのが懸念されます。事業は活発に行われているのですから会員拡大の潜在的可能性は十分ある筈です。会員拡大のため絶えざる工夫と努力が必要です。 (柴田) 当協会のロシア物産オンラインショップ「うにべるま~ぐ」、4月の売上は368,430円でした。 先月号でお伝えした通り、売上の5%分18,421円は東日本大震災義援金として、5~9月分と合わせて寄付する予定です。 |
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◆ ユーラシア芸能ロシアと近隣諸国の音楽を中心とした芸能情報を紹介するコーナー「ユーラシア音楽芸能情報」を発信中!(^_^)v ■「ナロードヌィエ・アルチスト」メンバー大刷新!音楽オーディション番組「ファーブリカ・ズビョーズド」最盛期に裏番組で対抗していた「ナロードヌィエ・アルチスト」。メンバーがガラリと変わりました! ■ロシア TOP10雪解け激しいロシアから、4月最終週のMTV TOP10をお送りします。10曲中5曲が初登場!
詳細は協会ブログ「ロシア芸能」カテゴリーで。 ◆ 映画・演劇東京ノーヴィ・レパートリーシアター付属 第1スタジオ公演「イワーノフ」4月16日 於:東京・下北沢 東京ノーヴィ・レパートリーシアターは、1シーズン5~6作を日替わりで上演するロシアと同じレパートリー形式の劇団だ。ロシア功労芸術家レオニード・アシモフ氏が演出し、「どん底」などロシアの戯曲のみならず「曽根崎心中」や「ハムレット」など古今東西の名作を上演。 今回観に行った作品は、チェーホフが初めて書いた本格戯曲の「イワーノフ」。演じる付属第1スタジオの面々は、スタニスラフスキー・システムを学んでいる俳優たちだ。 主人公イワーノフは、周囲の反対を押し切ってユダヤ人女性・アンナと結婚。しかし、結婚を認めないアンナの両親から持参金は渡されず、自分の事業にも失敗し、アンナも結核を病む。絶望の中、病身のアンナにも冷たく当たるイワーノフは、幼いころから彼を慕っていたアレクサンドラに愛を告白され、アンナの死後彼女と結婚しようとする。しかし、結婚式の当日、思いもよらぬ事件が起こる。 スタジオ演劇という名の通り、舞台とほとんど同じ高さの目線で観劇ができるので、自分も舞台の中にいるような気分。セットや衣装も落ち着いた色調だ。ストーリー展開もテンポがよい。少し残念なのは、主人公イワーノフの台詞まわしが速すぎること、台本に忠実であろうとするために、台詞が詰まったりという場面が見られたこと。しかし、アレクサンドラの母やイワーノフの叔父など、イワーノフの運命を決定づける役が強い存在感を放ち、イワーノフのいらだちや絶望を側面から表現している。 同劇団は、11月にドストエフスキーの「白痴」上演を予定しており、こちらも期待される。 (文・滝沢三佐子/写真撮影:コスガデスガ) 映画 『戦火のナージャ』(2010 N・ミハルコフ主演・監督作品) 本編が始まる前に、ミハルコフ監督による東日本大震災被害者へのお見舞いと日本を応援するメッセージが放映された。日本での人気を自覚したうえでのメッセージであろうが、こうした特典映像が日本向けに撮られたことは評価される。 さて、「太陽に灼かれて」の続編として作られた本作は、第1作で子どもだったナージャが成長後の物語。 父は死んだと教えられてピオネールキャンプで過ごすナージャは、父が生きていることを知らされる。そんな中、ドイツのソ連侵攻が始まる。父・コトフは、服役中のところの開戦で辛くも脱走し、最前線で祖国防衛にあたる。しかし、ドイツ軍の装備や残酷な戦闘行為で、ナージャとコトフは本作中で出会うこともなくそれぞれ戦地で極限を生きる。 クレジットでは、「第1部 終わり」と出てくるので、「太陽に灼かれて」はその後も続編が作られるわけだ。これでもかという残酷な戦闘シーンは、特撮も含めて近年のモスフィルムが得意とするところ。幻想的なカットも印象的。賢く強い人物を演じることが多いミハルコフ監督自信は別として、スターリンに圧力をかけられるオレグ・メンシコフ、回想を語るセルゲイ・マカヴェツキーの対話は緊張感がみなぎる。ナージャを演じるミハルコフ監督の実娘も戦場に生きる気丈なティーンエイジャーを熱演している。 (滝沢) ◆ The Story Series通 勤 の 道
ジャブライロフ スレイマン 作 平日の朝は、全身が二日酔いのような倦怠感に覆われる。意識は新しい一日に踏み出すことを拒み、目覚めたばかりの体を温かい眠りへ引き戻そうとする。そして、朝の洗面、朝食、身支度は夢現の状態で済まされる。 しかし、外に出ると無垢な風が、過ぎ去った夜の名残を取り払い、新たな一日の元気(エネルギー)を体中に満たしてくれる。 職場への道が始まる。長くも短くもないこの道のりは、町はずれの駅まで6分間、電車に乗ることからはじまり、その先は、出勤を急ぐ他の乗客と一緒にバスを使うか、あるいは古い閑静な住宅街を川沿いに抜けて歩くか、どちらも可能だ。 私は後者を選び、高速道路橋下の道を渡り、駅から小さな街中へ進む。 時々、逆方向を目指す人とすれ違う。彼らは都心へ通勤する為、駅へ向かっているのだ。 黒いコートを身に纏った若い女性が急ぎ足で私を素通りする。彼女はほのかな香水の匂いを道に残し、その香りはやがて新鮮な朝の空気に跡形もなく掻き消されてしまう。 灰色のスーツを着た男性が下を向きながら歩いている。彼のふさふさした白髪が風で乱れ、その様子を見ているだけで、こちらがより寒さを感じてしまう。彼は昨日も同じく、この場所で私とすれ違った。それ故、今日も自分は遅刻せず、定刻通り職場に向かっていることが分かる。 細流沿いに進むと、時間と共に老朽化した家の草木が生い茂った庭から、毛布に包まった老人が車椅子に乗り、ゆっくりと出てくる。老人は、無数の糸を束ねた崩れそうで崩れない昔ながらの箒で、一生懸命玄関の塵を掃き始める 狭いカーブから古い自動車がゆっくり姿を現す。持ち主は綺麗好きで、普段外出前に洗車をしている。今日もそのようだ。ボンネットには未だ乾いていない水滴が残っている。古いエンジンの錆びた音が、起床前の住宅街で甚だしく響き、そのまま遠ざかってゆく。 今は、足元を妨げる砂利の音だけが静寂を破る。 土手を駆け上がり、その道に沿って歩を進める。これまで沿って歩いてきた細流は川に合流し、土手の上を歩く私の道を追随するように、下を流れている。 反対側には、異なる規模の民家が列をなし、閑静にそびえ立つ。しばらく時間が経つと、この空間は日常生活のせわしない騒音で埋め尽くされるが、今の時間はまだ、朝の静寂に包まれ、石造、木造の建物は全て幽霊のようだ。穏やかな川の水面には、かすかな霧のヴェールがかかっている。長旅を終えたサギが、水に細い足をつかり、白い体を丸めながら休憩している。長い嘴を下に向け、目を閉じ、川と同じように微動だにしない。傍らには、エネルギーに満ち溢れた子ガモ達が賑っている。小さな首を精一杯に伸ばし一斉に、温まりきっていない水をゆっくりと歩く母親を急いで追いかけている。透明な浅瀬では、石の川底が太陽にキラキラと照らされている。一方、水草の茂みの向う側は、深くて川底が見えない。時々、緑色の水面にゆっくりと広がる波紋が、濁った水中の奥深いところに潜む謎めいた何かの存在を示唆している。土手の傾斜部分には、薄の黄金網が張り巡らされている。ふさふさした薄の穂は、太陽から可能な限り光を受けようとし、太陽は各々の穂に丁寧に愛情を注いでいる。隣の小さな棕櫚にも、太陽光が貫通し、暗い色をした長い葉はエメラルド色に光輝いている。 太陽は上昇していく程、日差しが強くなる。川にかかる小橋に、年金暮らしの老夫婦が見える。私に気付くと、背の低いお婆さんはこちらに手を振り、暖かい帽子を召した夫は、ゆっくり頷きながら私に会釈している。近づくと、私も丁寧に挨拶の身振りをする。お互い何も知らないまま、これといった理由もきっかけもなく、私達は毎回会う度に会釈したり、天気について口にする等して挨拶を交わす。 さらに数分歩けば、大道路に出る。ここは都会との境目だ。目の前を走る自動車の執拗な音は騒がしく、この辺りに馴染まない。道路の向うには、店の「安売り」を宣伝する幟が風になびいている。 そろそろ目的地だ。同じフロアで共に働く同僚達がペアで、あるいは一人ずつ専用の入口に入っていくのが見える。私も建物に入り、日常のリズムに溶け込んでいく。 辺りが暗くなる時、同じ道を辿って帰宅するのだろう。翌朝、知らない仲間と再び顔を合わせ、こうした日々の出来事が毎日変わらず繰り返されることに彼らと同様、私は安堵感を抱く、そのようなことを考えながら家へ向かうのだろう。 *** ・・・そして帰りの電車に揺られながら、特別なあの人のことを想う。 2011年2月 ◆ ユーラシア通信リペツク便り (3)復活祭の頃こんにちは。4月になりやっと雪も解けて暖かくなりました。ロシアは道路の排水設備が良くないので、冬の間に滑り止めとして雪の上に撒かれた砂と融雪水が混ざった泥水が歩道や道路に溢れ、どこもかしこもぬかるみで大変です。この時期にロシアに旅行される方は、くれぐれも靴とズボンにご注意を。4月24日は正教の復活祭Пасха(パスハ)でした。先月レポートした「マースレニッツァ」でブリヌィをたらふく食べた後、厳格な正教の信徒は復活祭まで断食に入ります。本来は動物性食品を食べてはいけないそうですが、中には「肉だけ食べない」とか「後半だけ参加する」とか「途中で挫折した」なんて人もいるとか。 雪が無くなると、冬の間雪に埋もれていたお墓の掃除をしてお花を供える人を大勢見かけました。これも復活祭を迎える準備のようです。日本のお盆前みたいです。ロシアのお墓には日本とは違い造花を供えるようで、墓地近くの市場には造花屋さんがたくさん並んでいました。 また、この時期の食料品店にはКулич(クリーチ)というパネトーネに似たパンを作るための材料や、イースターエッグを彩色したり飾ったりするためのキットが、いろいろ並び始めました。 Куличは復活祭に食べるパンで、正式には教会で清めてもらってから食べます。復活祭前日の教会には、大勢の信徒がКуличを持って訪れていました。 復活祭を迎えて街も家もお墓もすっかり掃除され、それまでとは見違えるほどリペツクの街は明るく綺麗になりました。 市場にたくさん出ていた造花屋さんは復活祭を機に見かけなくなり、代わりに今は花や野菜の種や苗木を売るお店が出ています。 これからは、ダーチャや花壇の準備に忙しくなるようです。ロシアの暮らしは季節感に溢れています。 (堀江 美恵) ロシア人墓地の改修について(続報)3月号でご報告した通り、2006年のロシア人墓地慰霊祭以来、地道に続けられてきた当会の調査、提言活動が実を結び、2010年9月付けの立派な墓誌がこのほど在日ロシア大使館によって山手外人墓地に建立され、関東大震災などで倒壊していた10基の墓碑もモフェト、ソコロフの墓の周囲に再建されました。 2006年5月19日、柴田前理事長がアレクサンドル P. ロシュコフ駐日ロシア連邦大使に以下の諸点を申し入れました: (1) コンクリートの土台がかなりひび割れているので修理されたい。 (2) 2005年に日本人有志の善意によって改修された墓にはローマン・カトリックの十字架が建てられているが、改修前の十字架はロシア正教の十字架で頭頂部にはクーポルがついていた。十字架の復元をお願いしたい。 (3) ロシア太平洋艦隊から贈られた銘板には埋葬者の名前も日付も解説もなく、日本語の翻訳文は間違っている。そのため、墓地管理者はマスコミその他にこの銘板を見せないよう配慮している。正確な銘板を作成されたい。 (4) 横浜外国人墓地は横浜市の有名な観光スポットで、内外の観光客も多数訪れる。2008年は横浜の開港150周年にあたり、この墓地でも各種行事がおこなわれるのでそれまでにこの墓がきちんと改修されることを強く願っている。因みにこの墓地は明治以来諸外国公館(各国領事団)に貸与されたもので、最初の被葬者はモフェト、ソコロフの両水兵であった。ロシア領事館もこの原点に留意されたい。 以 上 協会ではその後,数次に亘り埼玉大学澤田教授、のべ数十名のボランティアの皆様、協会員の方々のご協力を得て、調査を行い、データベースを作成、ロシア連邦大使館に提供しました。朝日新聞、東京新聞、神奈川新聞、赤旗、新かながわ等の諸紙がこの調査を写真入で大きく報道し,記者会見も行われました。 こうした努力の結果、今回の大改修が実現したのです。私たちは日露親善・交流に多くの貴重な業績を遺された諸霊のために心から今回の改修を喜んでおります。 (柴田) |
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◆ 1Fに新事務所開設2011年度総会、及び4月理事会の決定により、横浜平和と労働会館1Fに当会の事務所兼店舗を5月から設置することになりました。現在ある5Fの事務所と店舗は1Fに移動し、5Fの教室スペースが拡張されます。これによって協会事業の新たな展開を図ります。内装、電話工事、その他諸準備の為、本格的稼動は6月以降になる見込みです。5Fとの連絡方法、当直体制その他、解決を要する課題も残されています。 会員の皆様からもこの新しい事務所の活用方法についてご意見、ご提案をお寄せください。 ◆ ユーラシア関連記事・写真の投稿、ご意見、ご感想、情報等 大歓迎!
字数は読み物なら400字程度(長ければ連載で)、案内なら1行~200字以内でお願いします。
NPO法人神奈川県日本ユーラシア協会 機関紙編集部 (機関紙編集部) |
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◆ ソビエト映画アーカイブススペシャル
ソビエト映画の名作、重要作20作品を一挙上映。 ◆ パーヴェル・ネルセシアン ピアノリサイタル
2011年5月14日(土) 午後7時開演 ◆ 前進座創立八十周年記念 五月国立劇場公演
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商品の詳細は協会主催オンラインショップ「うにべるま~ぐ」でごらん下さい。 4月1日~9月15日の全品売上の5%を震災義援金として寄付しますNPO法人神奈川県日本ユーラシア協会は、2011年4月1日(金)より9月15日(木)までの「うにべるま~ぐ」取り扱い全商品の売上の5%を、3月11日の東日本大震災の被害を受けた方々への義援金として、日本赤十字社(予定)を通じて寄付することを決定いたしました。 被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。 |
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◆ 第61回 新首都ウラジーミルの誕生協会サイト内 ロシア興亡史のページ をごらん下さい。 |
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